ASのネタバレになる事も入っています。
まだ知りたくない。
そう思う方は、
避けて下さい。
「先生?」
キッチンから出て来ない先生の名前を呼んでみる。
丁度仕事の区切りが良い時間なのだから、
ゆっくりと料理をしていても良いのだけれど…
好きな人の姿が、同じ空間に居ても視界に無いのは、
寂しくて…つい、名前を呼んでしまった。
「ん?こっち来い。手が離せない」
「はいっ」
声に招かれるように、私はキッチンへと入ると、
濃厚なバターの香りがしてきた。
「美味しそうです」
「芋餅。知ってるか?」
「えっと…一回だけ食べた事があります」
「そうか」
ニヤリと笑う表情を見て、心臓が激しく動いていく。
トクトクトク。
その心音が、先生に聞かれてしまうかもしれないと、
服の上から胸を押さえると、その手を取られて、キスをされた。
「…ひゃっ」
「まだ慣れない…か。可愛いな」
「…からかったら嫌です」
「別に。いつでも、お前には本気だぜ」
「…はい」
先生と一緒に居たら、
いつか心臓が壊れてしまうかもしれない。
そう思いつつ、それでも幸せだと、背の高い先生を見上げた。
そして、先生はもう一度ニヤリと微笑むと、器用に芋餅と
呼ばれるモノをひっくり返す。
そして、一度お皿に出すと、フライパンに甘醤油を広げて…
じゅっ。
甘醤油の食欲をそそるような香りがキッチンに広がった。
「せんせ?」
「ん?」
「美味しそうです」
「数分の番組だけどな。本気出さないとマズイ」
「先生は、いつでも熱血ですから」
「それより。春歌」
甘える様に、片方だけ広げてくれた腕の中に、擦り寄ると、
私の体を優しく包み込んでくれた。
「キス。良いか?」
「はい」
つま先立ちして、私は薄く開かれた先生の唇に自分のモノを重ねた。
ちゅっ。
軽いキス音の回数が増えていく。
ふらっ。
小さく体が揺らめくと、先生は逞しい腕で私を支えながら、出来上がった芋餅をお皿に並べている。
____余裕がある。
「せんせ」
「大人だから、それ位は…な」
「私だけ…恥ずかしいです」
「ん?俺も感じてる。嘘だと思うか?」
「いえ」
「これ、食いながら、教えてやるよ」
「……はい」
「良い返事だ」
ひょいっと、軽々と私の体を持ち上げた先生は、芋餅の乗ったお皿も持って、
リビングの方へと向かって行った。
お皿と同時でも、危ない感じはしない。
その逞しさや、男らしさから感じる愛しさで、上半身を持ち上げて、
私は先生の下頬にキスをした。
何かしないと…愛が体内で爆発をしてしまいそうで…。
「先生。大好きです」
「俺もだ」
芋餅を食べた後。
もっと愛を欲しがりそうだと思いつつ、私は腕の中で、深く微笑んだ。
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芋餅を作っていても
妄想。