4人はもう若者とはいえないのかもしれない。
いつのまにか20代が終わっていた。口にするのが恥ずかしく、陳腐な言葉と批判されようとも、それは「青春」としか呼びようがない日々であった。まぶしい日々が過ぎ去ろうとしているのに気づかぬかのように、しかし4人は生き抜いている。
それぞれの人生を、もがきながら、懸命に。
それはちょっとした神様のいたずらであったのかもしれない。
そんな時間、ふだんはテレビなど見る暇もないほど忙しい4人だったが、その日はたまたまブラウン管を眺めていた。それぞれが別の場所で。
画面ではフジテレビ系奥様向けワイドショー「3時のあなた」がエンディングを迎えようとしていた。時刻は午後4時に近い。いつもなら穏やかな表情で視聴者に別れを告げる司会、森光子が、しかし、その日はなぜかこわばった表情をしてカメラを見つめていた。
「変だな」
「おや」
「あれ?」
「どうしたのかしら」
4人は画面を支配する不可思議な空気にそう思う。そして森光子はそんな4人にだけ報告するかのように、こう告げた。
「ただいまショッキングなニュースが飛び込んできました。元ビートルズのジョンレノンさんが先ほど、ニューヨークで射殺されたそうです。繰り返します。元ビートルズのジョンレノンさんが、ニューヨークで射殺されました・・・」