あれは、私が二十歳の頃・・・
免許を取りに教習所に通ってた
ある日、授業が始まる少し前に入って来た子に
目が釘付けになった
当時、私が大好きやった俳優さん
三上博史さんにそっくり( ゚ ▽ ゚ ;)
『こんなカッコいい子がいたんや~』って思い
授業そっちのけで、後ろから見てた
私はどっちかというと、消極的なタイプ
でも、なんでかその時はその子を追って
教室を出た・・・
帰りの送迎バスに乗ったら
その子が一人座ってた
消極的な私が、勇気を出してその子の隣に座った
他にも席は空いてるのに・・・
その子も不思議に思ったみたいやったけど
バスが走り出して暫くすると、話しかけてきてくれた
『どこまで乗るの?』 と・・・
うわー、話しかけてくれた~と舞い上がりながらも
冷静を装って『○○まで』 ふう~A=´、`=)ゞ
『一緒やね』
キャー、一緒~(〃∇〃)
突然その子が『俺ってイントネーションおかしくない?』
??? んまぁ、そう言われてみれば・・・
『んー、そっかな?』 うん、って言うと失礼かなと思ってこう答えた
『俺、埼玉出身でこっちにパンの職人になるのに来たんだ』
『どこのパン屋さん?』
『○○、知ってる?』
めっさ、有名なとこやった
『知ってるよ。有名やんね』
その子は、寮に住んでるって言った
名前や歳の話になり
その子の方が2つ下やと分かった
年上とは付き合ってたけど、年下は初めて接する
実はこの時、私には彼氏がおった
でも、一目惚れした・・・
ドキドキしながら話をしてたら、二人が降りる場所に着いた
『今からお茶でもしない?』
断る理由がない・・・
『うん』と即答
落ち着いたコーヒー専門店に連れて行ってくれた
付き合ってる彼氏はこんな所を知らない人やった
その子は私の関西弁が可愛いと言った
こっちに来てから、ほとんど女の子と知り合うきっかけもなく
あんまりしゃべった事がなかったらしい
そやから、関西弁の女の子が珍しかったんやろう
時間も忘れて、いっぱい話をした
今では、その時に話した事は忘れたけど
いろんな事話した・・・
結構、遅くなった
『今度はいつ行くの?』と聞いてくれた
『合わしてもいいよ』 いや、合わしたかった
『じゃ、○日は?』
『うん、大丈夫』
駅まで送ってくれて、その日は別れた・・・
約束の日、その子はバスが来る場所に先に来てた
黒のニット帽に革ジャン、ロールアップした501にブーツ
正直、彼氏はダサい人
めっさオシャレって思った
バスの中でも、教習所の休み時間も一緒におった
帰りのバスの中で
『今日って時間ある?あったら飲みに行かない?』
またまた『うん』と即答
しっとりとしたBARに連れて行ってくれた
彼氏とはプールバーとか、ディスコには行ってたけど
こんな所は初めてやった
かかる曲、かかる曲、二人とも知ってた
『こういうのも好きだけど、俺が好きなのはパンクなんだ』
『えー、私も好きなんよ』
二人ともクラッシュのファンなんが判明
一気に距離が縮まった・・・
もう、この時私はその子が好きになってた
彼氏なんてもう、どうでもよかった・・・
3年半付き合ってた彼氏の事なんか吹っ飛んだ・・・
その子から付き合って欲しいとは言われてないけど
自然と彼氏、彼女の仲になった・・・
その前に、私には彼氏がおるって事は言ったけど
その子は気にもしなかった
でも私は気にしてた
ほぼ毎日のように、家に来てたから・・・
1ヶ月間はいわゆる二股しとった
どう言えばすんなり別れてくれるかばっかり考えてた
こんな状態は良くないとずっと思っとったから
ある日、とうとう『別れて』と言った
彼氏は、自分が就職したらすぐに結婚しようと言ってた
まさかの出来事やったやろう
彼氏は納得いくはずもなく『そいつに会わせろ』と・・・
会わせたくなかったけど、その子に相談したら
『いいよ、会うよ』って
3人で会った・・・
彼氏はその子を責めたてた
みっともない・・・素直な気持ち
あーだこーだ、文句を言った後
『お前はどっちを取るんや?』
決まってるやん・・・別れてって言うたやん・・・
『彼を選ぶ』とはっきり言った
彼氏は店を出た
ようやく終わった・・・
『ごめんね、いやな思いさせて・・・』
『ううん、まーのがいやな思いしただろ?』
『俺は、何を言われても平気だったけど、まーを指差してたのがムカついた』
18歳の彼のが22歳の彼氏より、大人に見えた
それ以降の交際は順調
向こうから、お姉さんと彼氏が遊びにきたり
二人で、彼の実家に行ったりTDLに行ったりした
付き合ってから1年半くらいしてから
彼が仕事を辞めると言い出した
辞めたら寮も出ないとアカン
二人で家を探し、同棲を始めた・・・
私の中は彼でいっぱいになってた
誰と会ってても、話すのは彼の事ばっかり
友達は呆れてた・・・
LIKEじゃなくて、LOVEってこういう事なんやって思った
彼はホテルマンの仕事に就いた
最初はみんなと話が合わず、ストレスを感じてた
でも次第に、馴染んでいった
同棲してから半年くらいたった頃、彼からこう言われた
『重いよ、好きな気持ちは嬉しいけど、ここまでだとさすがに重いよ』
耳を疑った・・・
同じ気持ちでいてくれてると思ったのに
『いや、別れたくない!絶対イヤ!!』
1ヶ月ほど、様子見の生活・・・
結局、何を言ってもダメやったから結論を出した
いい女やったなぁって思って欲しかったから
嫌いになられたくなかったから、別れる事にした
家に戻った私は、毎日毎日泣いてた
1ヶ月くらいした頃、彼から電話がきた
久しぶりに聞く声・・・
たった1ヶ月前に別れたのに、何年も経ってた気がしたくらい懐かしい声・・・
『どうしたん?』
『いや、元気にしてるかなって思ってね』
『彼氏出来た?』
『そんなに早く出来る訳ないやん』
そんなに早く忘れられるはずがないやんって言いたかった・・・
今から思えば、彼より2つお姉さんやから
大人の女を演じてたんよな・・・
その日は、電話だけで終わった
また数日後、彼から電話が・・・
他愛もない話をした
『今から、そっちに遊びに行ってもいい?』って言ってみた
『うん、いいよ』
意外やったけど、会えるんが嬉しかった
チャリで10分くらいの距離
9時は過ぎてたやろ
顔を見た瞬間、泣きそうになったけど
グっとこらえて『久しぶり~』って笑顔で言った
部屋の雰囲気が変わってた
でも変わってたのは、むしろ彼自体やった
『最近は会社のヤツらとカラオケなんか行ったりしてるよ』
居酒屋、カラオケは大嫌いって言ってたのに
その頃、私はバンドどっぷりになってたし
スタジオでもバイトし始めた
彼が好きやった世界に私はおった
私が嫌いな世界に彼は染まった
ベクトルが違う・・・
でも、友達としてその後何度も部屋に遊びに行って、話しをした
会う度に違いを見た
話す内容や、髪型、服装、顔立ち・・・
どんどん変わって行く彼を見て、私は前の彼のがカッコ良かったなって思ってた
ちょうど今くらいの時期やった
『俺、年明けたら実家に帰ろうと思ってるんだ』
『そうなんや、じゃ帰る前に絶対会おうな』
お別れ会をする約束をした
年明けに連絡はなかった
私も、正月早々やしと思って連絡しなかった
もう、この頃にはダーリンと付き合ってたし
大して気にもならんかった
ダーリンを初めて見た瞬間に彼の事は吹っ飛んだし
彼を初めて見た時以上のインパクトがダーリンにはあったし
で、お別れ会ね・・・
阪神淡路大震災があって
彼とは連絡が取れなくなって
向こうに帰ったのかどうなのかも、今でもホントの事は解らんのよ
震災前に帰ったのか、震災後に帰ったのかさえね・・・
家が全焼やったから、彼の実家の連絡先とかも解らんくて
あれからもうすぐ14年・・・
彼は38歳か
結婚もして、子供もおるやろな・・・
ホテルマンの経験を生かした仕事をしてるんかな?
彼と結婚したかったと思ってたけど
せんで良かった・・・
彼に教えてもらった事が
ダーリンと急接近出来たきっかけになったし
クラッシュのパールハーバーってアルバム・・・
彼と私の、私とダーリンのキーワード
フラれた時は悔しかったし、悲しかったけど
今は、フってくれて良かった
あのまま結婚しとったら、今の私は無いな
K・・・Kはもう、クラッシュなんか聴いてないやろ?
私は、今でも聴いてるよ
KはLondon's Burningが好きやったけど
ダーリンはLondon Collingのが好きなんよな・・・
今は私もそうかな・・・
もう二度と会う事はないよな
未練とか全然ないけど
ここ最近、Kの夢見るんよな
好きやった頃の姿で出てくるな
もう、今はええおっちゃんになっとんやろな・・・
