シンジケートローン契約(Vol.3)
第3回はLetter of Creditについてです。
Letter of Credit(L/C)というのは信用状と訳されますが、主に貿易取引における決済手段として使用されます。
貿易取引の場合、売主は通常商品を輸出した時点で代金の支払いを受けたい(又は輸出する時点で代金の支払いが確実になされる保証が欲しい)と考えます。特に買主がどんな会社なのか十分な情報がないような場合など、商品を送ったが売掛債権を回収できないという事態になっては困ると考えるからです。
そこで、売主は買主に対してL/Cの発行を要求し、買主は自分の取引銀行に依頼してL/CのIssuerとなってもらいます。売主は、商品を輸出した時点で、Carrierから商品を受け取った旨の証明(Bill of Lading)等を受領し、その他必要書類と合わせてIssuerに提示することにより、L/Cに基づいた支払いを受けることができます。(実際はIssuerと買主の取引銀行は異なることが多いので、間にもう1つ別の銀行が介在するケースが通常かと思います。)実質的には、買主の支払いを担保するための銀行による保証という意味合いがあります。
シンジケートローン契約の中で、L/Cの引受という形での与信取引を行う場合、通常はL/CのIssuerはシンジケートレンダーのなかの1行が単独で引き受けますので、他の金融機関はIssuerからその参加割合に応じてL/Cのexposure(債務残高)を引き受ける(いわゆるリスクパーティシペーション)形を取ることで、形式的なシンジケーションを実現します。ここで、「形式的」という表現を使っているのは、パーティシペーション形式を取っている場合、このL/Cに関しては、Issuer以外の金融機関は借入人との間では直接の権利義務関係は発生しないからです。したがって、貸付人の意思結集手続におけるvoting rights についても、この引受額についてはカウントされないのが通常のようです。
日本の実務でも、保証のシンジケーションというのはありますが(注)、融資のシンジケーションとの融合型はまだあまり普及していないように思います。ただ、いずれも与信取引と考えれば、合算で融資枠を決めるという考え方は合理的で、需要があれば今後もっと普及していい形態のように思います。
ちなみに、保証のシンジケーションを組む場合、融資型のシンジケーションとは若干構成が異なり、メインの金融機関が債務者の債務を全額保証し(これを表保証といいます。)、他の金融機関はその裏で債務者が表保証人に対して負う求償債務を自己の負担割合に応じて保証する(いわゆる裏保証)という形式を取ることが通常です。この場合、保証が表と裏で階層構造になるため、融資型のシンジケーションと比べると契約書もやや複雑になります。なぜこんな階層構造にするかというと、債務者としては、債権者に対しては債務者のメインバンクが1行で全額保証をしているという法的構成を取りたいものの、メインバンク1行で保証するには与信枠を超えてしまうというケースがあるからではないかと思われます。あとは、複数の銀行が保証する場合、連帯保証にすると結局は全参加行が全額の債務を保証してしまうことになるし、債務を分割して個別に保証するのでは、債権者の了解が得られにくいという事情もあるのかもしれません。
保証のシンジケーションを作るときにやや面倒なのが、民法上、求償債務には事前求償と事後求償があり、事前求償する場合と事後求償になる場合では、想定される場面が相当違うので、両方の場面を想定しながら条項を作る必要があるという点です。裏保証というコンセプトではなく、表保証人の求償債務をリスクパーティシペーションで引き受けるという構成にすれば、もう少し簡単に作れそうな気がします。
最後に参考に、C/Lの債務をIssuer以外の金融機関が引き受ける場合のサンプル規定をLSTAから引用しておきます。
By the issuance of a Letter of Credit, and without any further action on the part of the Issuing Lender or the Revolving Lenders, the Issuing Lender hereby grants to each Revolving Lender, and each Revolving Lender hereby acquires from the Issuing Lender, a participation in such Letter of Credit equal to such Lender’s Applicable Percentage of the aggregate amount available to be drawn under such Letter of Credit. Each Revolving Lender acknowledges and agrees that its obligation to acquire participations pursuant to this paragraph in respect to Letters of Credit is absolute and unconditional and shall not be affected by any circumstance whatsoever, including any amendment, renewal, or extension of any Letter of Credit, or the occurrence and continuance of a Default or reduction or termination of the Commitments.
次回はコミットメント額の増減についてです。
(注)参考文献として、以下の文献を挙げておきます。
・菱谷浩三「シンジケーションで解く企業財務の悩み 第三回」週刊金融財政事情2763号
・菱谷浩三「シンジケーションで解く企業財務の悩み 第三回」週刊金融財政事情2765号
Letter of Credit(L/C)というのは信用状と訳されますが、主に貿易取引における決済手段として使用されます。
貿易取引の場合、売主は通常商品を輸出した時点で代金の支払いを受けたい(又は輸出する時点で代金の支払いが確実になされる保証が欲しい)と考えます。特に買主がどんな会社なのか十分な情報がないような場合など、商品を送ったが売掛債権を回収できないという事態になっては困ると考えるからです。
そこで、売主は買主に対してL/Cの発行を要求し、買主は自分の取引銀行に依頼してL/CのIssuerとなってもらいます。売主は、商品を輸出した時点で、Carrierから商品を受け取った旨の証明(Bill of Lading)等を受領し、その他必要書類と合わせてIssuerに提示することにより、L/Cに基づいた支払いを受けることができます。(実際はIssuerと買主の取引銀行は異なることが多いので、間にもう1つ別の銀行が介在するケースが通常かと思います。)実質的には、買主の支払いを担保するための銀行による保証という意味合いがあります。
シンジケートローン契約の中で、L/Cの引受という形での与信取引を行う場合、通常はL/CのIssuerはシンジケートレンダーのなかの1行が単独で引き受けますので、他の金融機関はIssuerからその参加割合に応じてL/Cのexposure(債務残高)を引き受ける(いわゆるリスクパーティシペーション)形を取ることで、形式的なシンジケーションを実現します。ここで、「形式的」という表現を使っているのは、パーティシペーション形式を取っている場合、このL/Cに関しては、Issuer以外の金融機関は借入人との間では直接の権利義務関係は発生しないからです。したがって、貸付人の意思結集手続におけるvoting rights についても、この引受額についてはカウントされないのが通常のようです。
日本の実務でも、保証のシンジケーションというのはありますが(注)、融資のシンジケーションとの融合型はまだあまり普及していないように思います。ただ、いずれも与信取引と考えれば、合算で融資枠を決めるという考え方は合理的で、需要があれば今後もっと普及していい形態のように思います。
ちなみに、保証のシンジケーションを組む場合、融資型のシンジケーションとは若干構成が異なり、メインの金融機関が債務者の債務を全額保証し(これを表保証といいます。)、他の金融機関はその裏で債務者が表保証人に対して負う求償債務を自己の負担割合に応じて保証する(いわゆる裏保証)という形式を取ることが通常です。この場合、保証が表と裏で階層構造になるため、融資型のシンジケーションと比べると契約書もやや複雑になります。なぜこんな階層構造にするかというと、債務者としては、債権者に対しては債務者のメインバンクが1行で全額保証をしているという法的構成を取りたいものの、メインバンク1行で保証するには与信枠を超えてしまうというケースがあるからではないかと思われます。あとは、複数の銀行が保証する場合、連帯保証にすると結局は全参加行が全額の債務を保証してしまうことになるし、債務を分割して個別に保証するのでは、債権者の了解が得られにくいという事情もあるのかもしれません。
保証のシンジケーションを作るときにやや面倒なのが、民法上、求償債務には事前求償と事後求償があり、事前求償する場合と事後求償になる場合では、想定される場面が相当違うので、両方の場面を想定しながら条項を作る必要があるという点です。裏保証というコンセプトではなく、表保証人の求償債務をリスクパーティシペーションで引き受けるという構成にすれば、もう少し簡単に作れそうな気がします。
最後に参考に、C/Lの債務をIssuer以外の金融機関が引き受ける場合のサンプル規定をLSTAから引用しておきます。
By the issuance of a Letter of Credit, and without any further action on the part of the Issuing Lender or the Revolving Lenders, the Issuing Lender hereby grants to each Revolving Lender, and each Revolving Lender hereby acquires from the Issuing Lender, a participation in such Letter of Credit equal to such Lender’s Applicable Percentage of the aggregate amount available to be drawn under such Letter of Credit. Each Revolving Lender acknowledges and agrees that its obligation to acquire participations pursuant to this paragraph in respect to Letters of Credit is absolute and unconditional and shall not be affected by any circumstance whatsoever, including any amendment, renewal, or extension of any Letter of Credit, or the occurrence and continuance of a Default or reduction or termination of the Commitments.
次回はコミットメント額の増減についてです。
(注)参考文献として、以下の文献を挙げておきます。
・菱谷浩三「シンジケーションで解く企業財務の悩み 第三回」週刊金融財政事情2763号
・菱谷浩三「シンジケーションで解く企業財務の悩み 第三回」週刊金融財政事情2765号