ネズラー通信編集部のブログ

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庭にはタンポポの花が咲き
近所の畑ではモンシロチョウを目撃・・・。

これからの気候の変化が気になります



彼愛用の万年筆で。



【茶色毛の天使 ミミ・アナ―リスの道程~1~ 元・傷病兵へのインタビュー】





ついに、
アナ―リスが召されましたか・・・
そうですか。

(元兵士は目頭をチーフで抑えた。
 私は
 ミミ・アナ―リスに関わった群像へ
 焦点を当て、
 アナ―リスの功績を研究しようと考えた。)


そうですね、
失礼。
どこからお話ししましょう。

(老兵は、
 チェアに深く腰掛け、
 私に紅茶を勧める。
 私は
 カップに手をとり
 彼の瞳を見つめた。
 彼は遠い昔へ記憶をさかのぼっているようだ。)


それは酷いものでした。

私は
まだ18歳だった。
18歳と言えば、
立派な大人のオトコです。

国のため、
戦争に是非、参加せねば、と思っていました。

当時の若者は
そう考えたのです。

私もその一人でした。


(元兵士の老人は、
 ここで暫く沈黙した。)


でも
違っていた。

戦場は地獄でした。

砲弾と銃弾の嵐。

私は
胸部と腹部に被弾し、

野戦病院へ運ばれたのです。


(彼は
 またも
 瞳から零れるしずくをガーゼで拭う。)



私は
他の傷病兵と同じく
むしろに寝かされ、
泣き叫びながら、
痛い!
痛い!

言っていました。

左右の兵士もそうです。

私と
年齢も変わらない。


そして、
そこで浮かんだのは、
自分が
もう死んでしまうことと、
母、
そして、
バーミンガムに残した恋人アナリスのことでした。

母は
戦争には反対していましたが、
若い私に理解はできなかった。

でも
従軍し、
母の意見が正しいと理解していたのです。

死の間際で。

不思議と
私が殺した憎き敵たちのことも
頭に浮かびました。

彼らも
同じように考えている、と。

確信がありました。

不思議なものですよね。


正義と思っていた価値は
あっさりと崩壊したのです。


ただ、
自分が死ぬのは怖かった。

情けないですが、
怖かったのです。



そんなときでした、

ミミ・アナ―リスが
私が死を覚悟した
野戦病院にやって来たのは。


ミミの噂は知っていました。
アナ―リス家の出であり、
貴族である。

私たちが
滅多に話しかけられる相手ではないことも
理性では判っていたのです。

でも、
痛みと死への恐怖には
勝てませんでした。

私は
ミミへ叫んでいたのです。


『アンタは天使だろ!
 早く
 早く
 助けてくれ!』

と。




ミミ・アナ―リスは
そのとき
どうしたと思います?


(老兵は
 いたずらっぽく私に視線を向け、
 お茶を一口飲んだ。
 そして
 おもむろに立ち上がり、
 本棚からスコッチをもってきて、
 紅茶に入れて
 飲み干した。
 そして、
 万年筆で、「当時の私だ」と冒頭の絵を描いた。)


アナ―リスは厳しかった。

(老兵の顔から笑顔があふれた。)


ミミは
私の血と泥で汚れたむしろに
ひざまずき、
私の汚れた手をとり、
私の目を見つめ、
こういったのです。


『私は天使様ではありません。
 看護婦です。
 あなたは死にません。』


ミミ・アナ―リスにきっぱりとそういわれ、
私は口ごたえもできなかった。

それから
ミミの指示は
テキパキとしたものでした。

まず、
傷病兵と傷病兵のむしろの間隔をあけて、
野戦病院が大きくなった。


(と
 老兵は噴出した。
 彼は笑顔で続ける。)


銃弾を受け、
出血しているから、
きっと寒かったのですが、


アナ―リスは、
他の看護師に、
定期的に換気するように
指示したのです。

寒い、と文句もミミへ言いましたよ。


彼女は


『あなたは死にたいのですか!』と
私を一喝した。

そう、
そんな感じでした。

彼女は
毎日
私たちの体温の変化を記録して、

私たちの汚れた血を拭き、

痛いけれど、
包帯を変え、

冷たいけれど、
空気を入れ替えた。


ミミを恨んだのは、
最初の二日間だけです。

そう
最初に彼女が来たときから、

彼女はランプをもって、
私たちの間を
天使のように
静かに歩いた。


そして
死にゆくものへ祈りをささげていた。


彼女は
天使だったのです。

天使様と呼ばれることを彼女は嫌った。
けれど、
神は
天に居て、
私たちへ手を出す存在ではないけれど、
ミミ・アナ―リスは天使様だから・・・

もっと生きていて欲しかった。


(老兵は慟哭した。)


失礼。


私は帰国し、
学校へ行ったのです。
文字を学びました。

ええ、
レンガ職人の息子が
学校なんて
なかなか入れなかったのですが、

ミミへ手紙を書きたかった。

私は
ミミ・アナ―リスに恋をしていたのかも
しれない。

あの
勇敢で、
凛とした横顔、
ランプの姿に。

灯を観たのかもしれない。


学校で文字を並び、
私は
アナ―リスへ、

もうそのころには
アナ―リスが倒れてしまった、
病院を造ったのに、

噂は聞いていましたから、

届くかもわからない手紙を
アナ―リス家宛てに出しました。

封蝋するにも
私の家は職人階級だから家紋もない。

だから
イニシャルを入れました。

宛名には、

あなたに命を救われたアンドリューより、


記しました。


返事なんか来ない、
手紙は
ミミには渡らないと思っていました。

アナ―リス家の人たちが
そう、
手紙を捨てると思っていたのです。

でも
ミミから返事が来た。


(老兵はまた笑顔に戻っていた。
 少年のように。)


とても美しい字と
素晴らしい封筒に
封蝋され、
ミミ・アナ―リスから、
お返事をいただいたときは
心から嬉しかった。


そうですね、


(彼は書斎の一番上の引き出しを開け、
 木の小箱から、
 さらにボロボロの封筒を出した。)


あなたが学問を学んでいると聞いて、
とても嬉しいです。
あなたの未来を救うのは
あなたの学ぶ姿勢です。

―ミミ・アナ―リス





どうですか?


彼女らしいですね。

もう一度、
あの天使様の側に私も行けるでしょうか?


(そういうと
 老兵は
 再び涙を落とした。)








(つづく)



【参考資料】

参考資料



===
少し雑談(2022.08.26)
医学はヒトを幸福にする技術ではない。
ここ20年で幸せも考えるようになったが、
命の幸せは別のところにあると考える。
そういう意味で、
ナイチンゲールは凄い。
ミミアナーリスシリーズは、
全て、実話を元にしているが、
何故か人気がない。
くっそ、オモロイのに。

猫・犬グッズを製造される
Lakarenさんの猫・苺農家ブログ






夢想家 736 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣

シャーペンB。




【ミッキー・ノラ先生の日常。】


偉人には
逸話がつきものである。
アインシュタインが家族に冷たい人間だった、
など
マイナスな側面は
あまり後世に残らない。

でも
そのヒトは人間だから、
失敗もするし、
後世から観て、
酷い人間だなぁ、と思う部分も持っていて当然だと思う。

そんな完璧なヒトはいないのだ。


さて、
ミッキー・ノラの逸話は多々あり、
やはり
家族をないがしろにしてまで、
フンコロガシを大切にしたバランス感覚がトチ狂った
「異人」であったことは間違いない。




『もう、今日こそミッキー、
 あなたには飽き飽きだわっ!』


『まあまあまあ。』

(飛ぶお皿。割れる音。)

『どうして
 給与の半分以上も
 フンコロガシのフンや餌に使っているの!
 こうなりゃ、
 離婚しましょ!
 あなたには付き合いきれないわっ!』


『・・・』


『何、黙っているのよ!あなたもフンコロガシなのっ!』


『いやね、
 アルマヴィーヴァ伯爵んところの
 髪結いのアントワーヌがさ
 相談所しているから、
 そこまで言うなら行かないか。』


『・・・いいでしょう。』




そして、
二人は当時の相談所であり、
病院であり、
理髪店でもあったアントワーヌの店を訪ねた。



『どうされましたか?』


『うちの亭主がフンコロガシに夢中で、
 家庭を顧みないのです。』


『ご主人、あれ?ミッキー・ノラ先生?』


『ああん、俺はフンコロガシだ。』


『いやいや、ここはふざけないで、
 奥様が悩んでいらっしゃいます。
 私ですよ、
 「今を転がせ」と先生に教えてもらった
 アントワーヌです。』

(びっくりして顔をみるミッキー。
 確かに自分の教え子の顔と名前が重なる。)

『ああ、
 あのポエムばっかり書いていた
 アントワーヌか。
 どうしてアンナをみると心臓が痛むのだろうか、
 これってK・O・I☆、とか書いていた!』


『先生、
 そんな過去は今はいいんです。
 奥様のおっしゃっていることは
 ほんとですか?
 家庭を顧みないなんて、
 先生の「今を転がせ」という生き方と
 違うじゃないですか。
 今しか大切にできないから、
 今を転がすんだ、って
 先生は僕に教えた。』


『まあ、そうだけれどさ。
 俺、フンコロガシ好きなんだよ。』


『そうなんです。
 家の半分はフンコロガシに占拠されていますの。』


『先生、
 奥様は世界にたった一人です。
 フンコロガシはたくさんいる。』


『いやね、
 フンコロガシは静かだろ?』


夢想家 736-1 ky ネズラー通信(C)




このように、
ミッキー・ノラは
自分の好きなことを
家庭を顧みないで
やってしまうダメなヒトであった。





(つづく)


夢想家 737 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣

水彩。




【ミッキー・ノラの生活】




私はアンナ。

お花が大好き。
草原が大好き。
森は入ったら
おじいさまに怒られるけれど、
森も大好き。

生き物たちが大好き。


今日は
ちょっとした
低木の生えた広場に来たの。

視界は悪いけれど、
きれいなお花がいっぱい咲いているわ。

私は
好みのお花を手折って行く。

お部屋でドライフラワーにしましょう。



そのとき、
ガサゴソの木が揺れるの!

何かが来るわ。

怖い!
キツネかしら・・・



ふんころがしちゃーん。


夢想家 737-1 ky ネズラー通信(C)



『ミッキー先生!』


『おう、
 アンナか?
 君も昆虫の観察?』


『違います!』







(つづく)


夢想家 592 ky ネズラー通信(C) 山本京嗣 作品

シャーペンB。



【ミッキー・ノラ・ファーブルの伝記】



ミッキー・ノラは
色んな昆虫を観察したことで
有名だが、

特に
フンコロガシが好きだったようだ。

昆虫記の最初も
フンコロガシのお話しから始まる。

昆虫記を読み、
フンコロガシの面白い習性を知った
読者は多いだろう。



『今日は、
 フンコロガシがいないなー。』

夢想家 592-1 ky ネズラー通信(C)

『先生、
 今日は、
 ハチの観察に来られたのでは?』

夢想家 592-2 ky ネズラー通信(C)

『今日は、
 フンコロガシがいないなー。』

夢想家 592-1 ky ネズラー通信(C)

『先生、
 帰っていいですか?』

夢想家 592-2 ky ネズラー通信(C)

『今日は、
 フンコロガシがいないなー。』

夢想家 592-1 ky ネズラー通信(C)







(つづく。)


ミッキー・ノラ・ファーブルは、
2013年くらいから投稿していたが、
全くウケなかった。
今更、少しウケるのが、ウケるしかない。