死ぬまでにしたい事のひとつ。

自分が生み出した品種を世に送り出す事です。

その品種がずっと愛されて、多くの人に栽培して、食べて喜んでもらえたら、それに勝る喜びはないとも思います。


長く愛されるために、作りたい品種のイメージがあります。

一言で言うならノーザンハイブッシュ系チャンドラーのサザンハイブッシュ化です。


具体的には

・粒が大きい事(500円玉大の品種は増えてきたので、ピンポン玉に迫りたい)

・甘味と適度な酸味があり美味しい事

・暑さに強く、40℃が数日続くような環境に耐えられる事

・乾燥に強い事

・木がコンパクトな事

・常緑で、冬も葉を楽しめる事

これらの事から、交配親を選定します。

母親になる株にはチャンドラーを選びました。


最近ではチャンドラーに肉薄する品種も多いですが、ブルーベリー界の極大粒品種の代名詞的存在です。

時々500円玉を超える程度ではなく、花芽調整、摘蕾などをある程度すれば、高確率で500円玉サイズが収穫できます。

形は扁平で、やや歪になりがち。

味は酸味系で、未熟だとかなり強烈です。

栽培難度はノーザンハイブッシュ系の中では、易しい方です。暑さにも弱くは感じません。ただ、コガネムシに好まれるのが難点です。


そして父親になるのはダローアイのインディゴブルーです。


サザンハイブッシュ系の先祖的存在の近縁種です。

この系統とノーザンハイブッシュが掛け合わされ、サザンハイブッシュ系が誕生しました。

サザンハイブッシュ系の一部品種の半常緑性はこの品種の常緑性を受け継いでいるものと考えられます。


果実は小さいですが、完熟すれば甘く、暑さに強い、乾燥に強い、木がコンパクト、害虫があまりつかない、葉や樹形が美しいなど、割と長所が多いです。

果実が小さい以外には小枝が乱立する事が短所です。この特徴がサザンハイブッシュの多くの品種に遺伝しているようで、小枝が密に出る品種はサザンハイブッシュに多いです。


さて、作業は完了しています。

チャンドラーの雌しべにインディゴブルーの花粉を付けたのが5月の頭です。

チャンドラーの実験対象の花には、開花前に袋を掛けて、他の花粉が付かないようにしました。

開花を確認したら、すぐに筆を使ってインディゴブルーの花粉を付け、袋を被せておきました。その翌日に花弁が外れたので、受精はできていると思います。


現在の様子です。

先端にある3つが、チャンドラー×インディゴブルーで交配した物です。

チャンドラーの中で1番遅く咲いた花を使ったので、まだ果実が膨らんでいませんが、同じ木の別の花はここまで肥大してきています。

ここまで来たら安心できるのですが、受粉が上手くいったからと言って必ずしも果実になるわけではないのでまだまだドキドキです。


この後果実ができたら、種子を取り、播種します。

その子株を果実が実るまで栽培して、理想に近い性質を持った物を選抜していきます。


どの部分がどちらの親から遺伝するかは、人間同様選べませんし、祖父母や更に遡ったところで出ていた性質が出る事もあります。

理想通りの個体ができる確率はかなり低いとは思いますが、果実、種子をしっかりと採取し、発芽させる事を第一の目標としてやっていきます。


まずは、果実3つだけの挑戦なので、半分遊びのような物ですが、いつかは大々的にやってみたいです。

本来仕事として品種改良をされている方は大農場で、同じ親同士の交配で種子を何千、何万と取り、その中から選抜をするという、気の遠くなるような作業をされています。

果実3つだけでの挑戦は1枚だけ購入した宝くじに夢を託すような物ですが、何事も挑戦あるのみ!の精神でやっていきたいと思います。


ブルーベリーは、種子からだと果実が着くまでに長い年月が掛かるので、かなりの長期戦になりますが、動きがあれば定期的にブログに載せていきたいと思います。