Life in the Lone Star State -59ページ目

アメリカの弁護過誤訴訟

Paul Hastings というアメリカの大手の法律事務所の著名なファイナンスロイヤーが、依頼者に対して不適切なアドバイスをしたために、依頼者が巨額の損失を被ったとして55million(約50億)の損害賠償請求訴訟を提起したようです。詳細はこちらから。

依頼者はCerberus Capital Management L.P.というアメリカの投資会社で、この依頼者がBay Harbour ManagementというPrivate Equity Firmに対して125million の資金の融資を行った際に、第一順位の担保権を設定したはずが、これに優先する担保権設定の合意が債務者と第三者の間で別途なされていたために、依頼者の貸付債権が事実上無担保債権になってしまい、結果的に債務者が倒産して融資を回収できなかったという事案です。

依頼者は、そのような別途の合意があったことは知らなかった、弁護士からその点に関するアドバイスは一切なかったということを根拠に弁護過誤を主張していますが、他方で、弁護士側は(代理人にDavis Polkの弁護士がついているそうですが)、ビジネス判断の誤りの責任を弁護士に転嫁しようとしていると反論しているそうです。

依頼者側の弁護士としては、仮に法務DDをやった上でこの事実を見つけていたとして、それを知りながらこの点のアドバイスをし損ねていたとしたらさすがに問題でしょうが、DDの過程でその事実を見落としていたとすれば、弁護士側の責任はケースバイケースではないかと思います。いずれにしても、弁護士にしてみればこれで賠償義務が肯定されるとしたら恐ろしい話です。DDレポートで幾らDisclaimerを書いておいたところで、重要な事実をDDの過程で見落としていたとすればただでは済まない可能性もあるのではないかと思います。

また、通常この手の取引では、貸付人側は、借入人側の弁護士からリーガルオピニオンを取得しているはずなので、仮に対抗要件の順位についての意見まで取っているとしたら、借入人側の弁護士の責任も問題になる可能性はあるんでしょう。対抗要件の順位についての意見は、このように事実問題が多分に関係してくるので、意見を言うことについては慎重でなければならないことを改めて感じさせられます。

ファイナンス案件を扱う弁護士に取っては、その案件における融資額の多寡は法的な論点にはならないので普段はあまり気にならないところですが、いざ賠償という話になると途端にその額が問題になってくるので、改めて大きな額を扱っているということのリスクを感じます。到底一弁護士が払える金額ではないですからね。