小学校が始まって、初めはクラス全体が、先生からの御達しにより文具を無地で揃えていたはずが、1ヶ月もすると、キャラクター物を1人2人と持って来るようになった。

長男は知ってしまったのだ。この世にイトー○ーカドーなる夢のような場所があり、キラキラ輝く宝のような文具が山のように売っている事を。
長男の心はいわゆるバトエンに鷲掴みにされてしまった。
カラフルでメタリックなボディ、力強い風貌のキャラクターが細長いスペースに華麗に舞っている。ほしい。あのかっこいい鉛筆!しかし、ママは買ってくれない。イトー○ーカドーもどこにあるのかわからない。と、長男が思ったかどうかはわからないが、そんな中、事件は起きた。

ある晩9時前に電話が鳴った。担任の先生からだった。
クラスの友達の鉛筆がなくなってしまった。長男くんの荷物に紛れていないか、確認してほしいという事だった。
え?いくらなんでも盗むかなぁと半信半疑の私に、先生は実は、、、と話を続けた。
今日、その鉛筆のうちの一本を、休み時間に貸してくれと長男が借りて、授業が始まってもなかなか返さないというトラブルがあったこと。
数日前、授業中に立ち歩くうちに、教室の後ろのロッカー前にいて、友達のランドセルからキャラクターもののポケベルを外して、自分のポケットに入れるのを先生が目撃し、返させたこと。
長男の立ち歩きはおさまらず、教室から出て行くのだけはダメと言い聞かせ、教室内ならば目をつぶっていること。

なんじゃそりゃ~!
先生もお困りですよね。
すみません。すぐ見てみますとばかりに長男のランドセルに直行。
ながひらべったい黒革の蓋を開けてみると、そこには私の知らないキラキラしたバトエン5本、光る紙のケースに収まった消しゴム、そしてポケ○ンのポケベルが!

ちょーなーん‼‼
寝入りばなを襲われて、ふにゃふにゃの長男をベッドから引きずり出す。フローリングに正座で向き合う。

これ、何?

はっと息をのむ長男。目が覚めたらしい。

これ、誰の?

Mの…。

鉛筆はM君のものらしい。

これは?
消しゴムを指差す。

わかんない。俺の机にあったから。

ふーん。
ポケベルを出して
これは?

わかんないよ~‼
なんか、持ってたぁぁぁ~!
わ~~ん‼

わかんないの?
ママ、知ってるよ。
長男は、いいな、素敵だなって思ったんじゃない?

……。

俺もほしいなって思って、持ってきちゃったんだ。

違う。思っただけ。

じゃあ、なんでここにあるの?

……。

あのさ、いいな、と思っても、友達のものは、長男のものじゃないの。返さなくちゃ。

…うん。

長男の机の上に自分のじゃないものがあった時は、先生に落し物ですって届けるんだよ。

ああ…。

あと、人のランドセルから勝手にポケベルを外して持って来るのは、どろぼうだよ。
ママ、どろぼうと一緒には暮らせないから、今から出て行ってくれる?
市役所に行って、保護してくださいっていえばいいから。

‼ や、いや…。

長男、いやかもしれないけど、ママだっていやなの。
せっかく仲良く暮らしてたのに、どろぼうだったなんてほんとにがっかり。
しかも、先生に注意されて、いけない事だと知ってたのに盗んじゃったんだもんね。
一人で市役所に行くか、ママと警察に行くか、どっちにする?

長男、泣き崩れ、ほぼパニック状態。
私は、頭に血が登り、一言一句までは覚えてないが、かなり容赦なく追い込んでしまった。

あーあ、である。
泣き叫ぶ長男を置いて部屋を出て、先生あてに連絡帳に手紙を書いた。情けなくて、涙が出る。どろぼうした長男も、追い詰めるような恫喝になってしまう自分も、情けなくて、寂しい夜だった。

結局、封筒に鉛筆消ゴムと、ポケベルを入れて、連絡帳を添えて先生に謝るように言い含めて送り出した。

先生からは丁寧な返事をいただいた。
お友達に先生の前で謝り、鉛筆やポケベルを返す事ができ、ホッとした。

それきり、長男が人のモノ盗んだことはない。と、思う。
何度か間違いで持ち帰ることはあっても、どろぼう?と突っ込むと、ちがう、ちがう、とあわてて返すようになった。



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