絶体絶命のピンチだった
対面したのはライバル企業を推す
取引先の役員〇〇常務
池井戸潤のドラマなら
香川照之さん的な役どころだ
今回は完全にわが社のミスだった
しかし…
対峙したその常務から発せられたのは
「ケガの功名…」
「災い転じて福となす」
と言いながら上機嫌だったのだ
私はいくつかの責任の取り方を
具体的に準備して臨んでいた
それが肩透かしというか
初めて感じるその常務の友好的姿勢だった
詳細を尋ねると
今回のプロジェクトの中でも最大の難関
コンペの前段階でこの会社がオファーして
断られていた専門の研究者(某大学教授)が
急遽、参加してくれるというのだった
開発出身のこの常務の担当で
なかなか口説き落とすことが出来なく
コンペ前に変わりの専門家になっていた
「御社の〇〇さんが紹介してくれてね」
とにかく上機嫌だった
謝罪を受けるというより私にお礼を
言いたかった為の面会だった
詳細を聞けば聞くほど
わが相棒がどれほど頼りになるのか
それを強烈に知らされてしまったのだ
その後、相棒に聞くと
コンペの資料を見た時から
その教授の事は把握していたという
コンペの内容とは関係ないから…
敢えて口を出さなかった
そう感じていたというのだが
今回のクレーム対応には必要だと思い
彼に直接、サポートをお願いしたという
「研究所勤務時代から親しくしてたから」
今回のクレーム処理には一番適してたから
常務のところに同行して対応した
サラッとそう言うのだった
普通なら多少恩義せがましく言うのだが
サラッと言うほうが強烈かもしれない
先方はアポさえ取れなかった教授が
突然、クレーム対応で訪問したのだから
開発陣全ての担当が驚いたという
結果的に常務が言う通り
「ケガの功名」
「災い転じて福となす」だった
より理想的な展開となったのだ
最終的にはその常務の大手柄
わが社に対して感謝しかなかった
こんなレベルの話題をスタッフに
「解決したんだから社長には言うな」
そう口止めしていたのだ
最大の難敵だった常務が
今では完全にわが社のファンとなった
業界内でも変わり者で有名な
その教授に対しては
「今度、おでんを御馳走するから」
という約束だけで同行させたという
これが私が長年彼にかなわなかった
”ひとたらし”の力なんだと
改めてそう感じた
「俺は今はカネはないがコネなら
一生ものだから…」
彼特有の自虐ネタだ(笑)
そんな彼を何とか今年は
わが社に転職してもらいたいものである
