仏教鼎談:内田樹×名越康文×釈徹宗(『新潮45』)
『新潮45』10月号で、
「哲学鼎談:現代人は仏教に何を求めているのか
内田樹×名越康文×釈徹宗」
という特集のタイトルがデカデカと表紙に出ていました。
この3人は、サンガから出た、以下の本の顔ぶれですね。
(評論家×精神科医×浄土真宗の僧侶、という組み合わせ)
頑張ってる出版社サンガの本が少しでも多く売れるといいな。って未読ですが。
『新潮45』の鼎談自体は15ページですし、やはり食い足りない感じ。
サンガの本はもっと面白いのでしょうけれど。
キーワードを拾うと、
「他者に身を委ねる覚悟」
「仏教の『苦』という言語を丁寧に訳せば、 『思い通りにならない』という意味になる」
「仏教(の中道)は、わざと人間を宙吊り状態に置く」
「身体と心・精神との乖離=二重性を受け入れたとき、
精神の自由を得ると同時に、あらゆる苦悩もそこから生まれた」などなど。
ふーん、と思って雑誌をパラパラめくっていたら、
別のページに、すごいめっけもんがありました。
第9回新潮ドキュメント賞の『リハビリの夜』(医学書院刊)という本です。
この10月号で、受賞作として発表されていたのです。
著者は、熊谷晋一郎さん(77年生まれ)という方。
新生児仮死の後遺症で脳性まひになり、車いす生活をしながら、
東大医学部を出て、現在東大先端科学技術研究センターに勤めている方です。
本は初めて知ったのですが、『新潮45』に乗っていた受賞者インタビュー
だけでも、タダ者ではない、すごい作品だと確信させます。
「脳の損傷が原因でイメージに沿った運動を繰り返すことができない」著者の
リハビリ体験をドキュメントしたものなのですが、
選考委員も最大の賛辞を送っています。
「他者として徹底的に客観視した自らの身体を媒介にして、
その時間と空間を生々しく追体験させる、とてつもない奥行を持った作品」
(柳美里)らしいのです。
受賞者インタビューを読んでも、
「車いすで便意をもよおしたとき、道行く人に突然、トイレ介助を頼んで
お尻を拭いてもらうときの演出」に始まり、
「まなざす/まなざされる関係」「敗北の官能」といった自作の語彙、
「自分の身体を思考の対象にすること」について、
独特のユーモアでもって語られています。
でね、何が言いたいかというと、
前述の「仏教鼎談」で挙げたキーワードが、
熊谷さんの3Pのインタビューだけでもすべて語られている、と感じたのです。
しかも、はるかに鮮烈な形で。3人の仏教鼎談が茶飲み話に見えたぐらい。
『リハビリの夜』、これはぜひとも読もうと思いました。
一見仏教とは関係ない本だけれど、「身体と精神の徹底的な客観視」とは、
お釈迦さまの態度そのものであります。

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