「検察当局が再び不起訴とすると判断されたことは、私の関与や疑惑はないという事実を明確にしていただいたもの」。資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部に2度目の不起訴処分とされた小沢一郎民主党幹事長は、公表したコメントで潔白を強調した。同党内では「当然」との受け止めと今夏参院選への不安が交差した。【曽田拓、前谷宏】

 ◇民主党内、選挙に懸念も

 21日夕、国会内の幹事長室。参院選に立候補予定の喜納昌吉参院議員が「不起訴だそうですよ」と話しかけると、小沢氏は「え、そんなの今日出たの」と淡々とした様子だったという。喜納氏は「不起訴は当然。我々も逆風を想定して動いているから、今さら選挙に影響もない」と語る。小沢氏に近い議員でつくる「一新会」の石関貴史衆院議員も「これで犯罪に問う証拠がないことが明らかになった」と述べた。

 だが、小沢氏に批判的な村越祐民衆院議員は「国民の多くはグレーと思っており、低い支持率にはね返っている」。生方幸夫副幹事長は「このままでは参院選で恐ろしい結果になる」と懸念した。

 国会で攻勢に出たい野党・自民党の谷垣禎一総裁は会見で「集中審議と参考人招致、証人喚問を引き続き求める」と強調した。

 ◇「起訴相当」11人、7月末全員交代…検察審査員

 検察審査会は一般市民から選ばれた11人で構成され、その任期は半年で、約半数が3カ月ごとに入れ替わる。4月27日に全員一致で小沢氏を起訴相当とした東京第5検察審査会は5月1日で6人が交代し、5人が残った。

 同審査会は第2段階の審査に入るが、残る5人の任期が切れる7月末までに議決すれば5人は判断を維持する可能性が高く、その場合は新任6人のうち3人の同調で小沢氏は強制起訴される。議決が8月以降なら前回の議決に加わった審査員はいなくなるため、議決の時期も注目される。

 JR福知山線脱線事故と明石歩道橋事故は審査員全員の交代後に起訴議決を出した。小沢氏の弁護側は「新たな審査員が判断すべきだ」とする上申書を審査会に提出することを検討している。【三木幸治】

 ◇解説…「市民感覚」「法解釈」溝深く

 検察審査会の起訴相当議決を受けた東京地検特捜部の再捜査は、政治資金規正法を巡って審査会が示した「市民感覚」と、法律のプロである検察当局の「法解釈」の溝の深さを改めて示した。

 「再捜査しても、小沢氏が指示したという証拠でも出ない限り起訴はできない」。検察幹部はそう語った。規正法は主に会計責任者や事務担当者を処罰対象としている。このため、小沢氏を起訴するには、会計責任者らを通じて罪を犯そうという本人の意思(犯意)を明確に立証する必要があるという考えだ。

 元々、特捜部は土地購入のために小沢氏が提供した4億円にゼネコンからの裏金が含まれているとみて捜査した。「裏金を隠す」という小沢氏の動機を裏付けることを狙ったが原資の解明は進まず、犯意の立証は困難になっていた。

 これに対し、審査会は原資が裏金かどうかには触れず「政治資金の流れを国民に公開し民主政治の発展に寄与する」という規正法の趣旨に言及。小沢氏に収支報告書の概要を「報告した」という元秘書で衆院議員の石川知裕被告の供述などを基に共謀成立が推認されると判断し、検察側に共謀認定のハードルを下げるよう求めた。

 検察内には、石川議員の供述を重視して起訴に前向きな意見も一部にあったが、幹部は「法律の原則を曲げることはできない」と語った。「市民」と「プロ」の溝を埋めるために、政治家本人の責任を問いやすい法改正が必要かどうか、議論が求められる。【大場弘行、鈴木一生】

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