「甘い未来」(蘭春)
ASのネタバレになる事も入っています。
まだ知りたくない。
そう思う方は、
避けて下さい。
____♪
少し前に、黒崎先輩と話している時に思い付いたメロディを五線譜に書いていた。
ふと、良い香りが、自分を包み込んでいる事に気付いて、
私は振り返ると…
「…っと。あぶねぇ」
「あっ…すみません」
「良いって。声掛けなかったのがいけねぇんだから」
「でも」
「まぁな。声掛けたら、消える事もあるからな」
「…ありがとうございます」
「ほら。食え」
気付いた甘い香りは、大学芋のモノだった。
黒崎先輩は、普段の行動から言えば、大雑把な料理しかしない様に思えてしまうのだけれど、
ふわふわのオムライスを作ってしまう位に、器用な方で…
今みたいな可愛いオヤツも作ってくれることがある。
「美味しそうですね」
「事務所に芋が大量だったから、奪ってきた」
「え?」
「どうせ、どっかから持って来たんだろ」
「くすくす。そうですね」
一口口に入れると、先輩の優しさの様な甘さが広がっていく。
「美味しいです」
「隠し味が良いからな」
「えっと…」
「柚子だ」
「柚子っ」
「そいつは撮影で使ったのを持って帰って来た」
「うふふ。先輩には、美味しい食品が集まってくるのですね」
「集まって来なくても、俺が奪ってやる」
「心強いです」
「任せとけ」
「はい」
ドサッと音をたてて、私の後ろに座った黒崎先輩が、ギュッと抱き締めてくれる。
美味しい。
温かい。
心に幸せが満ちて、自然に口が微笑の形になっていく。
「ずっと。続きますよね?」
「ああ。俺が離さねぇからな」
「ありがとうございます」
お互いの口に入れる事を交互に続けて、最後の一個が無くなると、
私は甘える様に、先輩の胸に擦り寄り…
近付いて来た唇に自分の唇を重ねた…。
______甘い恋人と、これからもずっと…。