この日の巨人の相手は中日ドラゴンズ。

 

まだ6月ではあったが、この時点で首位巨人は2位である中日に既に6ゲーム差をつけ、早くも独走態勢に入りつつあった。

 

前年昭和40年に、2年ぶりの日本一に返り咲いた巨人は、監督川上「カーテン」哲治のもと、まさに黄金期に突入したところであった。

 

長嶋、王、金田、柴田、森、土井、そして堀内。

 

 

錚々たるメンバーが揃っていた。

 

時代はまさに、プロ野球の季節、真っ只中だった。

 

ゲーム差があるとはいえ、首位攻防戦だ。

 

プロ野球史上、最強の王者になりつつあるチーム相手だが、同じ新聞社系として、巨人だけには負けられない。

 

中日には今も昔もそんな意地がある。

 

東京に対する名古屋の負けん気と言ってもよい。

 

この日のゲームでは試合開始直後から、そんな中日の執念が王者に対し激しく燃え上がる展開となった。 

 

「エビフライなら大丈夫、か。相変わらず長嶋さんは何考えてるのかわからねえよ。

 

堀内はそうつぶやきながら、マウンド上空のまぶしい太陽をにらみつけた。