に引き続き、少し(笑)。
いつもN field golfをご愛読いただき、
誠にありがとうございます。
前回の第7章では、結果(スコア)への執着を手放し、
プロセス(所作)の純粋さこそを
自己評価の基準とする「求道者の美学」
についてお話ししました。
では、純粋な所作を尽くしてボールを放った「直後」、
私たちゴルファーはどうあるべきでしょうか。
今回は、日本の武道を貫く最も美しく、
最も重要な精神である「残心(ざんしん)」から、
ゴルフにおけるフィニッシュの真の意味を解き明かします。
■ 矢を放った後も、射は終わっていない
弓道の公式ルールブック『弓道教本』
が定める基本動作「射法八節」。
その第7節で矢を放ち(離れ)、これで終わりかと思いきや、
最後に第8節として
「残心(ざんしん)」という動作が置かれています。
残心とは、
矢が的へ向かって飛んでいく間、
そして的に当たった後も、
弓を構えた姿勢を崩さず、
静かに的を見据え続ける「余韻の姿勢」です。
弓道において、矢が手から離れた瞬間に「終わった!」と
気を抜いて姿勢を崩すことは、
最も見苦しい行為とされます。
それは単なるポーズではありません。
「自らが尽くした純粋なプロセス(射)を、
最後まで見届けるという誠意」であり、
「放たれた矢と自分自身が、
まだ見えない糸で繋がっている
(一つである)という証明」なのです。
■ すべての武道に共通する「油断なき精神」
実はこの「残心」の精神は、
弓道だけでなく、
剣道、柔道、合気道など、
日本のあらゆる武道に共通する
極めて重要な教えです。
剣道では、
見事な打突を決めた後も
「勝った」と気を抜くことは許されず、
相手の反撃に備えて油断なく構えを保ちます。
柔道においても、
相手を投げ飛ばした瞬間に意識を切ることはなく、
次の動きに対応できる緊張感を残します。
合気道では、
技を掛け終えた後も
氣(エネルギー)の圧力を波のように持続させ、
相手への敬意と共に静かな余韻を保ちます。
これらすべての武道に共通しているのは、
「技が終わった後も、
自らの心と姿勢を律し続ける」という
美学です。
かつて【第5部:世阿弥編】で学んだように、
所作の美しさはそのまま内面の純粋さの現れです。
一打を放ったその瞬間に気を緩め、姿勢を崩すことは、
己が積み上げてきた「道」に対する
敬意を欠くことであり、
東洋の「恥の文化」において
何よりも恥ずべきこととされました。
■ ゴルフにおける「感情の保留」としての残心
これをゴルフのフィニッシュに置き換えてみてください。
多くのアマチュアゴルファーのフィニッシュには、
この「残心」が決定的に欠けています。
ボールがクラブから離れた直後。
まだボールが空を飛んでいる最中だというのに、
結果を早く知りたくて首をねじ曲げ、
良い球が出ればすぐにクラブを下ろして
「よっしゃ!」とガッツポーズ。
悪い球が出れば、バランスを崩してよろけ、
「あーっ!」と叫びながらクラブを地面に叩きつける。
この「ショット直後の感情と姿勢の乱れ」は、
ゴルフという道に対する敬意を欠き、
結果(スコア)の奴隷になっていることの
完全な証明です。
真のゴルファーのフィニッシュとは、
ボールが止まるまで微動だにせず、
美しい姿勢を保ち続けることです。
一切の感情を挟まず、
結果を「観の目(客観)」で見届ける。
この数秒間の静寂こそが、
ゴルフにおける「残心」であり、
あなたの「品格」を決定づける瞬間なのです。
■ 残心は「次のショットの始まり」
どんなに良いショットも、
どんなに悔しいミスショットも、
残心を保つことで「過去」へと綺麗に収まります。
2秒間じっと残心を保つことができれば、
怒りや歓喜といった
乱れた感情(不純な種子)は鎮まり、
次のショットに向けた
冷静な思考へとスムーズに移行できます。
「前のショットの完璧な終わりは、
次のショットの完璧な始まりである」
ボールが転がり止まるまでの数秒間、
あなたのフィニッシュは
美しく静止しているでしょうか。
その「残心」の美しさにこそ、
ゴルファーとしての本当の品格が宿ります。
次回、第9章では、
この「美しい終わり(残心)」から少し時間を巻き戻し、
ボールを放つ前に描くべき
「矢筋(やすじ)」という概念
について探求してまいります。
放たれたボールは、
どのような空間(フェアウェイ)を通って的へと向かうのか。
目に見えない「精神の通り道」の描き方に迫ります。
どうぞお楽しみに。
さて、この連載もひと区切りの【9月30日】まで、
今日で「あと44日」となりました。
「時間は有限である」ということを私自身も忘れないために、
そして少しの緊張感と笑いを交えながら完走するために、
勝手にカウントダウンして行きます(笑)。
自分の心に嘘をつかず、今日できることを淡々と。
【9月30日まで……あと44日!】
指先から掌(たなごころ)へ、
そして心へ伝わるまで、
その先を信じて、
稽古したいと思います。
それでは皆様、本日も
楽しくお過ごし下さい。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。
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