アーナンダとペテロ「仏典をよむ」(1) | 釈迦牟尼スーパースター ~仏教のつれづれ~

アーナンダとペテロ「仏典をよむ」(1)


『仏典をよむ~死からはじまる仏教史』という本を読んでいます。
著者は私の好きな仏教学者の末木文美士先生で、
13の仏典を取り上げつつ、とてもクレバーな位置づけをしてくれます。
一般向けの本ですが、こんな地味目な本がもう4刷で
けっこう売れていることにまず驚きました。


いったい仏典って全部でどれだけあんの?と思いますが、
漢訳仏典の集大成として一般的な『大正新修大蔵経』
各1000P近く×100巻とのこと。気を失いそうです。
でも本当は、『大般若経』600巻のように常軌を逸した分量のもあって、
書くほうも書くほうだが、これ読んでるだけで一生が終わるよ・・。


『仏典をよむ』は、原始仏典の「遊行経」からはじまって、
「無量寿経」「法華経」などの大乗経、
日本のは空海・親鸞・道元など主だったものや
「日本霊異記」のように仏典とされてないものも入ってます。
非教科書的な仏典ガイドとしてとても面白かったので、
ちょぼちょぼとブログで備忘録を書こうかなと思います。


仏典をよむ―死からはじまる仏教史/末木 文美士
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<第一章 遊行経>


お釈迦さまが亡くなる最後の旅を記した、有名なお経ですね。
中村元訳『ブッダ最後の旅』(岩波文庫)が一般的ですが、
もうね、読んでいて涙が出てきます・・。


末木先生は、面白い指摘をしています。
弟子のアーナンダ(阿難)が、キリスト教のペテロを思い起こさせる、と。


ペテロは、イエスが処刑されるとき、
「あんたもイエスの仲間でしょ」と問い詰められて、
「そんな男は知らない」とえ3回否認します。


一方アーナンダは・・・
お釈迦さまが「寿命を留まらせることができる」と3回匂わしたのに、
マーラ(悪魔)に心を捉われたアーナンダは気がつかず、
そのせいで釈迦は3か月後に死ぬことが決定した、と。


お経では「アーナンダよ、お前が3回頼めば寿命が延びたのに。
お前の過失である」とお釈迦さまが言うのですが、
これはどう考えても史実と違う「物語」ですよね。


要するに、新約聖書にしろ遊行経にしろ、
「物語」は、そういう役回りのキャラを必要とする、
ということだと私は思います。



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~  法隆寺の塑像、釈迦入滅シーン。号泣ぶりがリアル。


アーナンダは、25年ぐらい釈迦のそばで身の回りの世話をして、
最後の旅にも付き従いました。
それでも本当の悟りをずっと得られなくて、
臨終の釈迦の前で、オンオンと号泣します。

「バカな子ほどかわいい」じゃないですが、
アーナンダのような人間的な弟子がいることで、
遊行経が胸に染みる経典になっている気がします。


あと、末木先生が書いてて面白かったのは、
涅槃」は、「死」と「悟りの境地」と両方の意味があって、
「これは非常にわかりにくいことだ
」と。
確かに。
お釈迦さまの死が「涅槃」なら、
これを喜べばいいのか、悲しめばいいのか。


お釈迦さまは金の棺に入ったそうですが、
ジェームス・ブラウンやマイケル・ジャクソンと同じですね。
マイケルの金の棺は、250万円だそうです。

あと、アーナンダは、
お釈迦さまより30歳ぐらい若くてイケメンだったそうですね。



釈迦むに・スーパースター ~仏教のつれづれ~ マイケルの金の棺。ベイツビル・キャスケット会社製「プロメシアン」

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