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夢想家 727 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣

シャーペンB。




不可解な事件だった。

現代の密室殺人事件。
報道各社は
ミステリ調で事件を報道した。

ただ
遺族の立場になると
非常にふざけた伝え方だと思っていた。

田園の中に立つ一軒家。
豪邸。
塀の内側の防風林は、
防犯のためでもあった。

いつものように、
被害者である母親は一階で、
家族である高校生と大学生の長男と長女は
二階で寝ていた。

物音で、
長女が目覚める。
長男を起こし、
一階へ。

そこで兄弟が観たものは
変わり果てた母の姿だった。

煌々としたLED照明の光が、
母が亡くなっていることを
冗談のように
兄弟へ知らしめた。


首を鋭利な刃物で切られた失血死。

ただ
寝室には
血痕があったが、
布団にはついていなかった。

顔見知りの犯行か。

物色された跡もなく、
警察は
二人の子供たちを第一の容疑者にしたが、
動機もなく、
被害者の両手には
髪の毛が十数本握られていたという。



ガラスも割れていない。
犯人はどうやって
被害者の寝室に忍び込み、
そして出て行ったのか。


大学で教鞭を取る
燃焼科学の教授、
土中知子に
警察から電話がかかってきたのは、
夏休み前、
前期の試験作成中だった。


先生の知恵を貸してほしい、という。

私は燃焼科学の専門家だから、
今回はお役に立てそうにない、
報道を観る限り私の学識は役に立たない、

土中知子は警察にそう返事したが、
科研が
割れていないガラスに疑問を感じているという。

燃焼科学の第一人者として、
侵入経路の特定に、
手がかりを探して欲しいという依頼だ。


土中知子は迷ったが、
遺された二人の子供たちのためにも
犯人を捕まえることに協力することを承諾した。


現場の豪邸に行く。

水田に囲まれた豪邸だ。

犯人の足跡らしきものは見つかっているが、
汎用の靴跡で、
購入履歴を精査中だという。

周囲に防犯カメラはない。


土中知子は現場に入った。
二人の子供たちは
祖母のもとへと今は預けられ、
専門医のカウンセリングを受けているという。

許せない。
犯人が。


殺害現場となった被害者の寝室に行く。
大きな窓。

現場は特に片づけなどはされていないという。

布団に血痕はなかったが、
変色して
緑黒くなった生々しい惨劇の跡が
壁や
床についている。

被害者は抵抗しつつ逃げたのだろう。


毛髪からDNA鑑定もしているが、
過去の犯罪歴から
データベースは引っかからない、
また
被害者は恨まれるタイプではなく、
経営者の座にありつつ
慕われる女性起業家だったという。

物盗りではないとすれば、
怨恨か。

しかし、
彼女は10年前に夫を亡くし、
それ以来、
付き合いのある男性は仕事関係のみで、
深い中の男性は見つからない。

仕事に一所懸命だったのだろう。
子供を卒業させ、
社会人のしてから、
きっと母としてそう思っていたのだろう。

土中知子は
被害者の心情に寄り添った。


ただ、
侵入経路が全く判らない。

靴跡は、
家の中では見当たらず、
被害者の部屋の中だけだという。

かなり計画的な犯人像をプロファイルする。


変色した血痕の中に
キラリと光る鉱物を見つける。

夢想家 727-1 ky ネズラー通信(C)


カーペットに埋まって
警察は見逃したようだ。


土中知子は
それをサンプルとして拾う。


やはり
犯人は窓から入ったのだ。

この鉱物の特性を利用して。






(こんな出だしはどうだろう?)