アメリカのCEO
現在アメリカのビジネス界の大きな話題の1つは、バンカメの次期CEOが誰になるのかという話で、WSJでも連日のように記事が上がっています。
Know Your BofA CEO Candidate: Bill Winters
この記事は、先月末にJP Morgan & ChaseのCo-headであったBill Winters氏がJPMを辞めることになったことは、providential (神意による)timingであり、彼こそが次期バンカメのCEO候補の1人であると述べ、彼のプロフィールを紹介しています。
日本だとメガバンクの頭取が誰になるかという話を決まる前からそんなにニュースにすることはありませんが、こちらではかなり関心を集めているようです。イメージが沸きやすい例でいうと(また実質的に考えても)、プロ野球の球団の次期監督が誰になるかという話をしているのに近い感じではないかと思います。
まず、アメリカ企業のCEOは社内から選ばれる場合もありますが、様々な企業の経営を経験して実績もあげているプロの経営者を外部から招聘することが多いです。他方、プロ野球の監督も二軍監督やヘッドコーチが昇格して監督になるケースもありますが、大体はかつての監督経験者で今は解説者等をしている人や、他球団の監督を辞めてすぐの人が今度は別球団の監督になるということが多いと思います。
また、企業との契約内容にもよりますが、業績連動型の報酬体系を採用している場合が多く、業績が悪いと企業からクビにされることもあります。監督もシーズン途中で解任なんてケースもよくありますね。
さらに、優秀な経営者はどの企業からも引っ張りだこで、その結果ある程度の報酬額を提示しないと希望する経営者に来てもらえないということで、報酬額も内部からの登用者よりは高くなる傾向があります。
日本では、(倒産しかけてる会社は別ですが)社外からきた人がいきなりCEOに就任するという例はまだ少ないと思います。日本の企業のあり方として、会社の実情を知らない人がいきなり社長になるというのは、社員にとってはなかなか受け容れがたいものがあるでしょうし、どんな会社の経営でもできるという人材もアメリカほどにはいないように思います。
アメリカの企業は、迅速な意思決定をするために業務執行権限をCEOに集中させて、業務執行の効率化を図っています。その結果、日本の代表取締役に比べて、CEOというのは非常に強い権限を有することになっています。その代わりに、社外取締役の人数を増やし、取締役会の業務監査機能を高めているという形態が多いようです。
日本でも委員会設置会社というアメリカ型のコーポレートガバナンスを採用して、執行役に権限を集中させることも可能ですので、そのメリットが大きければ、アメリカ型の会社形態に移行していく企業が増えるはずですが、実際のところ、大手企業で委員会設置会社に移行している企業はそれほど多くありません。(これによれば平成21年10月8日現在委員会設置会社は110社しかありません。ただし、小規模の会社ではまだ他にも多数存在するかもしれません。)
これは、日本では、有能でその企業に合った適切な社外取締役を見つけるのが難しいことや、社外取締役に対して権限を与えすぎることに対する懸念などもあって、未だ委員会設置会社に移行するだけの土壌が十分に出来上がっていないということなのかもしれません。
さらに、従来の形態の株式会社と委員会設置会社である株式会社における違いの一つに、取締役や執行役の報酬の決定プロセスが挙げられます。従来型の株式会社では、全取締役の報酬総額について株主総会の承認を受け、その分配に関しては取締役会に一任していました。他方、委員会設置会社の場合には、その過半数を社外取締役から構成される報酬委員会によって、個別に各執行役及び取締役等の報酬額が定められることになります。(株主総会の決議は不要になります。)
この報酬委員会による報酬額の決定という制度は、報酬額の決定プロセスから株主の関与を排除し、客観的に妥当な水準の報酬額を専門家により決定することを目指しているわけで、いわゆる「お手盛り」の危険というのは過半数の社外取締役という要件でカバーするということだと思います。確かに、経営の素人である株主が取締役や執行役の妥当な報酬水準を判断するというのは本来難しい話であり、そうすると株主としては報酬は安ければ安いほどよいという発想になってしまい、妥当な報酬水準が実現されないという事態になってしまうことは考えられます。他方で、報酬委員会に一任した場合でも、お手盛りの危険が完全に排除されているわけではなく、社外取締役どうしが持ちつ持たれつの関係でマーケットの報酬水準を少しずつ上げていくような事態も起こりえないわけではない気もします。
実際、アメリカの企業でも報酬委員会方式で役員の報酬が決められることが多く、その額は1年で数十億とか百億を超えるような人もいたりして、これはあまりに高すぎるということで、現在報酬水準を下げるべきという議論がされています。(※)
日本は委員会設置会社になってもアメリカみたいに報酬が急激に高騰することはないと思いますし、外部からCEOを連れてくるという手法も根付くにはまだまだ時間がかかるのではないかという気がします。日本型のガバナンスとアメリカ型のガバナンス、どちらが日本の企業にとって使い勝手がいいのかは、いずれマーケットで答えがでるということでしょう。
(※)アメリカの役員報酬制度に関しては、井川真由美「役員報酬に関する米国の法制度と最近の動向」自由と正義2008年6月号を参照。
Know Your BofA CEO Candidate: Bill Winters
この記事は、先月末にJP Morgan & ChaseのCo-headであったBill Winters氏がJPMを辞めることになったことは、providential (神意による)timingであり、彼こそが次期バンカメのCEO候補の1人であると述べ、彼のプロフィールを紹介しています。
日本だとメガバンクの頭取が誰になるかという話を決まる前からそんなにニュースにすることはありませんが、こちらではかなり関心を集めているようです。イメージが沸きやすい例でいうと(また実質的に考えても)、プロ野球の球団の次期監督が誰になるかという話をしているのに近い感じではないかと思います。
まず、アメリカ企業のCEOは社内から選ばれる場合もありますが、様々な企業の経営を経験して実績もあげているプロの経営者を外部から招聘することが多いです。他方、プロ野球の監督も二軍監督やヘッドコーチが昇格して監督になるケースもありますが、大体はかつての監督経験者で今は解説者等をしている人や、他球団の監督を辞めてすぐの人が今度は別球団の監督になるということが多いと思います。
また、企業との契約内容にもよりますが、業績連動型の報酬体系を採用している場合が多く、業績が悪いと企業からクビにされることもあります。監督もシーズン途中で解任なんてケースもよくありますね。
さらに、優秀な経営者はどの企業からも引っ張りだこで、その結果ある程度の報酬額を提示しないと希望する経営者に来てもらえないということで、報酬額も内部からの登用者よりは高くなる傾向があります。
日本では、(倒産しかけてる会社は別ですが)社外からきた人がいきなりCEOに就任するという例はまだ少ないと思います。日本の企業のあり方として、会社の実情を知らない人がいきなり社長になるというのは、社員にとってはなかなか受け容れがたいものがあるでしょうし、どんな会社の経営でもできるという人材もアメリカほどにはいないように思います。
アメリカの企業は、迅速な意思決定をするために業務執行権限をCEOに集中させて、業務執行の効率化を図っています。その結果、日本の代表取締役に比べて、CEOというのは非常に強い権限を有することになっています。その代わりに、社外取締役の人数を増やし、取締役会の業務監査機能を高めているという形態が多いようです。
日本でも委員会設置会社というアメリカ型のコーポレートガバナンスを採用して、執行役に権限を集中させることも可能ですので、そのメリットが大きければ、アメリカ型の会社形態に移行していく企業が増えるはずですが、実際のところ、大手企業で委員会設置会社に移行している企業はそれほど多くありません。(これによれば平成21年10月8日現在委員会設置会社は110社しかありません。ただし、小規模の会社ではまだ他にも多数存在するかもしれません。)
これは、日本では、有能でその企業に合った適切な社外取締役を見つけるのが難しいことや、社外取締役に対して権限を与えすぎることに対する懸念などもあって、未だ委員会設置会社に移行するだけの土壌が十分に出来上がっていないということなのかもしれません。
さらに、従来の形態の株式会社と委員会設置会社である株式会社における違いの一つに、取締役や執行役の報酬の決定プロセスが挙げられます。従来型の株式会社では、全取締役の報酬総額について株主総会の承認を受け、その分配に関しては取締役会に一任していました。他方、委員会設置会社の場合には、その過半数を社外取締役から構成される報酬委員会によって、個別に各執行役及び取締役等の報酬額が定められることになります。(株主総会の決議は不要になります。)
この報酬委員会による報酬額の決定という制度は、報酬額の決定プロセスから株主の関与を排除し、客観的に妥当な水準の報酬額を専門家により決定することを目指しているわけで、いわゆる「お手盛り」の危険というのは過半数の社外取締役という要件でカバーするということだと思います。確かに、経営の素人である株主が取締役や執行役の妥当な報酬水準を判断するというのは本来難しい話であり、そうすると株主としては報酬は安ければ安いほどよいという発想になってしまい、妥当な報酬水準が実現されないという事態になってしまうことは考えられます。他方で、報酬委員会に一任した場合でも、お手盛りの危険が完全に排除されているわけではなく、社外取締役どうしが持ちつ持たれつの関係でマーケットの報酬水準を少しずつ上げていくような事態も起こりえないわけではない気もします。
実際、アメリカの企業でも報酬委員会方式で役員の報酬が決められることが多く、その額は1年で数十億とか百億を超えるような人もいたりして、これはあまりに高すぎるということで、現在報酬水準を下げるべきという議論がされています。(※)
日本は委員会設置会社になってもアメリカみたいに報酬が急激に高騰することはないと思いますし、外部からCEOを連れてくるという手法も根付くにはまだまだ時間がかかるのではないかという気がします。日本型のガバナンスとアメリカ型のガバナンス、どちらが日本の企業にとって使い勝手がいいのかは、いずれマーケットで答えがでるということでしょう。
(※)アメリカの役員報酬制度に関しては、井川真由美「役員報酬に関する米国の法制度と最近の動向」自由と正義2008年6月号を参照。