夢想家 974。 【庭園のわびさび】 | ネズラー通信編集部のブログ

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水彩。



私は有給を使い、
以前より見学したかった、
京都市にある聚光院方丈南庭を訪ねた。

京都地下鉄烏丸線に乗り、
北山で下車する。

少し、
京都府立植物園を散策し、
地図を片手に、
大徳寺を目指した。

北山と言えば、
金閣寺にも近い。

地図はブロック状に構成され、
北山通から3ブロック目で右折し、
ドン突きまで歩き・・・
まるで
オリエンテーション気分で楽しい。
自分がどのルートを通っても、
目的地にたどりつく。

それに、
この北山という場所は
東京で言うところの
青山や赤坂、六本木など、
少し御洒落な街だそうだ。

京都で仕事をしている友人がそう言う。
友人は、
北山駅近くにある、
京都府立大学の美術学科を出ている。

今は絵付けの仕事をしている。


目的のは
臨済宗大徳寺派に属する。
永禄9年(1566年)、
三好義嗣が父長慶の菩提をとむらうため、
大徳寺百七世笑嶺宗きん(しょうれいそうきん)を請じて
建立した寺で、
聚光院の名は長慶の法名に由来する。

三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)歴代の
墓所となっており、
千利休の墓もある。

そして、
聚光院方丈南庭は枯山水で有名だ。

庭を眺め
心静かにしたい。

なので
平日を狙った。
休日は
人だらけで
喧噪としていて、
寺本来の修行の場であることが
置き去りにされている気がするからだ。


私は庭と向き合った。

夢想家 974 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣



幸運なことに、
私の他
庭を眺めているのは、
かなりご高齢の男性と、
中年の女性だけだ。

二人ともただ、静かに
静かに庭を眺めている。

静寂が神秘性を増強することもあるが、
確かに手入れされた庭は見事だった。
山水に見立て、
毎日、
僧侶や庭師が手入れしているのであろう。

それを何百年と続けてきたのであろう。

私は
砂に水を観た。
砂粒が太陽の力で水滴になる。


僧侶が話しかけて来た。
かなりのご高齢で高僧の袈裟をかけている。

『あなたはもう1時間も正座して
 庭を観ていらっしゃる。
 少し気になりましてね。』

そういうと老僧は、
私に庭の説明と寺の歴史を少し話してくれ、
私の横に音もなく座った。

『庭は不思議ですね。
 観るものによって形を変える。
 そして生きているようにさえ見える。』

老僧の重たい言葉に、
私は
ただ、

『はい。』

答えた。

あの岩は
あなたには何に見えますか?

『私にはネズミに見えます。』

夢想家 974-1 ky ネズラー通信(C)




私は老僧の澄んだ瞳をまっすぐに見つめ、
そう答えた。






(こんな出だしはどうだろう?)





【参考写真】

夢想家 974 参考写真