2026年1月20日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、カナダのマーク・ジョセフ・カーニー首相が行った演説(https://note.com/8bit_horijun/n/n4a23e2faa66f)は、今日の世界情勢を的確にとらえた提案として注目されている。演説の中で、カーニー氏は、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスの「強者はやりたいことを行い、弱者は耐えるしかない」ということばを引用しながら、アメリカのような強大な力をもつ大国の横暴を批判している。そして、カナダのような中堅国がなすべきは、団結することによって、ルールに基づいた世界秩序を回復させることだと説いている。
演説の内容は、アメリカのドナルド・ジョン・トランプ大統領の一連の政治行動にまっこうから反対するものだが、それに対してトランプ氏は「カナダはわれわれに感謝すべきだ。カナダが存在しているのはアメリカのおかげだ」と応酬した。
トランプ氏の悪行は、就任直後の2025年1月に、全世界に対して、一方的に追加関税を課す“相互関税”を発表したところから始まった。これは、相手国の事情を考慮せずに自国の利益だけを主張するという、自分かってで理不尽きわまりないものだ。アメリカの“力”を背景に、「報復関税で対抗するならさらに関税を増大する」と、相手を脅迫しながら、関税協定を強引に押しとおす。それに対してヨーロッパ各国や日本は、これまでの貿易秩序や慣行を度外視した異常な提案に、あからさまに反対するのではなく、できるだけ穏便におさめようと、譲歩する姿勢を示した。アメリカの貿易不均衡は、自国の輸出競争力の低下とアメリカ国民の旺盛な消費性向にそもそもの原因があるのだが、それらを指摘する声はうち消された。各国首脳は、「できるだけ自国に有利になるように」と、トランプ氏との個別の首脳会談・電話会談を競いあった。
トランプ関税に報復関税で対抗した中国は、一時期、100%の追加関税に直面した。ところが、「レアアース(希土類元素)の輸出を制限する」という報復措置をうち出すと、トランプ氏は急に弱気になり、アメリカからの譲歩をひき出すことに成功した。このように、トランプ氏には、自分より弱い相手には徹底して強気に出るが、強い相手に対しては低姿勢になるという、「いじめっ子」に特有な「支配欲求」と「自己肯定感の低さ(主体性のなさ)」がみられる。
【希土類元素…31種類あるレアメタル(希少金属元素)のうち、アルカリ土類金属およびランタノイド元素の総称。スカンジウムSc、イットリウムY、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、ガドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb、ルテチウムLu の17の元素をさす。元素それぞれによって用途がわかれる。】
大統領選挙のときから「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」というスローガンに酔いしれていたトランプ支持派(MAGA派)は、「アメリカの膨大な貿易赤字は、相手国の不公正のせいだ」とするトランプ氏の主張をそのまま信じて、“相互関税”を支持する人が圧倒的に多かった。しかし、アメリカ国民全体としてみると、2025年4月時点で54%の人が反対していた。
2026年3月4日にアメリカ・連邦最高裁判所は、「トランプ大統領が発令した関税を無効とする」判決を下した。これにともなって、アメリカ・国際貿易裁判所は、関税の還付への手続きをアメリカ政府に命じた。大手企業からは、納付した関税の返還要求が続々と出されている。
「関税政策」と並行して、トランプ氏は、“アメリカ第一主義”に基づき、「カナダとの大幅な貿易赤字や不法移民対策の不備を解消するために、カナダを併合して51番目の州にする」「北極圏でのロシア・中国の脅威に対抗するために、グリーンランドを領有する」などと、“覇権主義的”な発言をくり返している。これらについては、明海大学の小谷哲男教授によれば、「カナダ領有」は、カナダの豊富な資源や経済圏を自国にとり込むためであり、「グリーンランド領有」は、軍事的な価値(北極圏の防衛)と地下資源(希少金属など)をとり込むためだという。
この“身がって”な発言に対しては、カナダ国民の90%が反対し、グリーンランド住民の85%が反対している。グリーンランドの中心都市ヌークでは、数千人の住民たちが「島は売り物ではない」と、反アメリカのデモを行った。さらに2026年1月6日には、ヨーロッパ7か国が、トランプ政権の動きに対抗して、「グリーンランドの領有は住民だけが判断するべき問題だ」とする共同声明を発表した。そして2月6日には、カナダとフランスが、グリーンランドに領事館を設置した。アメリカ・CNN放送は、アメリカ国内でも、国民の66%がカナダ領有に反対(賛成は17~20%)し、75%がグリーンランド領有に反対(賛成は25%)だと伝えている。
このように、トランプ氏の「カナダとグリーンランド領有」発言は、これまで親密だったNATO(北大西洋条約機構)の同盟国間に、〈アメリカ〉対〈カナダ〉の対立、〈アメリカ〉対〈西側ヨーロッパ諸国〉の対立、という深刻な“断絶”を生じさせた。
このような「アメリカの孤立化」から問題の視点を他へそらすべく、トランプ大統領は、2026年1月3日にとつぜん、ヴェネズエラへの軍事奇襲作戦を強行した。これは、「アメリカ特殊部隊が、ニコラス・マドゥロ・モロス大統領の居住地を襲撃して、大統領を拘束し、アメリカ本国へつれ去る」という、スパイ映画さながらの、とんでもない事件である。ところが、これが短時間のうちに成功りに終わったことで、アメリカの圧倒的な軍事力と諜報能力、そして兵士の高い遂行力を、世界に見せつけることになった。
この電撃作戦のニュースは、すぐさま世界中のメディアに流れて、世界中の人々を震撼(しんかん)させた。アメリカの友好国である欧米諸国や日本などは、軍事侵攻についての詳細をニュースで伝えながら、アメリカ政府への直接的な非難は避ける、という抑制的な反応を示した。それに対して、反米的な国家の元首・専門家らは、「これは《武力の行使および威嚇(いかく)の禁止》《国家の主権と領土保全の尊重》という『国際連合憲章』の原則に反する」として、トランプ政権の邪悪さ・危険性をきびしく糾弾した。国連(国際連合)のアントニオ・マヌエル・デ・オリヴェイラ・グテーレス事務総長も、「国際ルールを破る、危険な前例になる」と、強いことばで警戒感を表している。
さらに2026年2月28日には、「イスラエルとアメリカが、共同軍事作戦によって、イランの最高指導者アヤトラ・セイェド・アリ・ホセイニ・ハメネイ師の邸宅を空爆し、最高指導者とその側近、イラン軍の最高幹部らを殺害する」という事件が起こった。これは、2024年10月に起きた「イラン滞在中のハマース幹部をイスラエルがミサイル攻撃で殺害した」事件と似ているので、同種の軍事作戦が実行されたのだと思われる。【これらの作戦は「斬首作戦」(ざんしゅさくせん decapitation strike)と呼ばれている。】どちらの場合も、対象者の現在位置を局所的かつ精確につきとめて、そこを瞬時に空爆して殺害する、という“異次元の技術”が使われている。
このイランの事件については、もともと、バラク・フセイン・オバマ2世・元アメリカ大統領が、2015年にイランとの対話で実現させた「包括的共同作業計画 JCPOA」(あるいは「イラン核合意」とも呼ばれる)が、ことの発端になっている。JCPOAでは「イランが核開発に関して国際原子力機関(IAEA)の厳格な査察を受け入れる代わりに、経済制裁を解除・緩和する」ことになっていて、アメリカ・イラン・イギリスなどが合意・締結していた。ところがトランプ氏は、この合意によってオバマ元大統領がノーベル平和賞を受賞したことが気にいらず、これを「最悪の合意」だとして厳しく批判していた。そして2018年に自分が大統領になると、一方的に合意を破棄してしまった。今回のイランの事件について、トランプ氏は、「歴史上もっとも邪悪なハメネイ師が死んだ。これはイラン、アメリカ、そして世界の多くの国にとって“正義”である」とSNSに投稿している。
このあとのイランとアメリカの軍事的な応酬は、ニュースでさかんに報道されているとおりである。イランはただちに、イスラエルおよびペルシャ湾岸アラブ諸国にあるアメリカ軍基地などを空爆して報復したが、それに対してアメリカ・イスラエル軍は、イランの軍事施設へのミサイル攻撃で反撃した。そこでイランは、2026年3月2日に「ホルムズ海峡を封鎖する」という対抗手段に出た。これは、戦争当事国のイスラエル・アメリカだけでなく、無関係の国々もまきこんで、海峡を通航する船舶への航行妨害を行うもので、国際法の「国際海峡の自由通航権」を侵害している。
アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃を受け、開催された国連安全保障理事会緊急会合では、イランは「国際法違反だ」とアメリカを強く非難した。しかし、2026年3月11日に採択された決議案では、「イランがペルシャ湾岸近隣諸国に行った攻撃を非難し、攻撃の即時停止を求める」となっていて、アメリカとイスラエルを非難する文言はもり込まれなかった。全15理事国のうち13国が賛成し、ロシアと中国は棄権した。決議案はさらに、「ホルムズ海峡を航行する商船への攻撃や威かくを非難し、航行の安全確保を求める」として、ホルムズ海峡の開放を要求している。決議を支持する共同提案国は135か国以上となり、ロシア・中国の国連大使は「紛争の根本原因はアメリカとイスラエルの攻撃にある」と批判した。
イランは当初、イランに味方する国の船舶の航行だけを認めることで、自分たちの立場を有利にしようとしていた。ところが、トランプ氏がそれに怒って、「イラン国内のすべての橋と発電所を4月7日の深夜までに破壊する計画がある」(CNN 2026年4月7日)、あるいは「今夜、ひとつの文明が滅びて、二度と元に戻ることはない」(Forbes誌 2026年4月8日)などと、きわめて過激で侮辱的な表現を使って、イランへの攻撃をさらに強めるぞと脅迫した。
結果的には、ここにいうような凄惨な攻撃は回避されたが、2026年4月12日に、アメリカが「ホルムズ海峡の逆封鎖」という対抗手段をとったことで、さらに状況は複雑なものになった。その後、イランとアメリカ双方の話しあいは、決着したかのように見えたときもあったが、すぐにまた決裂してしまい、ホルムズ海峡はほとんど封鎖されたままだ。
このようなトランプ氏の行状に対しては、アメリカ国内でも、反トランプ派の人たちが精力的に大統領批判をくりかえしている。その中には、有名なハリウッド・スターたちもいて、メリル・ストリープさんは、2017年1月の「ゴールデン・グローブ賞」受賞式典で、トランプ氏の障がい者差別を糾弾した。また、ロバート・デ・ニーロさんは、2024年5月「カンヌ国際映画祭」の「名誉パルムドール受賞式」で、「いじめっ子を勝たせてはいけない」という表現で、トランプ氏の俗悪さを痛烈に批判した。また、政治家の中にも、連日トランプ批判を続けている人が多くいる。そのひとり、民主党のマーク・エドワード・ケリー上院議員は、「トランプ政権が軍に下す違法な命令には従わないように」と軍人らに呼びかける、異例な行動をとっている。これについて、国防総省(現在は戦争省)は、ケリー氏の退役軍人としての「階級降格」と「年金減額処分」という懲罰を与えようとしたが、連邦地方裁判所はこれをさし止めた。
また、アメリカ国内のニュース・メディアも、トランプ氏に批判的な姿勢をとっている。報道は本来、〈客観性〉と〈中立性〉を守るべき立場にあるはずだが、このトランプ氏に関してだけは、『ニューヨーク・タイムズ紙』『ワシントン・ポスト紙』『CNN放送』『CBS放送』など主要メディアが、こぞってトランプ氏を糾弾する記事を、連日のように掲載している。
たとえば、トランプ関税が発表された直後には、「物価上昇をまねき、経済を破壊する」「関税率の算定が“いいかげん”で、状況に応じて目まぐるしく変わる」などと、きびしく批判した。その後も、各国首脳がトランプ氏との対応に苦慮して、ときにはきびしい批判をし、ときにはなんとか気に入られようとゴマをするようすを、おもしろおかしく伝えている。ニューヨーク・タイムズ(2025年7月8日)は、「トランプ時代の世界の外交は、おだてるのがすべてだ」という見出しで、「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、トランプ氏へのノーベル平和賞を推薦した」ことを報道した。また、CNN放送(2025年9月22日)は、2025年9月のトランプ氏のイギリス訪問について、「イギリスは、トランプ大統領が自分をなぞらえている『王』にふさわしい歓迎でもてなした」と伝えている。
最近では、イギリス『ガーディアン紙』が、イランのホルムズ海峡封鎖についてトランプ氏がSNSに投稿した「いまいましい海峡をあけろ、おまえら気の狂ったならず者ども」"open the funckin' strait, you crazy bastards"(Guardian インターネット版4月5日)という文章を、そのまま引用している。この引用文は、(いまさら解説する必要もないと思うが)、性的で卑わいな表現(funckin')、差別的で乱暴な表現(bastards)が、そのまま使われている。本来なら、新聞に掲載する場合には、(fu***in')(bas***ds)のように、ことばを伏字(ふせじ)にすべきところだ。それを、あの冷静・沈着なガーディアン紙が、あえて伏字にしなかったというのは、よくよくの思いがあってのことだ。一国の首脳という地位にある人が、公の場で、これほど下品なことばを使った例は、トランプ氏以外には見たことがない。
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ロシアによるウクライナ侵略が2022年2月24日に起こってから、4年以上が経過した。
2026年現在、ウクライナ軍・ロシア軍をふくめた犠牲者(総死傷者数)は、200万人に達する見込みである。CNN(2026年)によると、これまでに、ウクライナ軍の死傷者数は52万5000人~62万5000人(そのうち戦死者数は12万5000人~15万人)に達するという。また、SCIS(アメリカ戦略国際問題研究所)の調査(2026年)によると、ロシア軍の死傷者数は140万人(そのうち戦死者数は45万人)と推定され、ロシアの総人口の1%が死傷したことになる。ロシア軍のほうがウクライナ軍より死傷者が多いのは、ロシア軍の「人命軽視(新兵や囚人兵士を消耗品扱いする)」と、ウクライナ軍による「先進的な戦術(ドローンなどを非対称戦術で使う)」などの効果によるものとされる。
また、JETRO(日本貿易振興機構)によると、2025年のウクライナの戦費(国防費)は507億ドル(2兆2,248億フリブニャ)で、これは国内総生産(GDP)の約27%に達し、ウクライナの国家予算の約57%を占める。ロシア政府の公式試算では、2025年の戦費は約1428億ドル(11兆ルーブル)になり、これに安全保障費を含めた予算は、国内総生産(GDP)の約7.3%に達し、ロシアの国家予算の約38%を占めるという。
こうまで犠牲を払って、ロシアが求めたものとは、いったい何だったのだろうか。
ロシアのヴラディミル・ヴラディミロヴィチ・プーチン大統領は、東ヨーロッパやバルト海沿岸諸国が、つぎつぎとNATO(北大西洋条約機構)に加盟していくことに、強い危機感をもっていたとされる。NATOはもともと、第2次世界大戦後の冷戦期に、拡大するソビエト連邦(現在のロシア)の軍事的脅威に対抗し、西ヨーロッパの民主主義国家を防衛する目的で、1949年に設立されたものだ。それが、1991年にソ連が解体して、民主国家ロシアが成立したあとも、そのまま残されたのはなぜか。それは、1)東ヨーロッパ諸国が民主化するのを助ける、2)ロシアに残る旧保守派をけん制する、という目的で、NATOの存在が必要と考えられたからだ。しかし、これでは、「NATOは“反ソ連”を“反ロシア”に置きかえただけの軍事同盟ではないか」という疑念をロシア側に抱かせることになった。
プーチン氏は、NATOを「ロシアの勢力圏を侵害するもの」「ロシア国内の体制転換をねらっている」と考え、「ウクライナがNATOに加盟することになれば、西側欧米がロシアののど元にミサイルを突きつけることになり、けっして容認できない」と結論付けた。
2013年にウクライナで、親ロシア派の大統領が失脚すると、2014年2月にロシアは部隊をクリミア半島に展開させて、主要な政府施設や軍事拠点を武力で制圧した。さらに住民投票を強行して、一方的にクリミア半島を併合した。それによって、当時G8(主要8か国 Group of 8)のメンバーだったロシアは、他の7か国からメンバーを外され、現行のG7(先進7か国首脳会議 カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ、EU〔ヨーロッパ共同体〕)体制になった。
それから8年後、2022年のウクライナ侵略では、「ナチス勢力がウクライナ国内のロシア系住民を虐待している」という理由をこじつけて、ロシアの軍事侵略を正当化した。また、NATO、EUなどがウクライナ戦争への軍事介入を行わないように、「…ロシア領内を守るためには、どんな手段でも使う。これは、はったりではない」(BBC 2022年9月)と、“核兵器の使用”もためらわないことを示唆して威嚇した。そのため、NATO、EUは、ロシアとの直接的な軍事対決を避けて、ロシアに対する経済制裁・ウクライナへの間接的な軍事支援、というかたちをとっている。
国際連合は、2022年2月の第11回緊急特別総会で、ロシアによるウクライナ侵略を「国連憲章違反」とし、無条件の即時撤退を求める決議を、141カ国の賛成(反対5、棄権35)で採択した。2022年10月には、 ロシアによるウクライナ東・南部4州の“違法”な併合を非難する決議を、143カ国の賛成で採択、さらにウクライナ侵略から1年にあたる2023年2月には、ウクライナの領土保全とロシア軍の即時撤退および平和の実現を求める決議を、141カ国の賛成で採択している。でも、国連総会でのこうした決議には拘束力がなく、国際社会からのロシア非難という意思表示にはなったが、実行力が伴わないまま終わっている。
国連安全保障理事会では、ウクライナ侵略に関するロシア非難決議やロシア軍の即時撤退を求める決議が討議された。しかし、ロシアが常任理事国としての“拒否権”を行使して、安保理での決議をすべて阻止した。
そこで、NATO、EU、G7などは結束して、ロシアに対する経済制裁、ウクライナへの国際支援を実施している。ロシアに対しては、
1)ロシアの主要銀行を国際決済ネットワーク(SWIFT)から排除。政府関係者、中央銀行、企業などに対する資産凍結。暗号資産の取引禁止措置
2)軍事転用が可能な物品・技術の輸出禁止。自動車、機械、鉄鋼、化学製品などの輸出規制。ロシア産の金・ダイヤモンドなどの輸入禁止
3)ロシア産原油・液化天然ガス(LNG)の輸入禁止
4)第三国を経由した迂回輸出を防ぐため、域外国の関連企業に対しても規制・制裁を強化
などを課している。
また、ウクライナに対しては、
1)戦時下における巨額の財政赤字を支え、武器などを供与して、ロシアに対する防衛能力を維持する
2)ロシア凍結資産を活用して、ウクライナへの軍事支援や復興費用にあてる。
3)攻撃によって打撃を受けた電力・エネルギー施設に対して、復旧・保護などの緊急支援を行う
などの支援をしている。
ところが、2025年にトランプ政権が発足すると、それまで最大の支援国だったアメリカが、支援継続の条件として、「ヨーロッパ同盟国が援助負担を増額する(ヨーロッパの資金でアメリカの武器を購入する)」ことを要求しだした。これに対してはヨーロッパ側の反発が強いが、アメリカの武器援助の一部をヨーロッパ各国で分担(日本も支援)することで話が進んでいる。また、「(ウクライナの安全保障をアメリカが確約するかわりに)ウクライナの地下資源をアメリカに移譲する」ことも求めてきた。これに対してウクライナ側は、「アメリカとの共同開発」というかたちで妥協しようとしている。
プーチン大統領という人物は、KGB(КГБ ソ連国家保安委員会)の情報部員出身で、1991年から政治活動に参加し、レニングラード(現サンクトペテルブルク)副市長、ロシア連邦保安庁長官などを経て、1999年には首相に就任している。2000年のロシア大統領選挙に立候補して初当選、2004年に再選された。2008年から2012年まではドミートリー・アナトーリエヴィチ・メドヴェージェフ氏に大統領職を譲り、自身は首相を務めた。2012年の大統領選挙で大統領に復帰し、2018年に再選。2021年4月、国民投票によって、さらに2回再選できるように憲法を改正し、大統領の任期を2036年まで延長できるようにした。
したがって、プーチン氏は2000年から2026年までずっと権力の座にあったわけで、独裁に近い政治体制をとっている。国内の反プーチン派の人々は、国外へ逃亡したり、国の要職から外されてひっそりと暮らしているという。そのため、政権内にはプーチンに反対する勢力がほぼいなくなっているらしい。全ロシア世論調査研究センター(ВЦИОМ)によると、ロシア国内でのプーチン氏の支持率は、ウクライナ侵略(2022年)直後が79~80%、最近(2026年)では66%〜67%となっていて、比較的高い支持率を保っている。
ピュー・リサーチ・センターによる世界18か国での調査(2025)によると、 ロシアに対して“好意的”な人は19%、“否定的”な人は79%となっている。プーチン政権は、強権的な国内統治と反欧米的な対外政策を推進してきたので、もしも、プーチン氏が何らかの理由で失脚したときには、政治的混乱が予想される。
プーチン氏の独裁ぶりを示す例として、アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル紙」は、2023年8月に民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が自家用機墜落事故によって死亡した事件をとり上げている。そして、「小型機がプーチン政権の暗殺計画によって墜落した」とアメリカ政府が分析したことを伝えている。また、国際刑事裁判所(ICC)は、2023年3月、「ウクライナ侵略に伴う戦争犯罪」と「ウクライナの子どもを不法に連れ去った戦争犯罪」の容疑で、プーチン氏に逮捕状を出している。
現在、ウクライナ・ロシア両国の戦闘はこう着状態に陥っており、たがいに相手のインフラを長距離爆撃によって破壊する、という消耗戦を続けている。ロシアは、ウクライナ全土にわたって、ミサイル攻撃や無人機による空爆をくり返しており、長期間にわたる人的・物的被害は計りしれない。ウクライナ軍では深刻な兵力不足が続いており、若者やリタイア層の志願兵募集や、前線での女性兵士(現在7万人以上)の活用によって、不足を補っている。
ウクライナ側も、人工知能(AI)を搭載した無人機やFPBドローンなど最新鋭の機器を使った戦術の進化によって、ロシアの主要都市やクリミア半島の軍事・石油施設への攻撃を強めている。これによって、エネルギー・インフラや航空機施設などが甚大な被害を受け、ロシア国内で急激なインフレが起こっている。
こうしたことを受けて、ウクライナ・ロシア両国民からは“停戦・和平”を望む声が高まっている。両国の和平交渉は、2022年3月イスタンブールでの停戦協議を皮切りに、何度となく続けられてきているが、ウクライナ・ロシア双方とも、自分から譲歩して戦争を終わらせることは、きっぱりと否定している。ロシアは、ウクライナ東部ドンバス地方の多くを占領しているもようで、プーチン大統領は、戦争終結の条件として、これらの地域の領土割譲を要求している。でも、ウクライナのゼレンスキー・ウォロディミル・オレクサンドロヴィチ大統領は、これを拒否しており、和平交渉は難航している。
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2026年現在、世界でもっとも嫌われている国はどこか? 『ワールド・ポピュレーション・レビュー』〈https://worldpopulationreview.com/country-rankings/most-hated-country〉の調査結果によると、その問いの答えは、1位が中国、2位がアメリカ、3位がロシア、となるそうだ。【ただし、この結果については、具体的な調査資料が公開されていないので、「どの程度、嫌われているのか」などがよくわからない。】それにしても、「自国中心で国際秩序に従わない」アメリカや、「ウクライナを侵略して国際秩序を乱す」ロシアが嫌われるのはわかるが、他国を侵略しているわけでもない中国が否定されるのはなぜだろうか。その理由について、この調査結果を紹介した「ニューズウィーク」誌は、中国の「独裁体制」「新疆ウイグル自治区・チベット自治区での人権侵害」「台湾へのいやがらせ」「環境汚染」などをあげている。
また、「言論NPO」の2024年度世論調査によると、中国に対してよくない印象をもつ日本人は(89.0%)で、日本に対してよくない印象をもつ中国人は(87.7%)に達するという。2025年11月の「台湾有事」に関する高市早苗(たかいち・さなえ)首相の国会答弁を契機に、両国の関係はさらに悪化しているので、この数字はさらに高くなっているだろう。
問題の発言というのは、「中国による台湾への武力行使や海上封鎖は、『日本の存立危機事態』に該当する」というものだ。この文言を最初に聞いたとき、これは日本人ならだれしも思うことではないかと考え、なぜこれが問題発言になるのか、私には理解できなかった。ところが、「日本の存立危機事態」とは「集団的自衛権の行使が可能となる状況」をさし示しているのだと聞いて、ことばがもつ意味よりはるかに軍事的な意図をふくんでいたことに驚かされた。「集団的自衛権」とは、「密接な関係にある他国が攻撃された場合に、共同で防衛を行う国際法上の権利」をいうが、日本国憲法上不可能と思われてきたことが、2015年に成立した『安全保障関連法』により、一定の条件下での行使が可能になったのだという。これが具体的に、どの程度の軍事行動を表しているのかわからないが、自衛隊の発動を伴うことは確実だろう。
中国は、台湾問題を完全に「国内問題」だと表明しているので、この「存立危機事態」発言は「だんじて許せない悪質な内政干渉」ととらえられた。中国外務省は、ただちに日本への威嚇的な非難声明を発表し、日本への渡航自粛や水産物の輸入制限などの対抗措置を講じた。その後も、経済・観光・文化交流への悪影響が続いており、関係改善の見とおしはたっていない。
中国の習近平(シュウ・キンペイ)国家主席については、最近のアメリカ・ロシアの大統領が極端な対外政策をとっていることもあって、“冷酷な独裁者”というイメージはあまりない。ところが、Wikipediaで習氏の経歴を調べてみると、
1)1974年中国共産党入党
2)2002年中央政治局常務委員に就任
3)2008年第11期全国人民代表大会で国家副主席に選出
4)2012年第18回党大会で中国共産党総書記に選出
5)2013年全国人民代表大会(全人代)で国家主席に選出
6)2013年国家中央軍事委員会主席に選出
とあって、21世紀に入ってからは、とんとん拍子に重要な地位へとのぼりつめていく過程が記述されている。とくに注目すべきは、“共産党総書記”“国家主席”“軍事委員会主席”という「党・軍・国」の最高ポストを一手に掌握している点で、中国では、これを“三位一体(さんみいったい)”とよんで、「最高指導者の標準モデル」として定着しているらしい。また、2018年の憲法改正によって国家主席の任期制限が撤廃され、無期限で国家主席を務めることが可能となった。これによって、全権力を掌握した体制を、半永久的に継続できることになる。2022年に習氏は、異例の3期目入りをはたし、軍や政府の要職を側近でかためる「一強体制」を確立した。
そんな背景もあって、2022年10月22日の党大会で起こった「胡錦濤(コ・キントウ)中国共産党大会途中退席事件」は、習氏の独裁体制を印象付ける事例とされている。胡・前主席が強制的に議場から退席させられる場面は、しっかり映像にとられていて、YouTubeでも流された。中国の報道では、“体調不良だった”と説明されているが、両脇をほかの人たちに抱えられて、悔しさと怒りをにじませながら去っていくようすからして、ただの退場でないことは明らかだ。
また、新疆ウイグル自治区で人権抑圧政策を主導していた共産党書記が、2021年付でとつぜん退任させられる、という事件もあった。そのときの動画も YouTubeで拡散していて、習主席の前で得意そうに話していた男性が、なにかを告げられると、急に顔色を変えて去っていくようすが映っている。当時は、欧米諸国が、ウイグル人に対する人権侵害を糾弾していたときで、『日本経済新聞』によると、この人事は、国際非難をかわすために、書記を事実上「(習主席の)身代わりにして責任をおしつけた」措置であるとされている。
さらに、2026年5月7日には、中国の軍事法院(裁判所)が、汚職事件で調査・起訴されていた元国防相の被告2人に対し、収賄罪などで「執行猶予2年付きの死刑判決」を言い渡した。“収賄罪”で死刑というのも極端だが、さらに驚くのは、それに執行猶予がつくことだ。アメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)が公表した報告書によると、2022年以降、中国国内では、将校36人が粛清され、さらに65人が行方不明か粛清かわからない状況だという。
こうした軍高官の相次ぐ粛清や左遷は、共産党・軍部内での権力闘争と、近年の経済停滞による不透明な政治状況から国民の目をそらすため、と考えられている。
中国の政治は、「中国共産党」が指令し「政府(国務院)」が実行するしくみになっているが、中国共産党は一党独裁なので、いつも自分たちの正当性を主張しなければならない。したがって、国内はもとより、外国からの批判や圧力に対しては、極端といえるほど、徹底的に相手を攻撃する。それはたとえば、〈報道官が反論〉…「中国に批判的な国や個人を名指しで非難する」、〈経済・外交的措置〉…「相手(国・個人)に応じて、相手国大使への直接的な抗議・貿易制限、個人への入国禁止・国内資産の凍結などの制裁を科す」などがある。
とくに日本に対しては、歴史問題・領土問題・安全保障などをめぐって、厳格な外交姿勢をとることが多い。
2012年9月11日に、日本が尖閣諸島を国有化したときは、「日中国交正常化以降で最悪」といわれるレベルまで日中関係が悪化した。中国各地で、大規模な反日デモや日系企業・商店への破壊行為が多発した。また、このとき以降、中国の海洋監視船による領海侵入が常態化している。
2023年8月24日には、東京電力福島第一原子力発電所の汚染処理水を海洋放出した。すると中国は、日本産水産物を全面禁輸にした。
このような中国による攻撃的な外交は「戦狼(せんろう)外交 Wolf Warrior diplomacy」と呼ばれている。この被害にあった国は、日本だけでなく、アジア太平洋から欧米の広い国々に及んでいて、おもなものだけでも、次のような事例がある。
1)2010年、中国の民主活動家・劉暁波(リュウ・ショウハ)氏に、ノルウェイのノーベル委員会が平和賞を授与した。すると中国はこれに反発して、ノルウェイに対し、「サーモンの輸入制限」「外交関係の凍結」「中国への入国ビザ発給制限」などの報復を6年間にわたって実施した。
2)新疆ウイグル自治区・チベット自治区での人権侵害・民族虐殺(ジェノサイド)に対して、イギリス、カナダ、アメリカなどが中国政府高官への制裁を科した。すると中国は、これらの国々の政府高官に対し、「入国禁止・資産凍結・家族への脅迫」などで報復した。
3)中国は、南シナ海の領有(九段線)を一方的に主張して、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどの船舶に対し、海警局船による妨害活動を行っている。2016年に国際司法裁判所は、中国の領有に国際法上の根拠はないとする裁定を下したが、中国はその後も威圧行動を続けている。
4)北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の弾道ミサイルを迎撃するため、2017年に韓国がサード(THAAD:終末高高度防衛ミサイル)を配備すると、中国は、韓国製品の不買運動、韓国への旅行制限などの制裁を科した。
5)2020年、COVID-19(新型コロナウイルス)に対する中国当局の初期対応について、オーストラリア政府がWHO(世界保健機関)へ検証作業を求めた。すると、それに反発した中国は、オーストラリアへの渡航制限を行った。
6)2021年、リトアニアが台湾の代表機関(台湾代表処)開設を認めると、中国は駐リトアニア大使の召還、貿易制限、銀行への制裁などを行った。
多くの資料・統計が示すように、現在、中国はその巨大な経済力と最先端の科学技術力を土台に、世界での存在感を増大している。アジア・太平洋、ヨーロッパでは、中国を最大の貿易パートナーとする国々が、すでに多数派である。また、アフリカとアジアの開発途上国にとっては、欧米や日本を抑えて、いまや中国が最大の援助国であり、自国の経済発展にもっとも貢献してくれる国として、尊敬されている。
その結果、中国主導で始まった「一帯一路構想」や「上海協力機構(SCO)」は、中国の国力の進展とともに、規模を拡張していて、西側欧米・日本のものとは異なる、経済協力圏・安全保障体制が構築されつつある。さらに、「BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどで構成される新興国グループ)」においても、中国がグループのGDP全体の6割を占めることから、今後、中国の発言力が増していくものと予想される。
現在、アフリカ・アジアの多くの国が、中国と親密な友好関係をもっており、こうした国々にとっては、もはや中国は第三世界のリーダー的存在になっている。というのも、国連常任理事国であり、世界第2位の経済大国であり、かつ世界第3位の軍事力(核保有数)をもつ中国に依存することが、自国の存立に欠かせなくなっているからである。とくに、中国への依存度が高い、中小の開発途上国の場合には、大国がもつ強大な経済力・軍事力をおそれるあまり、“信頼”や“友好”などとは違う“従属する”という力学に従って行動していると考えられる。
こうした「権威主義の国家が世界の主導権を握る」動きに対して、西側欧米諸国や日本などは、大きな危機感をもっている。とくにアメリカは、ことあるごとに中国の影響力拡大を警戒して、同盟国などに働きかけて、ハイテク製品の輸出禁止・投資制限・国家分断【デカップリング decoupling…特定国との経済関係を分断する】・リスク回避【デリスキング de-risking…原材料・部品などの調達先を分散する】などを実行している。日本でも、経済界・防衛関係機関・科学技術研究機関などを中心に、中国への進出・交流・接触をやめる動きが目だっている。また、世界的にみても、国家間どうしの親密さとはべつに、民間レベルでは、中国への敵対意識をあらわにする国が増えてきている。
たとえば中央アジアの国々は、おもて向きは中国と非常に友好的な関係を保っているが、国民レベルでは、中央アジア・テュルク系民族と、中国・漢民族との間には、大きな対立がある。それは、2009年の「ウルムチ騒乱(ウィグル民族と漢民族との暴動事件)」をきっかけに、新疆ウイグル自治区に住むウィグル人への中国政府の弾圧が起こったことと関係している。とくに、2014年に習氏の指示によって「再教育収容所」が建設されると、その内部での人権侵害が「ウィグル人へのホロコースト(大量虐殺)」ではないかと、世界中に衝撃的なニュースとして伝えられた。(中央アジアでは口コミで伝わった。)
中央アジアの人たちとウイグル人は、民族的には同じテュルク系に属するので、ことばも文化も近く、強い同族意識をもっているといわれる。
その当時、私は仕事でロシア語圏(中央アジア・ロシア)に滞在していたが、中央アジアでのあからさまな反中国の行動を見ることは、まったくなかった。というのも、中国に対する直接的な抗議活動・デモなどは、政府がきびしく禁じていたからで、中国を批判する新聞記事・テレビ放送・集会なども当然なかった。したがって、中央アジアの人たちの中国への敵対感情は、目に見えないところで、しずかにわき起こっていたようだ。
その証拠に、中央アジアのどこへ行っても、中国人の姿を見ることがなかった。北東アジアから中央アジアへやって来る人はもともと多くはない。それでも、バザールで朝鮮人が経営する店へ行けば、キムチや乾麺、しょう油などの食材を買い求める、韓国人や日本人の買い物客を見かけることができた。【中央アジアの朝鮮人:ロシア語圏の国々には、朝鮮人(朝鮮系ロシア人)が少数民族として居住している。ロシア沿海州から強制移住させられた人々の子孫だが、ロシアとの同化(ロシア人との混血)が進んで、朝鮮語は話せない。】そして世界遺産のある観光地へ行けば、韓国・日本からの団体観光客と出会えた。ところが、どこへ行っても、中国人らしい人かげは、まったく見なかった。(現在ではどうかわからない。)
首都にある民族博物館へ行くと、同じテュルク系民族に属する、カザフスタン、キルギスタン(キルギス)、ウズベキスタン、トルクメニスタン、トルコの各国の展示ブースが並んでいる(タジキスタンはテュルク系ではなく、インド・ヨーロッパ語族に属する)。そして、その中に、“東トルキスタン”という展示ブースもあって、そこでは、ウイグル民族の文化・歴史・衣装などに関する展示物が紹介されている。“トルキスタン”とは、「テュルク系民族の国」という意味だが、国際的に認められているわけではなく、おそらく分離独立するまでの“仮称”だと思われる。でも中央アジアでは、これが“新疆ウィグル自治区”をさす一般的な地名として使われている。
大学内で、「ナヴルーズ(春のまつり)」のイベントが行われたとき、テュルク系各国の民族衣装をまとった男女の学生たちが、それぞれの民族の踊りを披露していた。そのとき、“東トルキスタン”のグループもあって、アナウンスでも“東トルキスタン”と紹介していた。
YouTubeには、街頭インタビューで「好きな国」と「嫌いな国」をたずねる動画が、たまに掲載される。そんな中で、大学キャンパスらしいところで、留学生と思われる若者を相手にインタビューしている動画では、「好き嫌いの理由」と「出身国はどこか」までふくめた質問に対して、回答者がみんなまじめに考えていて、回答内容もとても興味深いものだった。インタビュアーがアメリカ人だったときは、相手が「アメリカが嫌いな理由」を答えるたびに、苦笑しながら「ごもっとも」のような対応をしていたのが、おかしかった。
それらの回答を総合すると、留学生たちの「嫌いな国」の傾向は、順位はともかく、『ワールド・ポピュレーション・レビュー(WPR)』での結果「中国、アメリカ、ロシア」とだいたい同じになった。また、中国を「嫌いな国」として指名した人は、欧米だけでなく、アフリカ・アジア出身者にも多かった。
中国を嫌う理由としては、『ニューズウィーク誌』が指摘したものとだいたい共通するが、サハラ以南のアフリカや南アジア出身者からは、中国による「債務の罠(debt trap)」問題をあげる人が多かった。
【債務の罠…中国から過剰融資を受けた開発途上国が、債務を返済できなくなること。日本の円借款の金利(約1%)に比べ、中国の債務金利(約4%)が高いことが、その原因のひとつとされる。(実例)鉄道建設で中国から融資を受けたケニヤが、毎年多額の債務返済に苦しんでいる。中国資本で港を建設したスリランカは、債務返済ができず港の運営権を中国に渡した。】
また、中国への留学経験があるというアフリカ人は、中国に批判的なことを言ったせいで、周囲の中国人たちから猛烈な抗議を受けたという。そのとき、“アフリカ人に対する人種差別的なことば”を使って侮辱(ぶじょく)された、と語っていた。中国国内に住むアフリカ人留学生の中には、中国の制度や生活様式に不適応を起こして不登校になる例が多くあり、特定の市街地にたむろするなど社会問題化しているらしい。それに関するドキュメンタリ動画が YouTubeに掲載されている。
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