『麻酔を使った経口胃カメラ』というワードに些か不安を抱えながら看護師さんの指示のもと、ベッドに仰向けになり、眠くなる薬を入れるための針と

血液検査をするための針が据え付けられた。


これからどのように検査をするのか道筋の分からないわたしは看護師さんへ尋ねた。


『あのう、眠くなる薬を使ったら苦痛はそんなに無いですか?』


『そうですね、もう終わったの?と私は患者さんからよく言われます。』


看護師さんはわたしの質問に対し、既に終わったあとの話しをしたので検査中の様子はわからないままだった。


そして喉に麻酔をする、と言ってわたしの口の中目掛けて数回スプレーを吹きかけた。


10秒ほど待ったあとにそれを飲み込む、という作業を3回繰り返し、私の喉は徐々に感覚を失っていった。


次に"シムスの対位"になるように指示をされ

口にマウスピースのようなものを嵌められ

眠くなる薬を腕から注入され、わたしはこれから口に入るカメラが映し出されるであろうモニターをジッと見た。


それが、最後の記憶だった。


ポンポンと肩を叩かれたか、名前を呼ばれたか、定かではないがわたしはハッと目を開けた。


ムクッと起き上がったかと思うと


『もう終わったんですか?』


と、看護師さんが患者からよく言われるというあのワードを発していた。


看護師さんはそうだ、というようなことを言い

このあと先生から説明がある、というようなことも言い、多少ふらつくわたしを補助しながら待合室まで誘導してくれた。


まだ頭はボーッとしている。


何も考えられない、というのが的確であろうか。


待合室でのわたしは、さながら仕事が終わって帰りのバス内で窓にもたれ掛かり、ウダウダと眠りこける、あの状態であることは何故かハッキリ分かった。


眠たい、とはまた違った感覚。

目をつぶっていたい、とでも言おうか…


程なくしてまた肩を叩かれたか、名前を呼ばれたか曖昧な中、診察室へ通されたわたしは医師の説明をうけた。


結論から言うと、びらん性胃炎、というものであった。


何らかしら組織を採って病理検査に回される、ということもなく

多少胃が荒れているから薬を処方する、というものだった。


医療の進化が止まったままのバリウム検査後、

胃薬飲んどけ

と言い放つ、あの検診の時に決まってそこに居る医師は強ち間違ってはいなかったらしい。


それにしても、眠くなる薬を注入されたであろう瞬間から、最早眠い、とか眠気が、とか、そんなこと思う暇もなくわたしは意識を失った。


始まりも終わりにさえも気付かず、痛いも気持ち悪いも知らず、もしかして胃カメラ検査なんて実はやっていないのでは…とさえ思った。


終わったあと医師に、カメラで撮影した画像を見せられても


あぁ、この胃はわたしのだね


と思う筈もないのだから無理はない。


しかし、処方された薬を飲むようになってから食後の胃の痛みは無くなっている。


あんなに、大して食べてもいないのに

何でこんなに毎回胃が痛むのだろう、もう食事をするのも嫌だ

と思っていたのに、その痛みが無いのである。


あの、検診の時に決まって居る、胃薬でも飲んどけ医師も、この事実を知ったらそれみたことか。と言いそうである。


だから飲んどけって言っただろう、と。

いまなら、マックのポテトを食べるのも怖く無い。


だって薬飲んでんだから。






結びに



ご心配をおかけしました皆さま、この場を借りて御礼申し上げます。