「水色のエミリア」第六話
「綺麗ね」
エミリアの横顔に、夕焼けの光が映る。太陽を見つめる目が、どこか寂しげだ。
足元の感触が初めての経験で、落ち着かない。無意識のうちに、握りしめた手に力を込め直していた。
「ホントに、綺麗だね。こんな綺麗な景色を創ってくれた神さまに感謝しないといけないね」
我ながら、ロマンチックなことを言えた。僕たち以外には、太陽と海と空しかない。左横にいる不思議な少女に顔を向けた。真剣な表情が、まっすぐ、こちらを向いている。
「神は、なにも創っていないわ。海も空も太陽も、自然も、この星も、元々あったものよ。自然にできたもの」
「えっ?」
「こんなに綺麗で、すごいもの、誰かに創れるわけないじゃない。元々あったもの、自然にできたものに、わたしたちが勝手に生きているだけ。宇宙とか地球にとっちゃ、いい迷惑よね」
「・・・・・・」
エミリアは、太陽に向き直った。
「誰にも創れないから、すごいの。そして、大事なものなの。・・・・・・。あっ、そうだ。あなたたち、人間に言いたいことがあったんだ」
「なに?」
小さくて綺麗な顔が、僕に向き直る。夕陽色に染まる髪と、細い肩。吸い込まれそうなほど真剣なまなざしが、ゆっくりと崩れていく。上目遣いの表情に、少し見とれてしまう。少女の笑顔は、とても優しくて、とても綺麗だ。愛らしく笑う口元が静かに開いた。
「人類は、地球に謝罪しなさい」
僕たちの周りの空気が、急に明るくなった。光の中にいる。そんな感覚だ。
目の前に、突然、景色が現れる。さっきまで見ていた海と違う海だ。どこかの湾のようだ。たくさんの、コンクリートの大きな白い柱。何百本とある。海面からまっすぐに生えていて、その姿を見せている。柱と柱の間には、分厚くて巨大な黒い鋼板が、海面より少し上に浮いている。
「あっ!」
思わず、声が出てしまった。
すさまじい水しぶきをあげて、一斉に海の中に落ちていく鋼板。海面から十メートルほど、鋼板は飛び出ている。
目の前の景色が、早送りで映し出される。鋼板によって分けられた、外と内の海。波打つ海と、静かな水面のコントラストは、現実離れした光景だ。陸地では、人々が笑顔で拍手している。
景色は、鋼板に分けれた内側の海中へ移動していく。頭の上に、水面越しに見える太陽がある。元気に泳ぐ魚の群れや、海底の砂にいる貝たちが見える。
彼らは、やがて元気をなくして、そして死んでいく。腐ってしまった海藻が、簡単にちぎれていく。
海の色は、完全に不透明になってしまった。
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