私も本で読んだのですが、今日は、このエピソードをご紹介したいと思います。
皆さんは、ドイツの偉大な哲学者のイマヌエル・カントをご存知ですか?
カントは、1724年、東プロイセンの首都ケーニヒスベルク(現ロシア領カリーニングラード)で、皮革工親方の三男として生まれました。
カントは、生まれつきのくる病でした。
背中にコブがあり、乳と乳の間は、わずか2センチ半、脈拍は絶えず120~130、喘息で、いつも苦しげに喘(あえ)いでいました。
ある時、町に巡回医師がやってきました。
少しでも苦しみを和らげられたら、と父はカントを連れて診せに行きました。
診て貰ってもどうにもならないことは、カント自身にも分かっていました。
そんなカントの顔を見ながら、医師は言いました。
その言葉がカントを大哲学者にするきっかけとなったのです。
「気の毒だな、あなたは。
しかし、気の毒だと思うのは、体を見ただけのことだよ。
考えてごらん。体はなるほど気の毒だ。それは見れば分かる。
だが、あなたは、心はどうでもないだろう。
心までもせむしで息が苦しいなら別だが、あなたの心はどうでもないだろう。
苦しい、辛いと言った所で、この苦しい、辛いが治るもんじゃない。
あなたが苦しい辛いと言えば、お母さんだってお父さんだってやはり苦しい、辛いわね。
言っても、言わなくても何もならない。
言えば、言うほど、みんなが余計に苦しくなるだろね。
苦しい、辛いというその口で、心が丈夫な事が喜びと感謝だと考えればいい。
体は、ともかく、丈夫な心のお陰であなたは死なずに生きているじゃないか。
死なずに生きているのは、丈夫な心のお陰なんだから、それを喜びと感謝に変えていったらどうかね
そうしてごらん。私の言った事が分かったろ。
それが分からなければ、あなたの不幸だ。
これだけがあなたを診察した私の、あなたに与える診断の言葉だ。
分かったかい。クスリは入りません。お帰り」
カントは言われた言葉を考えました。
「心は、患っていない、それを喜びと感謝に変えろ、とあの医師は、言ったが、俺は今まで、喜んだことも感謝したことも一遍もない。
それを言えと言うんだから、言ってみよう。
それが、分かっただけでも、世の中の為には、少しはいいことになりはしないだろうか」
大哲学者の誕生秘話です(宇野千代著「天風先生座談」より)
健康とは、体を健やかに保つことですが、それ以上に大事なのが、心を康らかに保つことだと教えてくれています。
人間は、営業に限らず、人生において、何より心を鍛え、自分が魅力的な人間になることに、集約される気がします。