兵舎の庭に、七匹の猫がいた。
俺の仲間。俺の癒し。俺の小さな世界。
配られた食の四分の二を、
いつもポケットに隠して持ち帰った。
昼のチキン、朝のミルク、夜の肉団子。
俺の食事は、半分あの子たちのものだった。
「与えた分、巡ってくる」
それは重力みたいなもんだ。
誰に教わったわけでもない。
だけど、この世界のどこか深いところで、
確かに鳴ってる音だった。
俺が欲しかったのは、金じゃない。
ただ、七つの満腹な腹。
毛づくろいして、うとうとする姿。
それだけで、俺は救われてた。
──五月。
庭に新しい風が吹き始めたころ、
一匹のメス猫が、重たい身体を引きずって歩いてた。
段ボールの箱を用意した。
だけど彼女は、倉庫の奥の、誰も気づかない箱を選んだ。
昼飯から戻ると、
四匹の子猫が、しずかに震えていた。
だけど、二匹はすでに冷たく、
もう一匹も、しばらくして息を止めた。
俺は昼飯のチキンを置いた。
母猫が立ち上がったその間に、
三つの小さな体を、庭の隅に埋めた。
土が、そっと飲み込んだ。
泣く暇なんてなかった。
でもスコップを握る手が、微かに震えてた。
残った一匹は、
ある日ふっと消えた。
きっと母猫が、もっと静かな場所へ連れて行ったんだろう。
その背中を、俺は見送ることもできなかった。
そして、一ヶ月後。
また別のメス猫の腹が、膨らみ始めた。
俺はまた、ミルクをやり、
箱を切って、ふわふわの巣を作った。
あの子たちは、まるで俺の心を知ってるかのように
すやすやと眠っていた。
五匹生まれ、四匹が育った。
最後まで残った、奇跡の四匹。

俺が旅立つ朝、
「頼んだぞ」と友人に託した。
今ごろあの庭で、
走り回ってるだろう。
日だまりの中で、丸くなってるだろう。
──連れて帰りたかった。
それが本音だ。
でも、彼らの世界はあそこにある。
俺は祈るしかできない。
花じゃない、名誉でもない。
俺が咲かせたのは、
七つの、柔らかな命だった。