ミステリー裏返し42 「片桐佐里の絶叫岬」36(最終回) | 千の扉

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コンサルタント西河豊のSTORYを中心としたグログ

先にライナーノーツ

 

STORYとしては最終回、何のことはない関西空港の展望場所での一コマ。

 

ここも松岡圭祐風で書いているのだが、ちょっとミステリー部分とはテイストが違いすぎるのかなと思っている。

 

このミステリー講座はあと5回で、次回はこのSTORYの総括

 

あと4本は、大昔に撮った小説の書き方講座の動画再掲とその解説です。

 

今回、ミステリー講座開講に連れてかなりの方が旧作の「オタクCHAT殺人事件」を買っていただいたようです。

 

ここにお礼申し上げます。

 

***

 

「片桐佐里の絶叫岬」

 

STE13 関西エアポート 

 

エピローグ 関空飛行機発着見学棟

 

俺と片桐佐里は今、関西空港の飛行機発着の見学棟の屋上にいる。

片桐佐里が希望し、俺が車椅子を押してきたのだ。

堀神松広は、関西空港内の警察署員に搭乗棟のトイレに隠れていたていたところを捕獲され、遅れて駆けつけた藤玉警部ら舞鶴署の一行により舞鶴署へパトカーで移送されていった。

最初は大人しく逮捕される素振りを見せていた松広は。片桐佐里の日本の刑務所は、厳重で脱出できないという言葉に恐怖心が沸き逃走を図ろうとした。

しかし、関西エアポート搭乗棟こそ、フライト出来なければ、逃げ場のない牢獄であることを忘れていたようだった。

舞鶴市には、港があり密航という手段をとれば、警察も捜査の枠をはめづらかっただろう。

逃走をフライトで海外逃亡に拘りすぎたことが、パーフエクトだった計画に綻びを生じさせたのだった。

 

* **

 

片桐佐里が離陸していく飛行機を見上げている。

「西河さん、刑事になる7年前、ここで、同じように飛行機を見上げていたの、その時は車椅子じゃないわよ。アメリカで犯罪心理学の学校で勉強しアメリカの警察で働きたかったの、でも、どうしても資金が足りなかった。

両親がある事故で死に、預けられていた親戚の家族に大学卒業させてもらって、それ以上の負担はかけられなかった。だから諦めるためにここに来て、思いだけ飛行機に乗せたの!」

「まだ、佐里さんは若いだろう、夢を諦めることはないよ」

「若い・・・・そうよね、まだ若いよね」と遠くの空を見た。

 

俺は今日ここに来るまでを回想した。

M病院で松広が風邪気味であり、布団に潜って顔を見せていないと聞いてからの彼女の行動は犯罪者心理を追うプロフアイリング捜査を目指していただけに早かった。

すぐさま、「西河さん、タクシーを呼んで!」と俺を介添人として、車椅子のまま舞鶴署へ、そこで、藤玉警部に自分の推理を説明した。

・2つの事件の犯人は堀神松広

・隔離されていた10年間に開かずの間の庭(具体的には偽装された鳥小屋の下)から旅館庭園へ脱出用の穴を掘っていた。

・板野殺害の動機は逃亡を偶然、見咎められたこと。自分への殺傷は、事情聴取で犯人と疑われていると感じたのではないか?という推理だった。

・開かずの間から外部への通じるトンネルが出来ているということはもはや密室ではなく、顔を見せないということはインターネットで誰かと連絡を取り、既に入れ替わっているのではないか?しかし、いずれは逃亡という事実がばれる。そうなると日本中に指名手配の捜査網が敷かれる。

・そこで、松広は、入れ替わりがばれない期間を利用して、パスポート申請をして、海外逃亡を狙うではないか?

逃亡先としてまず考えられるのは、DVDや本があった香港が最有力!

 

そして、藤玉警部に以下の捜査を緊急で依頼した。

・まず、絶景屋敷の再度の調査、それは、開かずの間の中の男を松広本人か確かめること。

庭園に穴を偽装した箇所がある。それは多分、木の板が斜めに突き出た辺り。

掘り返せば必ず穴があるはずなので確認して欲しい。

そして、警察のネットワークを通じて、

・堀神松広名義でパスポートの申請が出されていないか?

・海外への飛行機の搭乗券が、松広名義で抑えられていないか?

調べて欲しいと

それだけ言うと、彼女は、自分の刑事七つ道具をロッカーから取り出し、結果が出る前に行動に出た。

俺に目的地まで車椅子を押して欲しいと頼み、再度、タクシーを呼んだ。

藤玉警部もパスポート関係の情報収集の手配が済むと大浦半島の絶景館へパトカーを飛ばした。

 

片桐佐里と俺を乗せたタクシーは舞鶴から一路、JR新大阪駅へ

そして、特急「はるか」に乗り換え関西空港へ

 

その間も片桐佐里の携帯に舞鶴側捜査の結果速報が続々と入った。

・堀神家、「絶景館」の開かずの間に隠れていたのは堀神松広ではなく別人。

インターネットでアルバイトとして呼びかけられた男。

・庭園の板の突き出ていた付近に、板で蓋で偽装されていたトンネルを発見。

掘り起すと海側へ、つまり、開かずの間の方向に続くトンネルだった。

・堀神松広名義のパスポート申請あり、既に手交済み。

・海外への旅券も旅行社を通じて、抑えられており、その日は10月24日、正に本日!

行き先は香港!フライト時刻は午後4時

と結果より先に行動を起こしていたことが功を奏した。

 

彼女は、梅広に刺される前から彼が犯人ではないかと直感していたと言った。

そして、入院中に藤玉警部に、いや舞鶴署に言わなかったのは、体力を回復してから、俺と、地獄に突き落とされた復讐をしたかったと彼女は言った。

「俺は刑事じゃないのに、そんなこと言っていいのかよ」と言うと、

「たまには刑事も理性を外すのよ」と言った。

俺には体に傷を負わされた彼女の気持ちは理解できたし、嬉しくもあったが、まずは梅広を逮捕してからだと気を引き締めた。

はるかの関西空港到着は3時5分でフライトまでには間に合う計算だった。

関西空港に到着すると3階の土産物売り場の中のフアンシーショップで梅広に気づかれないように変装用具を購入し、搭乗口で、2人で梅広本人を確認後、搭乗寸前に本人を確認した。(実際には梅広が逃亡を図り、空港内警察官が捕獲)

 

空を見上げていた、片桐佐里が、そのままの視線で言った。

「西河さん、本当に今回はありがとう~あなたいなければ、犯人は特定できても、寸前で犯人を海外に逃がしていたかもしれない・・・」

「佐里さん、俺、佐里さんのことを」

と次を言おうとした時

「西河さん、今はそれ以上、言わないで!今は2人、吊橋の上で感情が高まり過ぎているのかもしれない。

私もまだ、自分に自信がない、その先を言うのはもう少し待って・・・」

「そうやな」と俺は俯いたまま答えた。

 

顔を見上げるとまた一機、飛行機が飛び立っていく。

「佐里さん、あの飛行機、行く先はイスタンブールかな?」

「そうよね」

「まさか・・・」

「そうよね~まさかだよね」

2人であははと青空に向かって笑った。

関西空港見学棟から仰ぐ空は突き抜けたように真っ青だった。

 

俺はこの時、次のFile「さらば片桐佐里」で彼女とお別れになるなんてまったく思っていなかった。

 

VOL3 片桐佐里の絶叫岬 ~完~ あとがきへ

 

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