1【 必ず公正証書によらなければならない】

 

任意後見契約は、本人が契約締結能力のあるうちに、自ら選んだ受任者と「公正証書」にて契約をしておく必要があります。

(任意後見に関する法律第3条:以下任意後見法といいます)

また、契約内容に無い事項は行えないので、注意が必要です。

法定後見人との大きな違いは、本人行為の「取消権」が無いことです。

 

2【任意後見申し立て手続き】

 

任意後見は、本人、受任者または、本人、4親等以内の親族が申立てをして、裁判所によって任意後見監督人(以下監督人と言います)が選任されなければ開始されません。さらに監督人の選任は家裁の権限で行われ、審判後に申立人が異議を唱えることはできません。

 

3【監督人の報酬について】

 

任意後見監督人には必ず報酬が発生し、本人負担となります。報酬額は裁判所が決定します。すなわち、本人は、任意後見人と監督人双方への報酬を負担することになります。(※任意後見人については無報酬での契約も可能ですが、親族以外では有償となるのが一般的です)

 

4【裁判所への報告は監督人が行う】

 

任意後見事務報告書は、任意後見人が、直接裁判所に行うものではなく、監督人に提出することが義務づけられています。  その後「監督事務報告」によって「監督人が裁判所へ報告をあげる」仕組みになっています。また、同報告書は、任意後見人や親族にはほとんど開示されることはありません。そのため、報告内容は監督人の主観に依拠することとなります。

 

5【監督人の広範な裁量権】

 

前述4 のとおり、任意後見においては、監督人の裁量権が強く、事実上監督人の意向に従うよう、要請されます。また、「監督人の意思=被後見人の意思」とされる傾向があり、任意後見人が託されていた本人の意向が、反映されないことも往々にしてあります。

さらに、任意後見人が親族の場合、監督人から、高圧的な態度や指示の強要等により、人権侵害を受けることがままあります。そのため、監督人との直接連絡を避けて、自己負担で弁護士を雇う親族任意後見人もいるほどです。

任意後見を含む後見制度においては、「法の下の平等(日本国憲法14条)」が、実行されていないのです。

 

6【法定後見開始を誘引する危険】

 

さらに、監督人には法定後見開始の申立権があり(任意後見法第10条2項)任意後見を開始することで、期せずして「法定後見」を誘引してしまう場合があります。

 

例1)任意後見人が就任後、監督人から「法定後見」への変更を要請される(→この場合、監督人がスライドして法定後見人になる可能性が高い)

 

例2)任意後見人が就任後、監督人と意見対立した場合に、本人の利益のために特に必要があるとして法定後見を申し立てられる(→監督人或いは他の弁護士等が法定後見人になる)

 

7【苦情相談窓口が無い】

 

後見類型と同様、監督人の強権的な業務遂行に異議を唱えようにも、有効な苦情窓口はありません。

 

 

8【一度開始したら後見制度から抜けられない】

 

 任意後見は、法定後見を回避する事前対策にはなりますが、一旦発行すれば、法定後見同様、後見制度から抜けることはできず、本人及び任意後見人は事実上、監督人の支配下に置かれ続けます。

 

9【相続人以外の第三者による任意後見受任の問題】

 

 上記1~8では、主に親族が任意後見人を受任した場合の問題点をあげました。

最後に、近年、第三者機関による任意後見推進の動きがありますが、相続人以外の第三者(知人・士業・その他事業体)との任意後見契約については慎重にして頂きたいとお伝えします。その理由として

 

⑴   まず、前述1-8の通り、任意後見業務の遂行においては、監督人の意向に拘束され、最終的には監督人の意思=被後見人の意思となります。そのため、実際に本人の意思を実現できるかどうかは、「監督人次第」です。

 

⑵   さらに、第三者と任意後見契約をすることは、「他人に自身の意思・財産を支配される」という点で、法定後見と同様の問題を抱えることになるからです。

 

この点につき、任意後見事業を推進する事業体や士業は、告知していないので、注意が必要です。