「じゃ、これからは自分のことを歌い続けるの?」

 

 

ヒロシがジョンを見つめて訊く。

 

「そうだね。自分のことだったり、ま、たまには息子のことだったりね。」

 

 

「息子? そうか、何歳でしたっけ?」

 

「ははは。忘れたね、そんなこと。誰? 息子なんて俺にはいないぜ。」

 

おどけたように、ジョンは四方を見回した。

 

「ジョン!」

 

ポールが笑顔で突っ込む。

 

息子が描く絵って結構面白いんだ。歌にできる題材が一杯ある。あとはそうだな、ま、新聞読んだり、骨とう品屋まわったりして、ネタでも探そうか。」

 

 

ポールが続ける。

 

「僕らは、こんどのアメリカ公演で一区切りつけるんだ。そしてしばらくゆっくりした後、いよいよ本腰を入れて歌を作り始めるのさ。

 

本腰を入れて歌を作る。

 

今まで以上に真剣になったら、いったい彼らはどんな曲を作り出すのか。

 

俺は、少し怖いような気がした。