中国海軍の空母艦隊が第一列島線を越えて西太平洋で訓練をするという。朝日新聞は「訓練用」とか「異例」の頓珍漢な修飾語をつけた見出しにしている。性能はともかく訓練用の空母などあるものか。東シナ海で実弾装着した実機搭載して演習をしていた実空母を「訓練用」と矮小修飾するとは…。最近のオスプレイ不時着大破報道では米軍の事故なので「不時着ではなく墜落」と大言壮語していた朝日新聞は中国海軍の話になると実空母ではなく「訓練用空母」などと話を小さく語るバイアス報道をするのにはいつもの事ながら呆れるばかりである。

 

 

引用http://www.asahi.com/articles/ASJDS7FDYJDSUHBI03J.html

『中国海軍の訓練用空母、西太平洋へ 異例の「遠海訓練」』

中国国防省は24日、中国海軍の訓練用空母「遼寧」が同日、訓練を行っていた東シナ海から、「遠海訓練」を行うとして西太平洋に向かうと発表した。経路は不明だが、宮古海峡などを通過する可能性も指摘されている。一部中国メディアは、遼寧が西太平洋に出るのは初めてとしている。

 

 日本や台湾などを結ぶ「第1列島線」を越え、広域での実戦能力を向上させる構え。台湾や南シナ海問題などで対中強硬姿勢を見せる米国のトランプ新政権を牽制(けんせい)する狙いもみえる。その後、南シナ海に向かう可能性も指摘されている。

 

 国営新華社通信によると、艦載機を載せた遼寧と駆逐艦など数隻の艦隊が黄海から東シナ海にかけて、艦載機の発着訓練や戦闘訓練などを実施。海軍トップの呉勝利司令官が遼寧に乗り込み、直接指揮を執る異例の態勢で臨んでいる。

 

遼寧省大連で中国初の国産空母が建造中で、近く進水するとの情報もある。国産空母の就役を前に、遠洋の実戦能力を習得しようとしているとみられる。(北京=西村大輔)

 

引用終わり

 

朝日デジタルはざわざわ訓練用空母と書いているが 産経ニュースは中国海軍の発表通り 「中国初の空母「遼寧」の艦隊が西太平洋での遠海訓練に向けて出発した。」としている。(http://www.sankei.com/world/news/161225/wor1612250009-n1.html)。朝日らしく中国軍の行動なら敵対的なものでないように修飾する。 

操縦訓練用オンリ-の航空機には練習機があるが、実弾装着した艦載機を着発艦し、そのまわりを駆逐艦や潜水艦でガ-ドする空母艦隊の空母が訓練用空母などであるわけがない。たとえ性能はばったもんであるかもしれないが、訓練用などという修飾が朝日新聞常套の「だまし」である。

 

「海軍トップの呉勝利司令官が遼寧に乗り込み、直接指揮を執る異例の態勢」とは何を言いたいのか。異例とは前例がないというだけのことである。そもそも中国は「遼寧」取得する以前は空母艦隊は編成されていなかった。それが「遼寧」取得によって空母艦隊が編成され、その演習に第一列島線を越えて西太平洋に出てくるという話である。前例が不存在なのだから異例なの当たり前である。いや前例がないのに異例というのは言葉を知らないのかもしれない。

 

最初の西太平洋演習であるから軍幹部としては党幹部へのメンツもあるだろう。米国と対峙する力があるということを見せつけなければならないから呉勝利司令官が遼寧に乗り込み、直接指揮を執るのであろう。これをみても「遼寧」が訓練用空母などと朝日が勝手に矮小化するのは頓珍漢の極みである。

 

 

ところで 朝日だけでなく 産経もこの中国海軍の行動について「トランプ次期米国大統領の対中政策牽制の狙いがありそうだ」と書いているが、「牽制の狙いがありそうだ」が新聞記者の今年の流行語大賞になりそうだ。しかし中国海軍の行動はトランプ次期米国大統領の発言にいちいち反応して牽制しているのではない。中国の海洋覇権追求戦略に基づいて示威行動をしているのである。「牽制」などという小さな話ではない。かつて日本が満州国を建設して当時の世界秩序に挑戦したの同様に、中国は現在の世界秩序に挑戦してきているのである。既存の世界秩序を良しとする日米などの主権国家群は中国の挑戦に対して、冷戦か熱戦かは別にしても力で対処せざるを得ない。国際社会は世界大戦の危機に直面しているのである。