「一般病棟に移れたんですか!?」


1週間が「ヤマ」

と言われていたK岡だったが


10日ほどで奇跡の回復を見せて
生命の危機は脱したとの事だった。


「ほんっとうに良かったです!!」

心から思った事が言葉に出た。


「意識はないけど、身体を動かしたりは
しています。」


両親の安堵が滲み出ていた。


「でもねぇ、どこまで回復するか、、、」


「ダイジョウブデスヨ!」


なんて軽々しく言えないし


「早く良くなって欲しいです。。」

としか返せなかった。


「労災関係の手続きは終わりました。
相手の対応はどうですか?」


「色々ありがとうございます。。
相手はですね、、
一度電話が来てからそれっきりで
保険の対応に任せてるみたいで。」


「そうですか、、」


両親の心情としては納得いかないと思うが
加害者にとっては仕方のない対応かもしれない。


「事故のドラレコ画像とかはありませんか?」

「ありますよ。相手保険会社から送られてきてるので、後で送りますね。」

「お手数ですがお願いします。」



病棟の待合室で両親と少し話をして
最後にK岡の病室に向かった。


腕とノドに色々な管が付けられて
手には赤ん坊がする様な手袋がはめられ
腕には紐がくくりつけられていて
ベッドの外側のパイプに繋がれていた。


無意識に暴れたり、点滴の管などを破損させない措置だろう。


「おーーい!タカ!聞こえるかーー?」


父親がK岡の身体を軽くたたく。


「アルバイトの社長さんが来てくれたぞー」


呼びかけるが、反応はない。


3回、4回と呼びかける。

その時、K岡の身体が動いた。


「!!」


「K岡!!K岡!!!」


私も一緒に呼びかけていた。


いつのまにか涙が出ていた。



「戻ってこい!!頑張れ!!!」


その時、少し目が開いた。


しかし、焦点はあっておらず
K岡は天井を見ていた。


「毎日呼びかけるんですけど
この程度の反応なんです。」


「でも、これだけの回復をしていて
安心しました。」


後ろから担当の看護師さんが来て


「今は脳圧を下げる点滴をしてますので
今後はもっと良くなると思いますよ。」

看護師さんの笑顔で一気に気持ちが軽くなった。



その日の夜

自宅のパソコンでドラレコの映像を観た。

割と鮮明な画像で
見慣れた国道を時速40kmほどで
直進している。


大きな交差点の手前100mくらいで
減速しだして
左側の商業施設に入ろうとした瞬間



「ドン!!」



大きな音と共に
左側から来たK岡の原付が衝突した。


半帽のヘルメットはその瞬間飛んでいき
反動で身体を反転させて
勢いよく電柱に後頭部を打ち付けた。


「あちゃーーー」


自動車の運転手がつぶやいた。


その後K岡はピクリとも動かず
10秒後に動画は終わった。



唯一、部長にだけ動画を観せた。



「これって。。K岡も過失ありますよね?
たぶんヘルメットのあごひもしてないし
イヤホンもしてるし
結構無理矢理追い抜こうとしてるじゃないですか。」


正直言って、動画を観る限り
K岡の過失が低い事故ではない様に思える。


渋滞中の道路でバイクが左側から追い抜く場合は
あらゆる危険予測をしなければならない。

お互い走行中なら御法度だ。


アルバイトに遅れそうで、焦っていて
普段はそんな運転はしないのかもしれないが。



後で父親に


「こちらは自賠責保険しか加入してないので
自動車の保険や、知り合いなどの
弁護士を依頼する事をお勧めします。」

と連絡した。


でないと相手の思う様に
言いくるめられる可能性があるからだ。


示談はしない様にもアドバイスしておいた。




〜それから2ヶ月後〜


K岡は驚異的に回復した。

普通に会話ができるくらいまで回復した。


「まぁ、あの子の運命だったのかも知れませんね。」

という両親の言葉が印象的だった。


「それと、あの子が事故してから
家の電化製品がことごとく壊れましてね。

なんか、生かせる為に身代わりに
なったのかもしれないねぇ。」


「そういうこともあるかもしれませんね」


そうは言ったが


結構あり得る話だと思った。


不慮の事故だったとはいえ


生死をさまよい
生還したK岡


頭蓋骨骨折、硬膜下血腫、脳挫傷


運が悪ければ即死
助かっても
重度の後遺症になってもおかしくない。


まだ100%回復した訳ではないが
退院も夢ではないだろう。


「死んだじいちゃんがずっとそばに
立ってたんすよ。」

と本人から聞かされて


やっぱりそういう事もあったりするんだな
と思った。


「苦難」

を逆の意味に置き換えれば


「有難い」


なんていう人がいるけど


K岡を含めてご家族にとっては

そんな事はないだろうが

K岡が生かされたって事実は


まさに天運に違いない。


そして色々な神秘が関係しているのだろう。
(そして私は無宗教です)