『人間失格』の最後の言葉 | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

『人間失格』の最後の言葉

またも太宰治の『人間失格』が映画化 されたそうで、
書店に主演・生田斗真のポスターがたくさん貼られていました。


ご多分にもれず、私も高校生のころ「太宰病」にかかりました
(太宰病=太宰だけは私の苦悩をわかってくれる、
 などと思い込む思春期の病)


釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~  このポスターだらけ。

太宰が自殺する1か月前に完成した『人間失格』にも、
当然ながらハマりました。
睡眠薬中毒者が”陰惨な半生”を振り返る手記
(実はユーモアにも溢れているのですが)とされる『人間失格』、
読んだ方は、最後を覚えているでしょうか。


「脳病院」にブチ込まれて、「廃人」と化した主人公は、
ボロボロの家で女中・テツと暮らしています。


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自分は仰向けに寝て、おなかに湯たんぽを載せながら、
テツにこごとを言ってやろうと思いました。
「これは、お前、カルモチンじゃない。ヘノモチン、という」
 と言いかけて、うふふふと笑ってしまいました。
「癈人」は、どうやらこれは、喜劇名詞のようです。
眠ろうとして下剤を飲み、しかも、その下剤の名前は、ヘノモチン。


いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎて行きます。
自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「人間」の世界に於いて、
たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。

ただ、一さいは過ぎて行きます。


自分はことし、二十七になります。
白髪がめっきりふえたので、たいていの人から、四十以上に見られます。

                                 (完)

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                     ※このあと「あとがき」がありますが。



この、「ただ、一さいは過ぎて行きます。」という感覚が、
子供心に強烈に残りました。


それから15年以上たって、「大パリニッバーナ経」で、
お釈迦さまの最後の言葉を知りました
(底本と訳によって微妙に違うでしょうが)。


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「もろもろの事象は過ぎ去るものである。
努力して修行を完成させなさい」
 これが如来の最後の言葉であった。


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お寺の子でもない限り、
はじめから仏教を意識することは少なくて、
何かが積み重なって、大人になってから
「どうも自分には仏教がぴったりくるようだ」
と発見する人は少なくないと思います。


私の場合、積み重なった多くのものの一つは、
「ただ、一さいは過ぎて行きます。」
だったような気がします。そんなことを思い出しました。


釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~ 太宰のこの写真も部屋に貼ったりしていた10代の頃。


『人間失格』全文

http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/301_14912.html






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