1999年12月16日(木)
 

宿の近くにある安食堂「好食家」は僕のお気に入りの食堂だ。
目がさめて、昼近くになると、この飯屋へ行くというのが僕の日課になりつつある。

 

 

昼頃には浦江飯店の宿泊人らしき日本人の姿もよく目立つ。
店の入り口で作っている肉あんと肉汁たっぷりのまんじゅう、とでも言うのだろうか、「玉鮮生煎」がこの店の一押し商品でとてもおいしい。

 

僕はこれをはじめて食べてからこの味の虜になってしまい。

一日1~2回は必ず食べている。

 

 

今日はこの「玉鮮生煎」と「麻婆飯」、2品で9元(約110円)の安さである。

好食家を出てさらに東へ進み当てもなく歩きつづけていると、今まで見たことのない古い住宅街とマーケットのある通りに出た。上海は都会だと思っていたが、一歩道を外れるとこんな通りに出る。新しい上海の顔を見て僕の心は躍った。

 

 

 

 

路上の床屋、生きた鶏を売る店、果物屋に日常雑貨などの露天がずらりと並んでいる。戦後の日本の景色みたいな感じだ。と言っても実際、戦後の日本なんて見たことがないのでイメージでしかない。

新鮮な景色だった。僕は、無性にこの景色を写真に撮りたくなり、いったんホテルに戻ってカメラを取りに行った。
 

街並みの写真を何枚か撮り歩いていると、なにやら人だかりができているのを見つけ僕も駆けつけた。僕も背伸びをして覗いてみると、中でおじいちゃん達がカードをやっていた。

ルールはよくわからないが4人のおじいちゃんが勝負をし、その周りのおじいちゃん達がああでもない、こうでもないと言い合っている。

僕は、この光景を写真に取った。

 

 

この明るさならフラッシュはつかないだろうと思っていたが、予想に反してピカッと光ってしまいおじいちゃん達の目線を一斉に僕に浴びてしまう。

あいつは何者だと言う目をされ困惑していると、目の前の本屋さんからおばちゃんがニコニコしながらやってきて、中国語をマシンガンのように僕に浴びせる。

 

僕はメモ帳と会話集を取り出し、簡単な挨拶をした。

おばちゃんは中へ入れと言って本屋の中へ入れてくれた。
 

お茶やお菓子をご馳走になり、会話にならない会話を楽しむ。
僕は今度、豫園に行くつもりだと言うと豫園にはどうやっていくのか?

とでも聞こえたのかおばちゃん達がバスは何番に乗れなどといっている。
僕はよくわからず困惑していると、こっちへこいといって店を出てバス停まで連れて行ってくれた。僕は今日行くつもりじゃなかったのだがおばちゃんが、バスがくるまで待っていてくれるので、僕は仕方なく今日行くことになった。


バスが来ると、おばちゃんがこれに乗れと言いて僕の手を引いてドアまで連れて行ってくれた。僕は会話集からお世話になりましたと言うのを探して礼を言うとおばちゃんは、いいから行けと言ってバスを見送ってくれた。

 

おばあちゃん達の好意がたまらなくうれしくなり、やっと旅らしくなってうれしくなった。
 

バスを終点で降り、豫園があるであろう方向へ歩き始めた。

途中で、壁に「旅社 10元(130円) ← 」と殴り書きのように書いてあるのを見つけた。

10元の宿ってどんな所か見たくなり、角を左へ曲がった。

僕は、矢印に沿って歩いていくと、また古い街並みに入った。

今度は、さっきよりも凄い街並みだ。

古いことは古いがみんな活気がある。

 

多くの中国人が商売をしていたり、洗濯やゲーム、喧嘩など、人を見ているだけでも面白い。観光客など誰も居なく、およそ日本人っぽい格好をしている僕はやはりみんなにじろじろ見られるのだ。前からも後ろからも自転車やバイクがけたたましい騒音でやってくる。

ここは異国だと感じた。

 

 

この辺が面白くて2時間くらい歩きつづけていると、いつのまにか豫園についていた。

豫園は上海一の庭園と聞いていたが、完全に観光地化され僕にとってはそれほど興味をそそる物ではなかった。僕は、周辺のマーケットをぶらつき12元の万能ナイフを買ってホテルに戻った。
 
七時くらいに部屋に戻ると、二人の旅人が新たにやってきていた。
中国語の話せる小林さんと、医大生の柴田君だ、柴田君は来年の国家試験の為に中国でゆっくり勉強しようと思っていたらしいが、ついつい遊んでしまい勉強は全く進んでいないらしい。


3階の柴田君も部屋にやってきて、今日みんなで飲みに行こうということになった。

僕は明日あたり、香港行きの切符を買いに行こうと思っていたが、また、面白そうな人がやってきてもう少し上海にいようと思った。
 

10時くらいに部屋を出てみんなで飲みに行った。途中、エレベーターで日本人の女子学生二人と会い二人も一緒に行くことになった。一人は留学生で中国語が話せ、もう一人の娘は大阪からその留学生に会いに来たらしい。

 

近くの安いバーや屋台で1時過ぎまでみんなで盛り上がった。
 
 
写真代             18元
飯代              10元
バス代              2元
万能ナイフ          18元
晩飯代              7元
トイレットペーパ、洗剤   10元
飲み代             40元
屋台               5元
宿代              55元
合計                    155元=約1860円