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夢想家 704 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣

シャーペンB。



何か
後ろが気になる。

夢想家 704-1 ky ネズラー通信(C)



俺のクセってヤツかもしれない。

何か、
こう
俺を観ているような・・・

気のせいか。


職務質問が終わった夜の公園で、
俺は
若い巡査に、

『それは・・・それは・・・』



微妙な同情をされた。

ただ、
児童公園は児童のものなので、
あまり大人が遊ぶと、
不審者の通報が行くので、
気を付けて欲しい、


何とも肩身の狭い、
夢のないお説教も受けた。

俺の何処が不審者なんだ。


高専へ進学し、
3年次編入で四大へ行った。

小さい頃から
車が好きだった。

最も
スーパーカー消しゴムとか、
トミカーとかいう玩具だったけれど。


F1やラリーを観て、
もっと好きになった。
19歳の頃には、
中古のスープラに乗っていた。


そして、
菱のマークの自動車部門に行った。
最初は
エンジンの設計技師だったが、
不調な業績は続き、
親方の株主たちから、
人事異動案が出て、

俺は
組立部門に流れた。
それでも、
エンジンの設計に携わりたかったし、
自分が
設計しているエンジンが、
想定の燃費を出せないことは、
開発時点で知っていた。

その後
上司たちが闇に葬った事実は、
なんとも情けない。

そいつらのせいで、
首になるオレも情けない。


いかん、いかん。

そうだ。
上を向いても
下を向いても仕方ない。

ネコの目は前を向いているんだ。


しかし、
後ろが気になる。
この場合は、
物理的な意味合いの後ろで、

誰かが俺を・・・


と思ったら、
影から
さっきの巡査二人が現れた。


『あれ?
 どうしました。』

俺から先に声をかけた。

だって、
悪いことしていないし。

巡査二人は
少し困っているような表情だった。

『猫村さん、
 その、
 まあ、
 こちらで処分もできるのですが、
 今は
 法規的にあなたのものなので・・・』


俺の社員証を渡された。

カード式で、
普段はネックストラップで首からぶら下げ、
お腹付近に捻じ込んでいる。
仕事の邪魔だからだ。


社員証にはこう記されている。


◆◆◆重工 自動車部門 設計主任
猫村 聡

夢想家 704-2 ky ネズラー通信(C)


思えば、
1年前は誇らしいものだったが、
なんだか、
世間にも申し訳ないし、
頭が真っ白になった。


一瞬、戸惑ったが、
受け取って例を言う。


後で
川に流そう。

俺は
先を急いだ。






(こんな出だしはどうだろう?)