私は病院でリハビリテーションの仕事に従事していた。

人とのコミュニケーションは大好きだったし、得意としていた。

私の治療する患者さんの中にも鬱病を患った人は沢山いた。

友人にもうつ症状のある人を沢山見てきている。

私は何故鬱病になるのか疑問を持っていたし、自分は決してなる事はないと思っていた。

専門学校で勉強した為、ある程度の精神疾患の知識は持っていたが、それが実際の経験として自分に降り掛かろうとは思っていなかった。

人前にでる事が何よりも大好きだったし、ひょうきんな性格であったと思う。

友人にも少なからず慕われていたし、集団の中心人物だった。

体調に異変が生じたのは、5年目に病院を移った頃だった。

休日に彼女と大阪に出かけた。

街でショッピングを楽しみ、ユニバーサルシティの遊園地で遊んだ。

しかし、その帰りの列車での事である。

突然吐き気に襲われた。

原因不明の吐き気。

彼女はなかなか動けない私を車にのせ病院に向かう。

彼女は風邪だと思っていた。

病院で診断を受けた結果も風邪であり、風邪薬を処方してもらった。

確かに仕事は忙しかった。

休日も研修会に参加するなどし、自分の知識や技術の研鑽に勤しんだ。

しかし、この生活スタイルは他のセラピストも同じであり、私だけが特別な訳ではない。

不思議だった。

ある休日、研修会が終わった後、彼女と街にショッピングに出かけた。

しかし、スクランブル交差点にさしかかったとき、またもや体に異変が起きる。

体がどーんと重くなり、汗が額をながれる、瞼が重く、さらには吐き気が出現した。

どんなに深呼吸をしても良くならなかった。

彼女も心配して、結局ショッピングができずに帰ることにした。

その時は、多分疲れがたまっていたのだろうと思い、次の日の仕事に備えて休む事にした。

ただ、行くる日も行くる日も眠気が続き、朦朧とする状態が続いていた。

仕事でも、一挙一動が億劫でならなくなってしまった。

その時に思い合ったったのが、自分は鬱病ではないか?という事であった。

私は多くの患者さんが通っている精神科に行く事にした。

特に家族や友人、職場の仲間には知らせずに。

病院に行けば、この辛い状況がなんとかなると考えていた。

大した病気ではないと思っていたし、風邪のようにすぐに治ると考えていた。

つづく。