爆笑あり怒りあり、仏教誌『サンガジャパン』は面白かった
先日のブログでもちょっと触れた仏教季刊誌『サンガジャパンVol.2』。
これが、予想どおりに大変面白かったです。
http://ameblo.jp/nibbaana/entry-10583685401.html
若くてシガラミのない書き手が多くて、
今の日本仏教の問題点にもズバズバ斬り込んでいます。
そのなかで爆笑したのが「連載・パーリ三蔵読破への道」
副題「仏弟子たちのダメダメ事件簿」です。
執筆者は佐藤哲朗さん
(あの日本テーラワーダ仏教協会の若き事務局長さん)
http://d.hatena.ne.jp/ajita/
お釈迦さまは戒律を机上でつくったわけではなくて、
サンガ(僧団)でケシカラン事件がおこったらその都度、
戒律を決めていきました(随犯随制)。
だから「律蔵」には、その戒律ができた背景として、
「こんなダメ弟子がいた」という由来が書いてあるそうなのです。
例えば・・・
・娞戒(いんかい)
=同性や異性や動物(!)と性交したら教団追放=の背景
子孫を残すべく元妻とやっちゃってお釈迦さまに叱られた比丘、
餌付けした猿と獣姦した比丘、あと比丘尼レイプ事件もあったそうです。
・絶人命戒
=故意に人を殺したり凶器を持ったり自殺を勧めたら教団追放=の背景
お釈迦さまの留守中に比丘たちは不浄観の瞑想をしていました。
そのうち自分の身体を厭い嫌うあまりに「殺してくれ」と言い出す比丘が続出、
それを殺し回るエセ沙門も登場。
教団は他殺・自殺入り乱れた血の海と化し、この戒律を定めたそうです。
・大妄語戒
=覚りを開いたとウソをつくなどしたら教団追放=の背景
お布施ほしさに「悟った」と宣伝しあうサギまがい比丘たちが現れ、
丸々太ってお肌つやつやなため、お釈迦さまに問い詰められてバレた。
といった話が、佐藤さんの筆力をもって楽しく書かれています。
教団経営も大変だったんだろうなあ。
同時に、仏教草創期の生き生きしたリズムも感じます。
お釈迦さまは、ダメ社員を抱えた町工場の経営者みたいだもの。
「律蔵」の全訳は旧仮名づかいの『南伝大蔵経』(1~5巻)
しかないそうで、ちょっと挑戦する勇気がないなあ。
あと「佐々井秀嶺四十四年ぶり帰国道中顛末期」
(執筆:小林三旅氏)は生々しかったです。
インドで仏教復興に尽力する佐々井さんが帰国したとき、
彼を迎えた日本の僧侶たちの俗物ぶりは、目を覆うばかり。
歓迎会と称して温泉旅館で宴会をやり、
酔ってゴキゲンになった僧侶らしき人が吐いたセリフが、
「ホントは佐々井さんを、飲ませてさ、本音を聞きたいわけよ」
「俺だってインドみたいな環境にいたら仏陀みたいに悟りが開けると思うもん」。
佐々井さんを迎えた法要に、義務的に動員をかけられ、
講演を聞く前にバスで宴会場に向かってしまった僧侶たちも。
そりゃインドの仏教復興運動だって綺麗ごとばかりではないでしょうが、
ここに出てくる日本のお坊さんたちは、なんたるていたらくなのか。
そんなこんなで、刺激的です、『サンガジャパン』1890円。

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