11月頃から順次休眠枝挿しをしてきたブルーベリーたちの現状です。
挿し木の様子は
挿し木という枝を土に挿すだけで無限に個体を増やせてしまう作業を行いました。
(種苗法により増殖が制限されている品種の増殖はしていません。4月から法律が改定されているので、植物を増殖される方は今一度ご確認を)
本来ブルーベリーの休眠枝挿しは、秋から冬に枝を取っておき、冷蔵庫で暖かくなる直前まで保管しておくのが一般的です。
しかし、土に挿した状態で屋外で保管しても、水を切らさない事を心掛け、数日以上凍ったままにならない地域であれば割と上手く行く事が分かっています。
当園では、1,000本単位で挿し木をするので、冷蔵庫に枝を保管しておくスペースが無い事もあり、切ったらそのまま挿し木をしています。
注意点は11月に挿しても翌年の3月に挿しても発根するタイミングはほとんど変わらないという事です。
ブルーベリーはまとまった休眠時間を要求します。
その間は寒さに当てて休ませないといけないため、イチジクのように秋に室内で挿し木をして、冬の間に発根させる事は基本的にはできません。
(一部のサザンハイブッシュ系では1月頃に室内で挿し木をする事で早く発根させる事ができますが)
早く挿し木をするというより、挿し木を済ませた状態で保管しているというイメージです。
さて、その挿し木ですが、暖かくなりようやく芽が動き出してきました。
1,2枚目はほとんど葉が出ていますが、根は出ていないと思います。枝の切り口から道管が剥き出しになっているので、そこから枯れない程度には水が上がります。
そして、葉が出るのは枝に蓄えられたエネルギーを消費して出しているだけです。
根が出るのは基本的に葉が出てからしばらく経った後です。しかし、この時点で失敗していれば葉も出ないのでとりあえず第一段階は突破したと言えます。
根が無いので、限られた量しか水を吸う事ができないため、葉は一旦枯れる事がありますが、その間、傷口にはカルスが巻き、徐々に根が出てくるので、穂木が枯れない限り心配はいりません。
ノーザンハイブッシュ系の挿し木は動き出しもゆっくりです。
1本試しに抜いてみましたが、挿し木の鉄則は穂木をなるべく動かさない事なので、真似しないか、真似する場合は抜いて確認する用の穂木を決めておく事をオススメします。
穂木の土に挿している部分をくさび型に切っていますが、その周りに白っぽい物が付いているのが分かると思います。
こちらは向きを変えた写真ですが、切り口の端を一周するように白い物が付いています。
この白い物がカルスです。人間で言えばカサブタですが、植物のカルスは必要に応じて植物の全ての器官になる事ができるのでより有能です。
挿し木の場合は、土の中で水を吸収する事、植物体を支える事が求められるのでこのカルスは根になります。
この、穂木は既にカルスが巻いていますが、休眠枝挿しの場合、まだカルスが巻いていない物が大半だと思います。枝が元気であれば抜いて一喜一憂する必要は全くありません。
逆に現時点で失敗している物は茶色く枯れ込んだり、シワが入って張りが無くなっているはずです。
この辺りは霜柱で持ち上げられ、その間吸水できなかった事が原因で枯れてしまいました。
切り口から徐々に枯れ込んでくる場合は細菌の可能性もあります。
発根する時期は前後すると思いますが、休眠明けから1か月程度は掛かるので気長に待ちます。
5月中に発根、6月〜7月に鉢上げというサイクルで管理する事ができれば来年の春にはそれなりの苗になっていると思います。
そして、今回の挿し木で使ったセルトレイですが、根が絡まない利点はありますが、異常に乾きが早いため、基本的にはあまりオススメできません。
ポットや仕切りの無い育苗トレイがオススメです。
最後に接ぎ木挿しのスパルタンです。
大きくは変わっていませんが枯れてきてもいないので悪くは無いと思います。
ちなみに、接ぎ木で穂木と台木がつながる際にもまずはカルスが形成され、その後に養水分を送る道管や師管など各器官が再生されます。
傷口同士を合わせておくだけで、バイパス手術が完成するような物なので、本当に不思議です。