トルコでは20歳を超えた男性は、全員軍隊に行く。
俺は23歳で入った。大学を卒業したばかりだった。
専攻は日本語日本文学。

軍隊でスマホも、ネットもない。
暖かさも、優しさも、どこにもない。

目の前にあるのは、叫び声と、命令と、無表情の顔たち。
最初に降った雪は、俺の心を完全に凍らせた。
やがて雪は溶け、空は乾ききり、地面は粉のような砂になった。

冷たさの次は、乾いた痛み。
息をするたび、胸の奥が削れていくようだった。

そんな中でも、彼女のことだけは、忘れなかった。

訓練の合間、ふと地面を見た。
そこに、小さな花が咲いていた。

誰にも気づかれず、誰にも愛されず、
ただ、踏まれて枯れるのを待つような花だった。

だけど俺は、そこに彼女を見た。

それから毎日のように、野花を摘んだ。
6ヶ月間、軍服のポケットに隠して持ち帰った。
俳句ノートに挟み、そっと乾かした。
ひとつ、またひとつ。

この手には銃よりも、花が似合うと信じていた。
そしてその花は、誰かを想う気持ちで摘んだものだった。

除隊する前に、それらすべてをラミネートした。

写真がこれだ。



今、この中にあるのはただの草じゃない。
俺が6ヶ月間、涙も声も押し殺して抱きしめ続けた「想い」そのものだ。

会えない夜も、声を聞けない日も、
この小さな命たちに、**「君に会いたい」**という気持ちを託した。