SF界の巨人は仏教を選んだ『幼年期の終り』
SFに全く興味がないので、アーサー・C・クラークの小説を
1冊も読んだことがありません。
ですが映画『2001年宇宙への旅』は見ていたので、
その名前と、SF巨人であることは知っていました。
そのアーサー・C・クラークが、
仏教にシンパシーを持っていたことを最近知って、びっくり。
科学を知り尽くしたクラークさんが、ですよ。
人生の後半は、なんとスリランカに住んで、
イギリスといったりきたり生活だったというから、
南伝仏教に親近感を持っていた可能性大です。
氏の初期の作品『幼年期の終り』(1953年)には仏教が登場するそうです。
「オーバーロード(上帝)」と呼ばれる宇宙人が、
人類文明の歴史をビデオのような装置で延々記録していて、
それを地球人に見せるそうです。
そこに録画された文明は、
あらゆる宗教が壊滅して、仏教だけ残っていたとか!
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「おびただしい数の人類の救世主がその神性を失うことになった。
冷たく、感情の入り込む余地のない真実の光のもと、2千年にわたっ
て何百万もの人々の心を支えてきた宗教は、朝露のようにはかなく消えた。
それらによって巧妙に作られてきた善と悪は、すべて一瞬に
して過去のものとなり、人類の心を動かす力を失った。」
「新しい時代は、宗教と完全に縁を切っていた。
オーバーロードがやってくる前の時代に存在していた信仰のうち残っているのは、
純粋な形の仏教(あらゆる宗教のなかで、おそらくもっとも厳格なもの)だけだった。奇跡やお告げをよりどころとしていた宗派はことごとく破綻した。」
(『幼年期の終り』 たぶん光文社古典新訳文庫の訳?
現物もってなくてネットでコピペなので自信なし)
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ここで言う「純粋な形の仏教」は、釈迦本来の仏教
(スリランカなどに伝わる、いわゆる小乗)と思われます。
つまり「救世主」を立てる宗教はみんな滅んだと。
キリスト教もイスラム教も、また大乗の阿弥陀信仰や菩薩信仰も、
「誰かが助けにきてくれる宗教」ですよね。
それに対して、釈迦本来の仏教は、絶対的な存在や救世主を立てない。
自分で修行して、自分で悟れ。お手伝いはできるけどね。
世界は神が作ったんじゃなくて、法則で動いているんだからさ。
そう説いたのがお釈迦さまですから。
その釈迦仏教は、科学に精通したアーサー・C・クラークから見て、
唯一「科学に滅ぼされない宗教」だったのではないでしょうか。
クラークさん、さすがだね!
幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)