シンジケートローン契約(Vol.9) | Life in the Lone Star State

シンジケートローン契約(Vol.9)

第9回はシンジケートローン契約に関連して発生する手数料(Fees)についてです。

1. Commitment Fee/ Facility Fee

リボルビングクレジットファシリティ型のローン契約では、一定の契約期間中、一定の融資枠の範囲内で前提条件を満たす限り借入人はいつでも融資の実行を受ける権利を有します。貸付人の立場から見ると、これはその一定の期間中「貸す義務」を負っているということになります。この貸す義務を負うことの対価として貸付人が借入人から受け取るのがコミットメントフィーやファシリティフィーと呼ばれる手数料です。

この2つのタイプのフィーは、未使用貸付額をベースに算定するか(コミットメントフィー)、貸付極度額をベースに算定するか(ファシリティフィー)の違いだけです。具体的には、コミットメントフィーは(未使用貸付極度額)×(コミットメントフィー料率)×(契約期間)で、ファシリティフィーは(貸付極度額)×(ファシリティフィー料率)×(契約期間)で算出します。

ここで、「貸す義務」の対価であるという考え方を厳密に適用すると、例えば祝祭日には事実上融資の実行がなされないことや、借入申込書の提出から貸付の実行まで3~5営業日要するため融資可能期間の最初の数日間は事実上貸付を受けることができないこと等から、これらの日数を除いた実際に融資を受けることができる日数をベースに算出するべきではないかという考え方もありえそうですが、基本的には契約期間を通して(祝祭日を除外せず)フィーを取っているケースがほとんどです。これは日米共通です。

融資が事実上受けられない日についてもフィーを取っていることの対価性、正当性をどこに求めるかというと、貸す側の資金調達のためのコストだという説明をすることになるのでしょう。つまり、貸す側としては、一定の契約期間中は、借入人からリクエストがあった場合にはいつでも3~5営業日以内に融資を実行する義務を負うわけで、言い換えればいつでも融資枠の範囲内の金額の調達ができるような体制を整えておかなければならないということになります。そしてその調達に要するコストは祝祭日だからといってゼロになるわけではなく、契約期間中継続してその状態にしているわけですから、契約期間を通して一定の手数料を請求しますということになるのだと思います。(実際にどんな調達コストがかかるっているのかそのあたりの詳しいメカニズムは知りませんが。)

こういった対価性の議論はあまりされていないように思いますが、日本法上は、金融機関が融資をする際には、独占禁止法上の優越的地位の濫用と解釈されるリスクがないかという点を常に念頭においておく必要があります。この観点からは、対価性が怪しい手数料名目の支払いを不当に請求することは独禁法違反を問われるリスクがありますので、注意する必要があるということになると思います。(利息制限法、出資法上の問題については、ちょっと古くなりましたが金融法委員会の見解を参照。)

日本では、実際のケースではコミットメントフィー形式の方が多い印象です。コミットメントフィー形式だと、融資枠のうち、実際に貸付を実行している分については利息を、未実行の分についてはコミットメントフィーを徴求できることになり、金融機関としては借入人が融資枠を借りても借りなくても一定の利息及びフィー収入が得られることになり、収益の予想がしやすいというメリットがあるのかもしれません。

2. Utilization Fee

これはあまり日本では使われていないと思いますが、実際に融資された金額をベースに算出されるフィーです。コミットメントフィーと反対の考え方で、融資枠のうち実際の貸付実行金額に一定の料率を乗じて算出されます。これは実質的には利息に近い性質を有するので、日本法下では特に利息制限法、出資法上の問題に特にケアする必要があると思われます。(ちなみに、コミットメントフィーやファシリティフィーについても利息制限法、出資法上のみなし利息の問題はあり、実務上保守的な立場では利息制限法の上限を超えないようにフィーを取っているケースが多いと思います。他方で、これらはそもそもみなし利息にあたらないという上記金融法委員会の見解もあります。)

3. Swingline Fronting Fee

スウィングラインローンを実行する際に徴求される手数料です。(スウィングラインローンについてはこちらを参照。)こちらのスウィングラインローンは通常一金融機関が実行し、その後、他のシンジケートレンダーがプロラタで引き受けるという方式がスタンダードのようですが、いずれかの参加行が引受を拒絶した場合、又は引き受ける資力がない場合にスウィングラインレンダーは想定外のクレジットリスクを負うことになりますので、そのリスクを負う可能性があることの対価としてのフィーという位置づけのようです。この点日本とは若干スィングラインの仕組みが違うので、日本ではこのようなフィーはあまり見ないように思います。

4. その他

その他、アレンジメントフィー、エージェントフィー、アップフロントフィーなどがシンジケートローンに関連して徴求されるフィーとして挙げられますが、これらは通常シンジケート契約の外で別途フィーレターを結んでそれに基づき支払われることが多いですので、ここでは割愛します。なお、これらのフィーについてもみなし利息の問題はありますが、これについてはやはり金融法委員会の見解が参考になります。(ややアグレッシブな見解のようにも思いますが、実務的な観点からは是非採用されてほしい解釈でもあります。)