お釈迦さまが悪魔に負けちゃった「散陀那(サンダーナ)経」
上座仏教の初期仏典「長阿含経」におさめられた
「散陀那(サンダーナ)経」を読みました
(『現代語訳 阿含経典』第2巻 平河出版)。
これは、ほのぼのするお経でしたよ。
ニグローダというバラモンがいます。
ニグローダは、500人の梵志たちと大声で1日中議論しています。
国の政治、戦争や武器のこと、大臣や庶民のこと、
衣服・飲食・女性のこと、山海や亀のことなど(なぜ亀?)、
どうでもいい話「真理をくらます議論」を行っていました。
そこに、お釈迦さまに帰依した居士サンダーナが現れ、
「そんなくだらない話を騒々しくすることを、
お釈迦さまは好まない」と言います。
するとニグローダは、
「あんたの先生=お釈迦さまは、へんぴなところでひとりで
座っているだけだ。なぜ偉大な知恵があるなどとわかるのか?
私は釈迦を、一言で追い詰めて、沈黙させることができる」
と言い放ちます。
2人の議論を神通力で知ったお釈迦さまは、その場に出向いて、
ニグローダに「あなたの実践(バラモンの修行など)は、
どれも卑しいものだ」と言い、論争になります。
たとえば、供養・尊敬されるために、人前でだけ禅定する、
などの行動を、お釈迦さまは批判します。
論争のすえに、ニグローダと500人の梵志たちは考えを改め、
ニグローダはお釈迦さまの足に頭をつけて敬礼するのです。
ところが!
これを知った悪魔・波旬が、
「釈迦の教えに納得した彼らの心を破壊しに行きたい」と思いました。
「そのとき、悪魔はすぐに自分の力で彼らの心を乱した。
そのとき、世尊はサンダーナに告げた。
『この五百人の梵志の弟子は、きちんと心を正して私から法を聞いた
が、天魔・波旬が彼らの心を乱した。
今、私は帰ろうと思うが、あなたも一緒に立ち去りなさい』」
と言って、虚空に乗じて帰ってしまいましたとさ。
えっ、お釈迦さま、悪魔に負けてあっさり帰るんですか!?
というのも、初期仏典だから、
お釈迦さまがまだ超人化されてないんですね。
このへんが、絶対的な神を立てない仏教らしくて、私は好きです。
解説を読むと、
現実的に、人間・釈尊が外道との論争で負けることもあっただろうし、
「率直でおもしろい」と書かれていました。
『本気!(マジ) サンダーナ』というヤクザ漫画が存在するのだが、
なぜサンダーナなの? 誰か教えてください。
ところで私は雑誌編集者ですから、ニグローダたちのような
政治・飲食・衣服など、「真理をくらますどうでもいい議論」で
ご飯を食べているわけで、ほんとすみませんね、という感じです。
亀については議論しないですけれどね。
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