人は生まれでなく行いで決まる! 「小縁経」
『現代語訳 阿含経典 長阿含経』を読み始めましたが、
印象深いお経をメモしておこうと思います。
どこまで根気が続くかわかりませんが・・。
初期仏典「阿含経」のうち比較的長い経を集めた
「長阿含経」は、30経あります。
上記の本でいちおう分類しているのは、
第1部 仏を明かす(第1~4経典)
第2部 仏の自覚内容としての法を明かす(第5~19経)
第3部 修行道を明かす(第20~29経)
第4部 世界観を明かす(第30経)
本日のメモは、そのうち第5経についてです。
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<人は生まれではなく、行いによって決まる>
長阿含経 第5経「小縁経」
お釈迦さまは、「四姓平等」を説かれましたが、
それがバッチリでてくるのが、この小縁経です。
ご存知のように、バラモン教時代のインドでは、
バラモンークシャトリアーヴァイシャーシュードラという階級が
はっきりと分けられていました(今のヒンズー教下のインドもそうですが)。
小縁経は、2人のバラモンが、お釈迦様に教えを請いに来るところから
始まります。
お釈迦様は、「バラモンなのに、私のところに来て、他のバラモンから
非難されないか?」と聞きます。
答えるに、「はい、責められます。彼らが言うには、バラモンは梵天の
口から生まれ、まっ白だ。ほかはまっ黒だ。お前たちは、清浄なバラモンを捨て、
なぜ卑しい(クシャトリャ)階級のヘンな教えに帰入するのか、と」。
そこで、お釈迦様が「世界と四姓の成り立ち」を説くのですが、これが素晴らしい。
(細かくは省略しますが)
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この世界に、稲作が始まって、争いが起こり、
「みんなで地面を分割して、標識を立てよう」といった(私的所有が起こった)。
↓
穀物をめぐって争いが起こり、それを治めるために「王」(クシャトリャ)
という名称が生じた。
↓
世俗を離れて家を捨てたい人が登場し、「バラモン」という名称が生じた。
↓
一方で、家を構えて財を蓄えたい人がいて、彼らを居士(ヴァイシャ)と名づけた。
↓
その人々の中に、技巧にたけて多くのものを製造する人がいて、
「シュードラ(工匠)」という名が生じた。
悪い行いをする人もいれば、善い行いをする人もいる。
それは、4つのどの階級であっても、同じことである。
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ね、この考え方、おそろしく現代的じゃないですか?
同書の解題の中では、
「一種の社会契約説であり、一般に仏典が社会や歴史について
論じることが少ないなかにあって、本経は仏教の合理的な社会観と、
カーストの身分制に対する批判を正面から扱ったものとして極めて注目される」
としています。
当時のインドでは、四姓はバラモン教とがっちり結びついていて、
バラモン階級は梵天(ブラフマン)の口から生まれ、
他の階級は別の部分(忘れたけど)から生まれ・・・という、
何の根拠もない説明がされていました。
シュードラは、非アーリアの先住民なので、
四姓は人種差別の道具でもあったわけです。
それに対して釈迦は、
私的所有が始まって社会が発展・分化していくなかで、
「名前が生じた」=便宜的に階級ができた、と説いているのです。
階級は、生まれとも、貴賎とも、何の関係もない!と宣言しているのです。
ブラボー、お釈迦様。
キング牧師より2400年以上も前に、こんな発想をしたとは驚愕です。
「人権」という発想が生まれる、はるか前の時代です。
なぜ、「平等だ」などという斬新な考えがお釈迦さまに起こったのか・・。
「みちのくプロレス」に「バラモン兄弟」というレスラーがいるんですって。
この格好は、黒人差別のKKKですね。冗談きついですね。
歴史的に見れば、
「バラモンがいばりくさるので、新興クシャトリャ階級としては、
腹に据えかねていた」というのがあるかもしれません。
(実際、この小縁経では、階級を並べる記述で、
クシャトリャをバラモンの先に書いていますし)
当時のマガダ国界隈に、クシャトリャ階級を中心に各種新思想が起こっていて、
仏教以外でもアンチ・バラモンの傾向があったそうですし。
それにしたって、
・かくも合理的な社会契約説が、なぜお釈迦さまの脳内に生じたのか。
それと、
・せっかく世界一早く、四姓平等思想を手に入れたのに、
なぜインド社会はそれを手放して、カースト制に戻ったのか。
(イスラムによる仏教弾圧だけで説明できるのか)
この2つの疑問は(すでに何かの本に書いてあるのでしょうが)、
今後、諸々の勉強をする中で解明したいと思います。

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