8月鑑賞映画まとめ | 三つ子の魂百まで…トラウマニア

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映画レビュー、コレクション紹介、映画や趣味全般について書いています。

『ファイナル・カウントダウン』

【1979年/アメリカ】

 

原子力空母が時空の壁を越えて真珠湾攻撃が近い1941年12月へタイムスリップしてしまう戦争SFサスペンス。真珠湾の悲劇を食い止めようとする海軍側の計画を歴史に関与してはならないと警告するマーティン・シーン。タイムスリップ作品の掟を忠実に守っているが、如何せんアクション場面が少なく物足りなさを感じる。


海軍全面協力による実機使用で箔が付いているものの、空母内でのドラマパートが長すぎ。捕虜になった日本兵を演じる俳優が独特のアクセントで話す日本語が非常に聞き取りにくく違和感ありまくり。ゼロ戦とトムキャットのドッグファイトが一番の見せ場であり、トップガンを先取りしたようなカメラワークは手に汗握ること請け合い。

犬のチャーリーがとても可愛いんだけど、マーティン・シーンが出演しているからチャーリー(息子)と名付けたのかな?脇役だとトロマ映画の創設者ロイド・カウフマンの若かりし姿が拝めます。もう一人、ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビサーガ三部作『死霊のえじき』でバブを飼い慣らすフランケン博士を演じたリチャード・リバティーも出ています。

本作での語り草と言えば音楽を手掛けたジョン・スコットのサントラが岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」に盗用されたこと。スコットが訴えるも、パクり作曲家が知らぬ存ぜぬを貫き通したため直訴する為に自ら日本に赴く。結果的に和解し「聖母たちのララバイ」はジョン・スコット名義でクレジットされるようになる。因みに盗用されたスコアはオーウェンス中佐とローレルが孤島に置いてけぼりを食うシーンとEDで流れたバラード"Mr.&Mrsタイドマン"。

さてここからドンパチが始まるぞ!と盛り上がる所で都合よくタイムトンネルが出現し無事現代へ舞い戻るのはご都合主義と言うべきか、彼らの行動を歴史が阻止したのか?結末にその全てが集約されているのでタイムトラベル作品として一定の水準は保たれている。『トラ・トラ・トラ!』のフッテージが流用されているため2本立てで鑑賞するのもオツかも。


【2017年8月2日(水)】テレビ東京「サタ★シネ」
<2016年8月14日(日)放送>の録画で鑑賞。
●カーク・ダグラス(イーランド艦長)宮部昭夫
●マーティン・シーン(ラスキー)金内吉男
●キャサリン・ロス(ローレル)渡辺知子

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『ビヨンド・ザ・ダークネス/ 嗜肉の愛』

【1979年/イタリア】

死体性愛にカニバリズム…。

女の四肢切断のオンパレードなジョー・ダマト監督渾身の1作。病魔に侵され死んだ彼女を墓からほじくり返して趣味の剥製作りと同じ手法で保存する異常な独占欲を持つ青年。腹を裂き臓物が溢れ出る。剥製を仕上げるまでの行程がエジプトのミイラ作りを彷彿させるほど細かく描写されており、脳味噌の摘出法など裏付けがしっかりなされていて胡散臭さを感じさせない。

微動だにしない死体役のアンナを演じるのはルチオ・フルチ監督作『ビヨンド』で盲目の少女エミリー役のシンツィア・モンレアーレ。女優の鑑とは脱ぐ必要があるならトコトン脱ぐ彼女のような人の事を示す言葉。嫌悪感を与えるグロテスク描写の他にも、図々しいデブのヒッチハイカー女や葬儀屋のクセに探偵まがいの行動に出る禿ケツ顎じじい。こいつらのネチっこい性格が癪に障り、イラついてブチ殺したくなってしまうのは監督の思う壺にハマったということか(笑)

R&Bな音色が色濃く感じられる後期リズム隊編成ゴブリンのサントラが終始鳴り続けているのが嬉しい。ゴブリン作曲の中でもここまでフルレングスで使用されている作品は意外にも少ない。(PVを見ているような感覚)16分割ピコピコシンセが躍動感を与えるメインテーマ。ペーソス溢れるピアノソロが美しい"Quiet drops"どれも見事に映像に溶け込んでいる。

フランカ・ストッピ怪演の女中とその親族の天然パァ具合も正気の沙汰ではない。本作ファンの間で先ず話題に上るのが、硫酸で溶かした死体を庭に棄ててからロクに手も洗わずシチューらしき物をクチャラー精神で食す悪意に満ち溢れたシークエンス。食事の間に溶けたドロドロの死汁をインサートする趣味の悪い編集。食事時に見るとゲロ必至ですよw 

恋人を剥製にして添い遂げたいほどの愛情があるのに、街で女を引っ掛けて来ては一発やり損ねて結局殺めてしまう計画性のない主人公。妹の存在は葬儀に参列した時、隣で見ていたはずなのに「いやぁ~お初にお目にかかります」みたいなトボけたノリで丹精込めて作った剥製を焼き捨てる熱しやすく冷めやすい性格。悪趣味とサスペンスとGOBLINの音楽が上手い具合に噛みあった奇跡のネクロフィリア物。プロットがしっかりしているし、低俗の一言で片付けるには惜しいイタリアンホラーの名作!

【2017年8月3日(木)】
SEVERIN FILMS(アメリカ)の
最新HDレストアBlu-rayで鑑賞。
※初見は94年にレンタルビデオで。

 

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『ザ・ダーク』

【1979年/アメリカ】


青い映像が延々と映し出されるだけの映画があるそうだけど、本作は暗闇・・・黒い映像が延々と映し出されるタイトル通りのザ・ダーク。長身でバカでかい怪物に惨殺される人々。しかし何が起こっているのかサッパリ分からない。娘を殺された父が敵討ちの為に独自捜査するんだけど、やはり暗がりが大半を占めているのでドラマパートも全然頭に入ってこない。娘の遺体を見て「ウエッ!」とえづくウィリアム・ディヴェイン酷いけど笑っちゃったw


どうやら浮浪者による連続殺人をテーマにした脚本だったものを、SF映画ブームに便乗して路線変更した曰く付きの1本。本当かどうか真相は分からないけど、当初あのトビー・フーパーが監督していたが、途中降板したとか?何度か見ているけど、印象に残るシーンは霊媒師の家に突風が吹き荒れて家具がめちゃくちゃになるカット。女優の顔が妙にオカルト風で、犯人よりインパクトがある。目からレーザー光線をぴゅんぴゅん発射する殺人鬼。ビデオゲームのスペースインベーダーで名古屋撃ちをしてチビチビ時間を潰すリーマンでさえあまりの退屈さに睡魔に勝てずザ・ダークになるであろう中身の薄っぺらさ。

「ローリング・サンダー」のウィリアム・ディヴェインや「グリズリー」のリチャード・ジャッケルなど名優が出ていなければ見る気にもなれないZ級作品。ジョン・"バッド"・カードス監督にザ・ダーク。ネームバリューはあるのにこのクソつまらなさ。よくこれを劇場公開しようと思った松竹富士の決断には頭が下がる。

【2017年8月4日(金)】東映ビデオのVHSで鑑賞。
※初見は1993年にVHSで。

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『スターシップ9』

【2016年/スペイン、コロンビア】

SFの名を借りた異色のヒューマンドラマに仕上がっていて、あまり喋るとネタバレになる…。宇宙船内で一人生活するヒロイン。人工知能の指示で活動し、クセになっているのが筋トレ!細身の身体でぶら下がり腹筋を披露したり、華奢なのにとにかく美しいボディラインにうっとりさせられます。


植物を育て、宇宙食を食べたりといったシーンは「サイレント・ランニング」っぽいし、煌びやかなネオンに染まる街並みには日本語が乱立し、日本製のカップラーメンまで登場する。「ブレードランナー」の影響を受けているのは間違いないと思うけど、宇宙空間と近未来のギャップが面白い。

部屋の扉がトンボの羽のように交差しながら開いたりとガジェット類にも工夫を凝らしていて映像感覚もなかなか見応えがある。親を知らず孤独に成長してきたヒロイン。人と接した事がないのに初めて出会った男性に惹かれていく。そこには人間の本能が浮かび上がってくるし、ゼロからのスタートでも諦めてはいけない愛と希望を感じさせる作品でした。原題のオービター9って響きも捨てがたい。

【2017年8月5日(土)】
ヒューマントラストシネマ渋谷で鑑賞

※公開初日

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             『ファンタズム』

           (1979年/アメリカ)

エルム街の悪夢より遥か昔に誕生した

ナイトメアホラーのパイオニア!

少年が抱く思春期特有の不安感や、たった一人の兄に懐き離れないナイーブな寂しさと「死ぬとどうなるのか?」と誰もが感じたことのある恐怖を彼がイメージする怪異ヴィジュアルが紙芝居のように展開する脈略のなさはまるで悪夢を思わせ、

観客ライドオンな異空間トリップ系の大傑作!

への字口でマイクを付け狙う葬儀屋トールマンの威圧感と、銀の鉄球からナイフが飛び出し額にドリルで穴を開け脳味噌を吸い出すこんなの誰も思い付かない突飛なアイデアはドン・コスカレリ監督自らが見た夢を映像化したものだと言うのだからなんと想像力豊かな人なんだろうw
両親に資金を出してもらい好き放題映画を撮っていた彼だけど、ファンタズムに命を懸けライフワークになってしまったのは、成功と取るか呪縛と取るか…。

もの悲しい旋律のメインテーマ。ホラー映画サントラの中でも屈指の名曲であり、兄弟愛と親友レジーに見守られて困難を回避するマイクの心情を表すような美しく哀愁を漂わせるシンセサイザー。このテーマ曲を初めて聴いた監督が「この音楽なら映画の成功は間違いない!」と自信を持ったと言うのだから故フレッド・マイローに感謝せずにはいられない。

冷たく無機質な霊廟。音叉をヒントにした異空間への扉が開く二本の鉄の棒。アイデアが常人離れしていて感服する!スペースゲートが再起動するときのミュ~ンと鳴るサウンドが大好き!それと地獄の唸りの如く響く重低音。この作品と出合った頃、テレビの音量を最大にして部屋全体をビリビリさせたのも良い思い出です。ビジュラマの正体は試写会で上映中に頭巾を被ったスタッフが客を驚かすギミックだったらしいけど、消防法に抵触するので一般公開では陽の目を見なかったトホホなウィリアム・キャッスル大先生風な仕掛け。ビジュラマサウンドも単に4chステレオだったみたいですが、こういう最もらしいネーミングで宣伝されると俄然観たくなりますよね(笑)

漆黒のクーダのかっこ良さ!サンルーフからショットガンをぶっ放すジョディに惚れる!そしてぶつかりそうなくらいの速度で駐車する行き着けの酒場は「スナック砂丘」だよ。この場末感が堪らないです!ハンマーで足を叩かれるジョディの変顔はいつも笑っちゃうし、マイクお手製の弾丸ハンマー爆弾も影響受けてホントに出来るのかな?とずっとずっと考えていた中学時代w

今回、J.J.エイブラムス監修のもとで製作された4Kリマスター版を劇場で見ることができ感無量でした!シルバースフィアが右から左へ移動する音の分離感や白い部屋の重低音は足元にビンビン伝わる大迫力サウンド。冒頭、トールマンがトミーの棺桶を持ち上げる場面で大雨が降っているのに初めて気付きました。というか、それくらい映像がシャープになっていて新たな発見、見えなかったディティールがこれでもか!と確認出来る最高のレストア版。公開当時は入っていた配給会社アブコエンバシー(倒産)のオープニングロゴも味わい深いです。

悪夢と死への恐怖心、兄と惜別しなくてはならないのか?などマイクが抱える不安が奇しくも映像として彩りを与える結果となり、トールマンはホラー界のアイコンとして確立された。トールマンを演じた実際は温和な伯父さんアンガス・スクリムの右目ウィンクな顔芸と「ボーイ!」の台詞一生忘れません。アンガスさんに捧ぐ…。

【2017年8月5日(土)】
新宿シネマカリテで鑑賞。 
~カリコレ2017出品作品~
※初見は1990年にレンタルビデオで。

 

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   『ファンタズムV ザ・ファイナル』

           (2016年/アメリカ)

実父のようにピアソン兄弟を支えてきたレジーが

トレードマークの黒ベストで正装し、愛車バラクーダを転がしながらトールマンと因縁の対決に挑むシリーズ最終章。

シリーズの主要キャラが総出演し、まるで同窓会のような懐かしさ。ファンタズムのファンには身内のような親しみ易さを感じさせ、なんとも言えない感動を与えてくれる。惜しくも他界されたトールマン役のアンガス・スクリム氏。お世辞にも元気ハツラツとは思えない表情でしたが、まごうことなき異世界の番人を誠心誠意演じていて、特に4作目で初めて正体が明らかになる人間だった頃のトールマンことジェバダイア・モーニングサイドが一瞬顔を見せてくれるのは温厚なアンガスさん御本人を見ているようでなんとも言えない悲しい気持ちに…。

ストーリーは2作目からの伝統とも言えるユーモアを交えたロードムービー風に展開する。バリエ豊かな装備で(球って呼べるデかさじゃないw)風を切り人体を斬り、時に最終兵器の如く街を破壊するシルバースフィア。ここまでやれば文句はあるまい!ロシア人や動物にまで八つ当たりする手に負えないフリーダムさに拍手喝采ですよ。

戦士マイクのイケメン姿に惚れ惚れしていると、兄のジョディがクールな仕草で颯爽と登場し盟友レジーと戦闘を開始する。執拗に追ってくるドワーフを四連ソードオフショットガンで風穴を開けまくる爽快なシークエンス!フィルムをキャンバスに見立て赤と黄色の血液が飛び散る壮大なバトルシーンが描かれていく。

哀愁のメインテーマをバックに修羅場を潜り抜けてきたレジーとマイク&ジョディ兄弟の絆をあんな形で見せるなんて本当にずるい。かけがえのない友情、いや本当の父親と呼ぶに相応しい心優しいレジーが歩む花道は号泣間違いなしの感動作に仕上がっています!!こんな伯父さん傍にいて欲しかったな。両親をトールマンに殺されたピアソン兄弟とレジーの結束力は永遠なんだ。

撮影終了からポスプロ(編集仕上げ)までの期間が長く、お蔵入りしないか心配でしたが、監督も相応しい最終作へ纏めるのに試行錯誤したのだと思う。エンドロールの戦闘シーンとか本編に入れてよー!と思う素晴らしいフッテージが見られるんだけど、この様子だと結末も何種類か撮影していたんじゃないでしょうか?

熱烈なファンタズム信者には文句の付け所がないSFビジュラマ超大作。ミゼットのお兄さん超イケメンだし、ドーン役のおねいさん超べっぴんさんだった!こんな事書いたら怒られるかもしれないけど、棒立ちしてるトールマンがボケ老人みたいで、それを「あの、どうされました?」ってな様子で伺うレジーのくだりがドリフのコントっぽくて笑っちゃいけないのに心の中でもほんの少しほくそ笑ませてもらいましたよ~(汗)

それでもなんでも葬儀屋トールマンって一体何者だったのか?ここまで謎のホラーアイコンってのも珍しい。いや、ジョディの「見るもの全てを信じるな 」って名言があるし、きっとアンガス・スクリムさんはどこかでボーーイ!!!って叫び続けているのだと信じたい。

【2017年8月5日(土)】
公開初日に新宿シネマカリテで鑑賞。
~カリコレ2017出品作品~

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 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』

          (1968年/アメリカ)

人生で初めて見たモノクロ映画。そしてモノクロへの免疫が付いた初めての映画がこのナイト・オブ~だった。ゾンビが非常にアグレッシヴな活動をするかと思ったら、トロトロ動くやつがいたり予測不能の恐ろしさがある。民家に籠城するプロットとガソリン給油に向かうシークエンスを良く観察してみると『ゾンビ』(1979年)でセルフパロディとして映した酷似シーンがあるのは興味深い。

白黒撮影の場合、血の赤はそのまま赤色で撮ってしまうと発色が悪いのでハーシーズの板チョコを溶かし使っている。1968年製作にしては銃で撃たれる弾着エフェクトがリアルだし、タブー視されていた人肉喰いでは臓物までも口に含むし、血みどろスプラッターに目が肥えた中学時代の僕でさえ薄気味悪さと背徳感に気分が悪くなった思い出がある。トラックで焼死したカップルの肉を食べるけど、あれって焼き加減ミディアムレアなんじゃないの?と思ってみたり(笑)

地下に引き籠っていたクーパーの表情で物語る演技がとても印象深い。その娘は父の身体を食い荒らし、母をスコップで刺し殺す。『サイコ』からインスパイアされたのは確実な場面構成だけれど、ゾンビが執拗にスコップを振り下ろす姿は他のロメロゾンビ作品では見られない異質な光景。恐らく母親は食われていないと思うんだけど、ベンが近寄った時にパチッと目を覚ます。あの状況下で死んだ人間は噛まれなくても甦る設定にしたロメロはやはり偉大な作家だったと思う。

サントラは1950年代SF映画からのストック音源を流用。「宇宙5000年目の恐怖」(1958年)、「太陽の怪物」(1959年)、「宇宙からの少年」(1959年)など。『ゾンビ』もそうだけどロメロ監督は音楽センスというより映像にマッチするスコアを当てるのが非常に上手い。ナイト・オブ~の為に作曲されたBGMと言われても信じて疑わないほど馴染んでいる。

バーバラが発見する顔面の皮膚が剥がれた骸骨のような遺体はなぜあそこに横たわっていたのだろう?リメイク版では自殺した住民という設定だけど、ディティールが分かりにくく不気味さに拍車を掛けている。俗に田中邦衛と呼ばれているゾンビは脚本のジョン・ルッソ本人。脳を破壊されても眼球が僅かに動いているのがこれまた気色悪い。(冷静さを失ったバーバラの錯覚とも取れる?)

田舎の民家で発生した一夜の出来事なのに、夜が明けると保安官や自警団がゾンビ狩りを楽しみ、分別つけずに引き金を引く呆気ない幕切れは死人が甦って肉を貪るグロテスクな映像より残虐で、救いようもないバッドエンドに寝込んでしまいそうな厭さがある。粒子の粗いストップモーションであたかも実録モノのように観客へアンサーを投げかけた『生ける屍の夜』は今日まで量産され続けて来たゾンビムービーの記念碑的な1本。

著作権や小難しい事にいちいち口出ししない器の大きなジョージ・A・ロメロ監督が彼独自の解釈で生み出した歩く死体がこの世に闊歩しなければ何も始まっていなかったと思うと、一人の人間がもたらす影響力はとてつもなく大きく感謝の言葉しか思い浮かんでこない。ロメロ監督、我々が死んだ姿そのまんまなホラーアイコンを作ってくれてありがとう!僕は死んだらゾンビになるのが夢です!

【2017年8月15日(火)】新宿シネマカリテで鑑賞。
~カリコレ2017出品作品~
※初見は1991年にレンタルビデオで。

 

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『クロージング・ナイト

                    地獄のゾンビ劇場』

           (2016年/カナダ)

品もへったくれもないお下劣なエログロ融合のゾンビ映画。いや、人肉は食べないのでゾンビじゃないんですが…。クソ田舎のナイトクラブに年増の姉ちゃんや頭の巡りが悪そうなストリッパーばかり勢ぞろいし、裸目当てに炭坑夫がウヒヒ!とやってくるが全然眼福じゃない(怒)

具合が悪くなってトイレでゲーゲー吐くんだけど、尋常じゃない量のゲロなんですよ。こいつら4人組が炭坑で掘り当てた原油と思しき謎の毒素に感染してストリップ小屋が地獄絵図になる訳です。首が千切れたりするんだけど、惨殺時の構図がヘタクソで誰が何をされているのか頭をかしげてるといつの間にか人が死んでる。そんなんばっかですw 

年増の野球好きネェちゃんが感染者をあの手この手で退治するも、結局お色気に走るもんだから(控えめに言ってもブス)なんかイライラしちゃう。お漏らしプレイや、歯抜けのスケベ爺が乳首タマタマと叫ぶ場末のナイトクラブ。石油を吐くんだから奴らを取っ掴まえて死ぬまで叩いてゲロさせりゃあ一攫千金、石油王になれるんじゃないの?と思ってみたり。

終盤だけは最高に面白いのに半端な状況で観客を置き去りにする演出はもっとどうにかならなかったのかいな…。弱点がホントどうしようもない。油に水だったら火だろ?w それがもう…。日々の生活に嫌気がさしているホラー好きの人が暇つぶしで見ればクソ下らなさで元気が出ると思います。

【2017年8月15日(火)】
新宿シネマカリテで鑑賞。(公開初日)
~カリコレ2017出品作品~

 

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『デス・レース2000年

             <日本公開40周年記念>』

           (1975年/アメリカ)

戦争、大恐慌の刺激で感覚がマヒしたアメリカ国民が狂った殺人カーレースに熱狂する近未来の世界を描いた(2000年は17年前だけどなw)

天才ヤリ手のロジャー・コーマン大先生が贈る

カルトムービーの傑作!

粋がった中学二年生が親の脛を齧ってチューンナップさせたようなミニ四駆風の殺人カーがえれえポップかつ、刀やトゲトゲでデコレーションされていても所詮お飾り程度で、本領を発揮するのは爆裂スピードでの轢殺。このTVゲームの先駆けっぽい無差別に人間を轢きまくってポイントを稼ぐ世界観に無名時代のシルベスター・スタローンが出演してるんだから、もうジョークが過ぎるw 歴代の優勝者らしいけど、事あるごとに噛み付く精神年齢の低さ。マシンガン乱射のフォームは「ランボー怒りの脱出」ラストの名シーンと同じ、つーか原型が見られるなんてのはスタ公好きには胸キュン「への字口」なチーク強め垂れ目種馬にメロメロになるであろう。

最も強烈かつ大爆笑必至の場面は病院で死にぞこないの爺ちゃん婆ちゃんが公道に横一列でズラリと並べられ的にされるところ。ところがドッコイ血も涙もない人間のクズな藪医者や看護婦が高みの見物とばかりに退避する道へ故意に突っ込み跳ね飛ばすコントみたいなブラックジョーク。老人や子供が死ぬ死ぬモード連発ってあーた、これメリケンだから許される映像っすよ。(いや酷いかw)全体的に頭のネジ飛び過ぎていて今見ても強烈なインパクトを放っています。標的にされる民間人の人間性を目糞ほどだけ描いて魅せているのがまた愉快。釣り人のくだりとかねw

フランケンシュタイン役のジョン・キャラダインは黒レザースーツに身を包んだ伝説の英雄を演じているけど、何年の大会で負傷したキズとか武勇伝を語りながらも実は嘘八百だったりルパンの変装のように顔面の傷マスクをベリッと脱ぐのも様になっていますね。けれどさ、当の本人自前のヘタッチョな差し歯はそのまんまなんだよね(笑)アシスタントを勤める美形&可憐&わんぱくが似合うシモーヌ・グリフィスがすっごく魅力的で骨抜きにされてしまうんですよ。おバカホイホイ爆弾娘に扮した『悪魔の沼』の冒頭でネヴィル・ブランドにブチ殺されるロバータ・コリンズもめちゃくちゃ可愛らしい。出場者全員がマッパでマッサージされる場面とかハーレムかよ!脱がなさそうで脱がしちゃう別嬪さんのオッパイを惜しげもなくドドーンと切り取るサービス精神に70'sの底力を見た。

慣れって怖いもので、己が轢き殺される番になるかもしれないのにドーパミン放出で前が見えなくなっている浮かれた連中を退治する真の正義、腐敗した世の中に鉄槌を下すフランケンさん怒りのアクセルべた踏みに2000年への希望が湧く疾走感バツグンのカーアクション大作。スーパーカーブームやカー消し世代のおっさん&おばさんは絶対見て若返ってほしいww 僕も変な車乗りたいもん。

【2017年8月15日(火)】
新宿シネマカリテで鑑賞。
※初見は2007年にテレビ東京

「バリシネ」(深夜枠)で。