女性から見た釈迦『釈迦』
釈迦仏教の教義や律から見て正しいのか、とかは
わからないのですが、
これ、小説としてはとても面白かったです!
とくに、
瀬戸内寂聴さんだけあって、
女性から見たお釈迦さまや、初期僧団の姿が
ホンネで書かれていました。
(著者の文学的想像による”ホンネ”ですが)
たとえば、
釈迦が突然出て行っちゃって、
残された妻のヤソーダラーが
亡霊になって語る恨みつらみとか。
「(釈迦の父が死ぬ場面で)
この世は無常とお説きになるあなたは、
老いて痴呆になられた父の孤独な死を聞かれても、
眉ひとつ動かさないのではないでしょうか」
妻にしてみたら、突然失踪して、後に息子まで出家させてしまって、
とんでもねー夫、だったことでしょう。
あと、初期教団に、女性差別が厳然とあったことも、ちゃんとかかれてました。
(当時のインドですから、仕方ないのですが)
それから、自称「色ボケ」の寂聴先生だけあって、
出てくる人が、弟子や尼僧も含めて、みんな色欲に身もだえしてるのです。
たしかに、クチで言うのは簡単だけど、
「色欲」だけでも乗り越えるのは、ほんと、しんどい話です。
(『釈迦』 瀬戸内寂聴著 新潮文庫)