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夢想家 695 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣

シャーペンB。





アチョー!


きっかけは、
電車の中で
痴漢に遭ったことだった。

怖かったし、
悔しかった。

たまたま、
それを見つけた老紳士が、
痴漢を捕まえ、

見事な
コテ返しで手首を捻り上げ、
そのまま、
倒し、

痴漢の目をしっかりと見据え、

『抵抗するな。
 私は拳法の師範だ。
 抵抗すると、
 私はどうなってもいい、
 貴様の命はないと思え。』


物静かに言い放った。


老紳士は
どう見ても、
80歳くらいのお爺さんだったが、
琥珀色の瞳に
ギラリとそのときは
殺人者の光が宿った。


その後、
私は
鉄道警察の事情聴取を受け、
相手は
なんと精神科医というではないか!

非常に腹が立った。
医師という立場、
しかも
他人を精神療法する立場にあって、
痴漢とは!

なんだか
目つきが爬虫類のような
首の細い男だった。
そういうとトカゲに失礼だ。
兎に角、
気持ち悪い男だ。


お爺さんも受けているようだったので、
終わってから、
お爺さんにお礼を言った。


『いやいや、
 お嬢さんこそ、
 大変な目に遭われましたな。
 不届きものが多いです。
 私のことはお気になさらず。
 私は
 警官の空手の稽古もつけていたので、
 たまたま弟子が私の担当で、
 簡単に済みました。』


私を安心させるように
優しい眼差しで、
言葉慎重に声をかけてくれた。


それから、
私と
趙師範の稽古が始まった。


師範は最初、
私が入門することに戸惑った。

『いやはや、
 私はもう老人です。
 あなたにお伝えできる技術は
 あまりないかもしれない。』

『私は
 世の女性や子供が、
 ある程度、
 自分で自分を守れる、
 そんな少しの力が欲しいのです。』


師範は
私の目を
やはり琥珀色の目で暫く見つめ、

『わかりました。
 格闘術の基本は変わりません。
 立ち方、
 足のさばき方、
 空手も中国拳法も、柔術も
 全て原点は同じです。
 ボクシングは・・・ 
 少し違う動きもしますが、
 大きく観ると、
 全ての格闘技には通じるものがあります。』


そして、
空手の基本の型から、
私は学んで行った。


趙師範は、
戦前、
日本に来られたそうだ。
格闘術の先生として。

戦争のお話しはあまり語りたくないようだったが、

『強さとは、
 弱き場所に使うものではありません。
 力の行使が必要か、
 しっかり自分の考えを持って下さい。』


私に
闘う者の哲学を持て、と教えた。



そして今、

私は、

「寝ながら痴漢撃退キック」

という
格闘技の講師として
多忙な日々を送っている。

基本は
沖縄空手とタイボクシングを
合わせたものだが、

女性や子供、
力のない方でも、

無理なく、
相手へ体重をのせた攻撃が可能である。



夢想家 695-1 ky ネズラー通信(C)






(こんな出だしはどうだろう?)