富士山の15万倍!? 『須弥山と極楽 仏教の宇宙観』
よく仏教絵画を見ていると、後ろに山が書いてあって、
あれが「須弥山」と呼ばれる想像上の山だとは聞いていました。
じゃあ、仏教では「宇宙」をどう考えていたのかな?と
思っていたら、『須弥山と極楽 仏教の宇宙観』という
ちょうどいい本があり、すかさず読んでみました。
5世紀のインドの仏典「倶舎論(くしゃろん)」の「世品(せほん)」という章に、仏教の宇宙観が書かれているそうです。
本ではそれが図解されてるのですが、
これがかなり荒唐無稽な宇宙なんです。
仏教では、由旬という単位(諸説あるが1由旬=約7kmと
する)が使われるそうですが、、
まず、虚空の中に「風輪」という円盤が浮かんでいて、
厚さは160万由旬=1129万Km。
その上に「水輪」「金輪」という円盤が乗っていて、
厚さはそれぞれ560万kmと224万Km。
その金輪の上は海で、
真ん中に須弥山がそびえたっています。
高さは8万由旬=56万Km。
富士山が3776mだから、その約15万倍です。
どんだけ高いんだよ、須弥山は!
「金輪」=いわゆる地上にある海や山、
三角形の洲などを見るに、
たぶんインドシナ半島やヒマラヤやガンジス河などからの空
想ではないか、と筆者は書いています。
あと、地獄の深さ・大きさも決まっていて、
一番深い「無間地獄」は1辺2万由旬(14万km)の立方体で、
深さは地上から28万Km下にあります。
地獄は地球を軽く付き抜けちゃいますね。
(『大毘婆娑論』には3つの説が書いてあるそうです)。
地上と無間地獄の間に、7種類の地獄が積み木のように並んでいて、
それぞれで刑罰が行われています。
あと、時間の最小単位である「刹那」は、1秒の約75分の1だそうです。
何から何まで、
「え~、そうなんですか?」としか言いようがない宇宙観。
お釈迦さまは、こういうことを考えてなかったですが、
長い間に仏教で宇宙をこう捉えるようになったわけですね。
「いったい何の根拠で?」と問い詰めたくもなりますが、
ちゃんと仏典や文献を読めば、それぞれの根拠が書いてあるのだと思います。
いずれにしても、とてつもなくデカい須弥山が
虚空に浮かんでいる宇宙を想像すると、
これまたうっとりしてしまうのでした。
(『須弥山と極楽 仏教の宇宙観』定方晟 講談社現代新書)