入院中は、リハビリ担当のスタッフが、根気よく院内でのウォーキングに付き合ってくれた。
約2週間、「絶対に動かないように」と安静を言い渡されて集中治療室でずっと寝て生活していたせいか、一般病棟に移って初めて歩いてみたときの不安定感は、とてもひどかった。
1日2回、廊下を50メートル歩いて、ベットに戻って血圧測定。
リハビリの先生は、退院まで約1週間、毎日、私がとぼとぼ歩く横で一緒に歩いて、リハビリしていただいた。

筋肉が弱くなったのか、とても走れるような体ではなくなってしまっていた。
(もちろん、走るのは禁止されているが)
歩くどころか、風呂に入って体を洗うことさえも大変疲れるのだ。
台所で食器を洗うことや、掃除機をかけるようなことさえ、かなりの重労働なのだ。

退院してから、うちの近くの公園で歩くことにした。
1週、約480メートル。
ここは、中学・高校生のころ、クラブ活動でジョギングしていた公園なのだ。
しかし今は、もうとても走るどころか、よたよたと歩くだけで精いっぱい。
ちょっとした坂道でもとてもつらくて、ゆっくりしか登れず、気が遠くなる。
歩く姿なんで、人には見せられない。

子供のころから住んでいる場所なので、人目を気にして、歩きに出るのは主に夜。
iPodをもって爆音で音楽を聞きながら、毎日ゆっくりゆっくり歩いた。

歩いているうちに、自分の体で気付いたことがあった。
まず、歩行がスムーズではないのは、筋肉が弱ったせいだけではなさそうなこと。
歩き出してちょうど3分ぐらいで、足が固まる感じ。
下半身への血液循環が足らなくなって、筋肉が酸欠になっているのではないだろうか?
いったいどうなっているのだろうか?と考えつつ、体調見るために、毎日少しづつ歩いた。
精神的にも、気晴らしになってよい。

夜の公園には、ジョギングしに来る人、犬を散歩させる人、こっそり野良猫に餌をやりに来る人たちがいた。
季節は、ちょうど、冬から春に変わる頃で、とても気分が良かった。
毎晩歩いていると、いつも来る人や犬の見分けができるようになった。

犬は散歩が大好きで、うれしそうに走っているのが面白い。
年取って太った犬も、同じようにとてもうれしそうに走っている。
ただし、息が「はあっ、はあっ」と上がっているのがおかしい。
この年取った犬はいつもそんな感じで毎晩ゆっくり楽しそうに走っている。

そして、気になったのが、病気の犬。
下半身(後ろの両足や腰)が不自由な犬を公園に連れてきて、毎晩少し散歩させている人がいる。
これは2匹ぐらい見かける。
その病気の犬は、体が不自由でまともに歩けないけど、他の犬と全くかわらず、草の匂いをかいだり、少し動いたりして、やはり楽しそうなのだ。

「悲観してないんだ」と思ったら泣けてきた。