開業後2年2ヵ月目、ついに国民生活金融公庫から230万円の融資
厚生年金基金の解約でひと息ついたものの、仕事がないのですぐに苦境に陥ります。そこまでつらくても、初めての融資を受けたのは開業後2年以上経ってから。当時はそれだけ自分にとって、借金はタブーだったのです。売上が立つ見込みがないので、借りても返せないと考えていました。しかしある日、コンサルタントの大先輩から一撃を食らいます。
「資金調達に強いコンサルタントか…。で、君は自分でお金を借りたことがあるのか?」
「いえ、借りていません。貸す側だったので金融機関が慎重になる気持ちはわかりますし、手元資金はそれなりにあるので必要ありませんし(また強がり)」
「君なあ、貸す側の気持ちがわかっていても、借りる側の気持ちはわかってないやろ」
「いえ、融資案件はたくさん取り扱いましたから、借りる側の気持ちも…」
「いやいや、悪いことは言わんから、まず借りてみな。いくら金融機関出身でも、自分で借りたことのない資金調達コンサルタントに相談する経営者はおらんぞ。自分で経験するからこそ現場の雰囲気や受け答えも、説得力を持って相手に伝えられるんじゃないかな」
ハッとする私。
「そうだ、経営者と同じ立場に立ってみなければ、真剣に相談などしてもらえない。今、自分には借りたお金を安定的に返していけるような具体的な未来はまだ見えないけれど、きちんと貸してもらえる、そして、返せるだけの事業計画を作ってみよう」
すぐに必要書類を準備し、国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫)に行きました。
融資を受ける=経営者と同じ気持ちが体験できた
いざ金融機関の窓口で融資担当者と話したときは、相手の強烈な威圧感に閉口し、「困っているから借りに来ているのに細かい点をグチグチと」とうんざり(きっと私も前職時代、同じように融資先に嫌な思いをさせていたのでしょう)。現在私が、相談者の抱える「融資担当者の手強さ」「交渉のしにくさ」「苦手意識」を自分のことのように思えるのも、あのときの「体感」あってこそ。あなたも経営者から資金調達の相談を受けることがあるでしょう。そこでもしあなたにも融資体験があれば、お互いの距離が縮まりやすくなるはず。融資後の私の投資は次項で詳述しますが、融資を受けることによる貴重な体験のひとつが、困る経営者の気持ちに共感できることだといえるでしょう。