「水色のエミリア」第八話
次々に景色が変わる。
灰色の雨が、森の木々や草花を白く変色させる。鮮やかな赤色になった海が、魚たちを拒絶する。金色の砂漠が、草花たちを受け入れる。青紫色の霧の中、渡り鳥の群れが整列して飛行する。
景色は、さらに変わり続けた。
人間の仕業で自然が姿を変えてしまい、自然を信じきっている野生動物や海の生物は、自分たちの周りで何が起きているのかわからない。植物は、与えられた環境で、出来る限りの成長と浄化作業を繰り返す。
目まぐるしく変わるさまざまな景色は、エミリアが言っていたとおり、人類が地球に謝罪するのに、十分な理由だった。
また、次の景色に移った。
今度も、どこかの工場だ。どうやら廃業しているようだ。夕方にも関わらず、電灯は灯っていない。
割れたガラスがそのままの窓。建物の周辺は、全く手入れされていない。深緑の草が、自由に生い茂っていた。
錆びたドラム缶が、無造作に積み上げられている。一つだけ倒れて、中身が垂れ出ている。黒い水溜まりを作っていた。
上空の景色から、水溜まりの際に移動した。
水溜まりの中に何かある。水面から盛り上がった黒い物体。土の塊のように見える。鳥だった。鳩よりも少し大きい。死んでいるのか、全身を黒く染めた物体は、体を横たえて、固く目を閉じている。少しだけ開いているくちばしも、黒い液体に浸かっていた。
水溜まりのすぐ近くに、白と茶色の模様をした一羽の鳥がいた。水溜まりを見て、歩いては止まってを繰り返している。
その光景を近い場所で見ていると、後ろから何かが、僕をすり抜けていった。小さな男の子だ。四歳か五歳ぐらいだろうか。白と茶色の鳥と、男の子と、黒い水溜まりに横たわる黒い鳥。
男の子は、水溜まりに入っていく。しゃがんだ。両手で、黒い鳥を抱えあげた。ゆっくり立ち上がる。着ていた服も、履いていた靴も、両手も黒くなっていた。
黒い鳥を抱えたまま、水溜まりの外に出た。もう一羽の鳥の前で、しゃがんだ。動かない黒い鳥を、そこに置いた。鳥も男の子も、何もせず、じっとしている。
少し強い風が、水溜まりに小さな黒い波模様を描いていた。
この光景は、見たことがある。そして、僕はこの男の子を知っている。この男の子は、僕だ。
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