須弥山とキンキラ世界(世記経1)
『現代語訳 阿含経典 長阿含』、最終巻の6巻に突入しました。
ふー。
6巻には「世記経」という独立したお経(十二品)が収められていて、
何の知識もなく読み始めたのですが、
要するに仏教の宇宙論や世界観を記したお経だったんですねー。
三千大世界とか須弥山とか地獄とか。
お釈迦さまが世界を説明するという体裁になってはいますが、
仏教のというより、当時の古代インド一般でこう考えられていた、
という世界観です。
パーリ語に対応するお経がなく、たぶん後世(BC1~AD2世紀)の
部派仏教時代に成立したのではないか、と解説にありました。
第一品「閻浮提洲品」(閻浮提洲=インド亜大陸を思わせる三角の陸)
を読んだ素人的第一印象は、
わあ法華経みたいにキンキラキン、ということでした。
法華経が描く世界は鳥や花や金・銀・瑪瑙・水晶でできたスワロフスキー的世界で、
初期仏典にそういうキンキラ世界は登場しないので、
いつからそうなったのだろうと思っていました。
ですが、新しいとはいえ初期仏典・阿含経典に含まれる「世記経」は、
たとえば須弥山には七宝でできた階段があり、
金の塀に銀の門、水晶の塀に瑠璃の門etc.があり、
その欄干は瑪瑙の縦木なら赤珠の横木etc.であり、
さらに欄干の上に宝玉の綱飾りがあって
金の網には銀の鈴、水晶の網には瑠璃の鈴・・・・
とまあ、うっとりするような世界が描写されていたのでした。
これでも法華経に比べればまだ地味だけど、
いちおう女の常として光り物は好きなので、読んでいて楽しいです。
阿含経典の他のお経では
糞掃衣を着て座って話したり乞食をしてる地味な光景ばかりだったのにねえ。
仏教というか古代インドの宇宙観は、
『須弥山と極楽』(講談社現代新書)という名著で十分わかると思われます。
須弥山と極楽 -仏教の宇宙観- (講談社現代新書 (330))