阿修羅展と元ヤン
国立博物館平成館で6月まで行われている「国宝・阿修羅展」が
大人気のようです。
私は何度か興福寺で拝観したので行かないつもりですが、
興福寺では、無粋なガラスケースに入っているので、
今回博物館で見られるのは行く価値ありでしょう(混んでるけど)。
阿修羅展の主催者が仕掛けた「阿修羅ファンクラブ」は
会員が8000人だそうで、なんで日本人はこんなに阿修羅が好きなのか。
◆ 阿修羅は元ヤンみたいな感じ? ◆
阿修羅は仏教では、とんでもなく深い海底に住む元・悪神ですから、
仏像業界において、かなり位が低い存在です。
以前は興福寺でも、この阿修羅像は隅っこにほうっておかれたそうです。
興福寺貫首・多川俊映さんの講演で聞いたのですが、
「位の高い僧侶は、阿修羅像のあるお堂に行かなかったので、
その存在を知らなかった」そうです。
だから阿修羅人気は歴史が浅いのでしょうが、
人気に気づいて阿修羅で「村おこし」ならぬ「寺おこし」をした人は、
賢いですよね。
人間・釈迦むにが説いた仏教には、阿修羅はもちろん、ナントカ天とか、
阿弥陀さえ存在しなかったのが、時代とともにキャラが多様化しました。
さまざまな地域のさまざまな神が、仏教にまじりあったりもしました。
阿修羅は、悪い神さまだったのが、反省して釈迦に帰依したと。
そういうところが人気の理由なんだと思います。
元ヤクザが目覚めて神父になったとか、元ヤンキーが教師になったとか、
そういう「悪人が悔い改める話」は、普遍的に人気があるんですね。
◆ 阿修羅で思い出すゾロアスター教のこと ◆
もともと阿修羅が何だったのか諸説ありますが、よく言われるのは、
ゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー」ら、ペルシア起源の神が
インドに伝わり、めぐりめぐって「阿修羅」になったという説です。
ahura(アフラ)とasura(アスラ=阿修羅)、名前も似てますけどね。
出た、ゾロアスター教!
ゾロアスター教は、紀元前6~7年にペルシャ(今のイラン)で生まれ、
私たちにはほとんど関係ないはずですが、
思い出した頃に、この名前を聞くことがあるのです。例えば、
・1910~1962年頃まで、どこの家でも使われていた東芝の「マツダランプ」。
MAZDA Lampは、ゾロアスター教の光の神「アブラ・マズダ」が由来だった。
・読んでチンプンカンプンだったニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき』。
このツァラトゥストラとは、ゾロアスターのことだと後に知ってびっくり。
じゃあニーチェは、一応神であるアフラ・マズダに「神は死んだ」と言わせて、
キリスト教にケンカを売ったわけなのか?
・クイーンのフレディ・マーキュリー(本名:ファルーク・バルサラ)は、
ゾロアスター教系ペルシア人の末裔らしい。インドでイスラムへの改宗を拒否
したペルシア人「パールシー」の子孫だという。HIVで亡くなった。
・10年ほど前にイランに行ったら、まだゾロアスター教徒がいるらしい。
岩がゴツゴツした恐ろしい山の前で、ガイドさんが
「あの頂上に、ゾロアスター教の埋葬場があります。死人をあそこにおいて、
鳥がきて、まず右の目を突いたら悪人、左ならいい人です(左右は逆かも)」
と言っていた。いまだに鳥葬なんですね・・。
全く知らないのに、たまーに意識に浮上してくるゾロアスター、
阿修羅もそのうちのひとつです。