「LADYPEAK」#13
「和代さん、どんな感じですか?気分が悪くなったりしていませんか?」
桃葉の声には、少しだけ心配の色が滲んでいた。
「ええ。特に、何もないわ。なんだか、拍子抜けしちゃうわね。ホントに、ただのおいしいジュースをいただいただけみたい」
和代は笑いながら手にしていた黒いビンをテーブルの上に置いた。
「あっ・・・」
小さなため息のような声が、和代の口から洩れた。
「あぁ・・・。んん・・・」
赤らんだ頬を、両手で覆う和代。顔全体が熱を帯びたように、上気しているのがわかる。見開いた目が潤み、ハァハァと息遣いの音が大きい。
「LADYPEAKの効果があらわれるときは、一時的に体温が高くなります。和代さん、暑くなってきましたか?」
和代は、桃葉の問いかけに、大きく二度うなずいた。やはり息遣いは荒く、どうやら言葉を発することが困難なようだ。
「和代さん、あちらの部屋まで歩けますか?春江さん、少しお待ちください」
桃葉の誘導で立ち上がる和代。意外にしっかりした足取りで、桃葉とともに部屋の奥にあるドアの向こうまで歩いていった。
(和代ちゃん、大丈夫かしら?)
春江の視線の先では、どこからか引っ張りだされてきたネズミのぬいぐるみとキャロルが、激しい格闘を繰り広げていた。
「キャロルちゃん」
元気が有り余っている猫は、春江の呼び掛けに全く反応を示さず、両手を使ってネズミを弾き飛ばしては、それを追いかけ回していた。

