「ドアーズ?」

 

「そう。ええと、LAか。アメリカの連中のようだよ。」

 

「へえ。ポール、ドアーズだって。」

 

ポールもそんな名前のグループは知らないようだ。

 

「これは連中が自費で作成してるレコードだ。まだ正式デビューはしとらんのじゃないか。ポールも知らないわけだよ。」

 

ポールはおやじに近づき、興味深そうにそのレコードジャケットを見つめた。

 

グループのメンバー四人が、暗い表情でこっちを見つめていた。

 

 

「おもしろいよ、彼らの曲。妙な歌詞とオルガン。それにこのボーカルスタイル。どことなくプレスリーみたいだよね。」

 

ポールは興味深そうにジャケットを眺めながら言う。

 

「よし、このレコード、買おう。」

 

「ポール、余計な荷物は増やしたくないんだけどね。」

 

「じゃあ、翔、あとからロンドンに送ってよ。住所教えるからさ。」

 

「本気かい?」

 

「ロンドンでもこのレコード手に入るかわからないしね。民謡と同じでさ。」